ダイヤとダイア
しゃみさん卓。
ソードワールド2.5のメモ書き、第8話。
前回(https://fusetter.com/tw/skBGOwoX )
【8話】
ゲートインプが「主殿は魔神に対する理解が浅すぎましゅ~。これでも読んで勉強するでしゅ!」と言って、アットにカルディアグレイスをくれた。
どういうことだよ?
アルフレイム大陸の書物にはない、召異の本質的な知識。
よく読んでおくといいらしい。
なお前回、あの規模の魔域を「魔人と契約して」収めたことは、依頼人である高司祭にしか伝えていない。
司祭は、憐みの目と共に
「魔神は世界の理から外れた悍ましい存在だ。どうか奴らの誘惑に負けることなく、これからも明るく、たくましく生きていくんだよ」
と言葉をかけてくれた。
アットの返事は「ありがとう、肝に銘じてるつもりだよ」。
今後が楽しみだね。
・導入:猪鹿蝶
ハーヴェス王国、滞在2日目。
……のはずなのに、アビスシャードの大量納品で目立ちすぎてチェックは3日分付いている。
魔神を許すな。
猪鹿蝶にいる冒険者たちの質問責めをのらりくらりとかわし、ようやく一息ついた頃。
何やらフードを被った人物がオババに耳打ちし、「だったら個室を用意した方がいいねえ」と奥の部屋へと通されていく。
「あんたたちに依頼だよ、ちいと話を聞いてやりな」として、そのまま一行も招き入れられた。
部屋で待っていた人物がフードを取れば、現れたのは見知ったオパールの顔。
お召列車強盗事件の際に、車両を貸してくれた副車掌だ。
「皆さん先日はどうも、おかげでダイヤを守ることができました」
「しかし、守れなかったダイヤもあるのです」
彼の話はこうだ。
副車掌には、兄貴分と呼べる相手がいた。
同じ大陸から渡ってきた同志で、ダイヤモンドのフロウライト。
しかし彼は志半ばで、副車掌に「私の身体を売って路銀の足しにしなさい」と残して息絶える。
彼はその遺言どおりに、こつこつとダイヤを売っては勉強を重ね、ついには宮仕えの副車掌とまでなった。
しかし、その中で唯一売れなかったのが兄の頭だ。
副車掌は官舎の自室に兄の頭部を安置し、見守ってもらっていた。
その頭が、一週間留守にしていた間に忽然と消えてしまったのだという。
むべなるかな、彼にとっては兄の生首でも一般的に見れば七色に煌めく巨大なダイヤモンドの塊である。
警報装置も付けずに飾っておいていいものではない。
「皆さんを信頼できる冒険者と見込んでお願いします。どうか、もう一度ダイヤを守ってはいただけませんか」
「でも売る時に足が付かないよう、もう粉々にされてる可能性もあるんじゃ……」
「それでも私には兄だと分かります! どのような形であっても、取り戻していただければお礼は必ず……!」
「わかるんだ……」
「もしかして、探し出して売る算段立ててません……?」
「流通していることを想定した仮の話ですう……」
「でも、それなら砕いてしまって一欠片くらい売ってもばれませんね!」
「頼むから、ばれた時のリスクも勘案してよ」
「それで、いくらいただけるんですか?」
「本来であれば、ダイヤとしての価値の1割でもお支払いできればよかったのですが……生憎それだけの財産はありません。しかし私には副車掌としての権限がありますので、それなりの便宜を図って差し上げることができるかと」
「へえ……それは仲良くしておいて損はないかもしれないね」
「そうですね!」
そんなこんなで依頼を受けることになった一行。
副車掌は前金として指を4本折ってくれた。
ぱきん、ぱきん、ぱきん。ふう、ふう……ぱきん。
痛みはないけど、自分の一部を切り離す感覚があるらしい。
ちなみに、そのあと紹介料としてオババにも一本折っている。
・調査①:情報調査
まずは流通している可能性を考慮して、裏ルートにも詳しそうなオババに話を聞くことに。
今回は仲介人であり指も受け取っているので、その情報については無償提供してもらえるとのことだ。
オババが話を聞いて回ってくれ、分かった内容は主には2つ。
まず「ダイヤモンドの相場が値崩れしているというような話は出ていない」こと。
次に「巨大なダイヤモンドが売りに出されているという話も上がってこない」こと。
どうやら古物として市場に出回っているのではないらしい。
「参考までに、この辺りで人族の頭部や手首が流通しているようなことは?」
「おっと、この先はいただくもんをいただかないとね」
共有費から300G出して話を聞くことに。
何でも「左手ハンター」と呼ばれる賞金首がいるらしい。
人種の坩堝であるこのハーヴェス王国には珍しい種族も多く生活しているが、そうした希少種の「左手を切り落とされた死体」が近頃連続して見つかっているのだ。
彼らは一人でいるところを狙われ、被害者の中には7レベルや9レベルの冒険者なども含まれている。
かけられた賞金は86000G。
絶対に勝てない。イズとかいう金の亡者には口が裂けても言えない額だ。
みらの「コレクトされちゃうよ」
ちなみに後からGMに聞いたところ、この話はその場ででっちあげたらしい。
ゲーム的には無駄な300Gだったけど、PLは手首が好きなので喜んだ。
いつか会ってみたいね。
・調査②:現場検証
次に向かったのは官舎の管理人室。
副車掌が紹介状を書いてくれており、捜査の協力は全面的に受けられるようになっている。
リカントの少年に案内され、人間の女性である管理人と面会する。
「この官舎で盗みが働かれたかもしれないってことじゃあないか。不名誉なことだけどね、きちんと調査してもらえばきっと疑いも晴れる。好きに調べとくれ」
寮は魔動機文明時代の遺産を流用したものだ。
扉には魔動機術によるロックが掛けられており、履歴などもデータで残るようになっている。
マスターキーの使用履歴は1度。
聞けば、リカントの少年がベッドメイクの当番として入室したらしい。
「その時、部屋に大きいダイヤはあったのかい?」
「大きいも小さいもありません、ダイヤは守るものです!」
「……ごめん、ダイヤモンドはあったかな」
「……?」
「ええと、こう座布団に乗せてあったものなんですけど~」
「ああ! あのきらきらしたやつですね、あったようななかったような……」
「君もしかして宝石知らない?」
「あんまり興味ないですね!」
実際に副車掌の部屋を見てみると、たしかに座布団だけが残っている。
リカントの少年曰く、来た時にはあったが帰る時にはなかった気がするとのことだ。
扉はオートロックで閉まるものの、喚起のためにベランダを開け放していたらしい。
この官舎は9階建ての遺跡で(王様の居城より背が高いので、貴族たちには「感じ悪ーい」と思われている)、ここは6階だ。
隣のベランダとの距離は、まあまあある。
「ちなみに、アットだったら跳ぼうと思う?」
「うーん、難しいんじゃないかな」
有識者ならワンチャン飛べるけどツーチャンくらいで死ぬかもくらいの雰囲気。
そんな話をしつつ、観察の達成値15のアットがベランダの隅に大きな羽根が落ちているのを見つける。
「何だこれ、大きい鳥かな」
「ワシじゃないですかね?」
オーレアはネイチャーマスターで知識の達成値17、メルも14でその羽根がグリフォン……それもかなり大きいサイズの個体のものであると分かったため、次はライダーギルドに登録された騎獣の情報を当たってみることに。
なおグリフォンの羽根はオーレアの手によりマテリアルカードへと変わった。証拠の押収という概念が我々にはない。
・調査③:記録調査
ライダーギルドの情報閲覧窓口は、びっくりするほど並んでいた。
潔く紹介状を掲げて割り込んでいき、受付のメリア長命種に用件を告げる。
「あーら~……。でしたら~、こちらへ~……」
奥に通してもらい、ハーブティーが煮だし終わるのを待つ。この間30分。
グリフォンの登録に関する記録を見たいと伝え、書類が出てくるのを待つ。この間も30分。
「すやあ……」
「オーレア起きて」
しかし、ようやく渡された書類にキンググリフォンと呼べるような大きな個体の登録はなかった。
目を引くものといえば、つい最近雌のグリフォンが登録されたことくらい。
これは確かに珍しい。例えるなら三毛猫の雄みたいな感じ。
雌のグリフォンは卵を守っていることが多く、どうしても卵採取の過程で殺してしまいがち。
そもそも成獣を手懐ける技量を持つ調教師が少ないのもあるけど、やはり雌については基本、卵から孵るのを待つしかない。
ちなみに三毛猫の雄が珍しいのは、三毛になるために必要な遺伝子の組み合わせが、XXでないと成立しないかららしいよ。
・調査④:事情聴取
グリフォンのオーナーは個人所有者だ。
ライダー、ファイター、レンジャーとしてそれなりに活躍してきた冒険者で、戦闘前にオーレアが思い出した話ではレベル8相当。
郊外の丘に建つ石造りの古城で暮らしているらしい。
執事に事情を話し、応接室へ通される。
剥製として飾ってある魔獣や幻獣は主人が自身で討伐した物なのだと、執事が自慢気に教えてくれた。
しばらくして出てきたのは、革のライダースを纏って眼帯をした初老の男性。
ガジェルと名乗った彼は、ブランデーに葉巻をふかして次のように話してくれる。
登録したグリフォンは岩山で見つけ、これは珍しいと思い、騎獣として調教するために弱らせて連れてきた。
痕跡からしてつがいだったようだが、雄の方は丁度出払っていたようだ。
その後に岩山を見に行った際、巣はもぬけの殻であり、どうやら妻を探すために拠点を引き上げたものと思われる。
※ 整理すると上記になるが、実際には人妻(幻獣)を薬漬けにして風呂に沈める豪快なおじさんの話である。
再現する技量はみおなにはない。
「熟練者にもなれば成獣を手懐けることだってできるぞ!」
「だってさイズ」
「わくわく……!」
雄のグリフォンが街で盗みを働き、それを取り戻すために調査していることを説明。
ガジェルは、その雄を確保できれば報酬を出すと言い、また「せっかくだから見せてやろう」と雌のグリフォンがいる部屋にも連れて行ってくれた。
案内された先で、雌のグリフォンは薬をかがされてぐったりしていた。風切羽も切られている。
オーレアの提案により、雄をおびき寄せるために一枚羽をいただくことに。
引っこ抜いた。可哀想にね。
・戦闘:キンググリフォン
グリフォンをおびき出すにあたり、まずは副車掌の指を使ってみることに。
官舎屋上のヘリポートに指を置いて待っていたところ、夕暮れの頃になってキンググリフォンが姿を現した。
「毛ノナイ猿ドモヨ。ソレ、ヨコセ。妻イナクナッタ、ソレアレバ必ズ帰ッテクル」
片言の交易共通語で告げるグリフォンの足には、頭蓋骨大のダイヤモンドが大事そうに抱えられている。
「その宝石と交換でよければ、奥さんの居場所を教えてあげられるけど」
「毛ノナイ猿、噓ツク。ナゼ妻ノ居場所知ッテル。妻ノ居場所分カルナラ証拠見セロ」
「でしたらここに……」雌グリフォンの羽根をすっと出す
「妻……オオ、妻……、……貴様ラ!」
「あーあ、これだから知能の低い生き物は……」
先手を取られつつ、キンググリフォンとの戦闘に。
1ラウンド目
翼① :オーレアに攻撃〇 毒の反撃を食らう
追撃×
翼② :オーレア×
頭 :オーレア×
メル :怒涛の攻陣Ⅰ、翼①にパラライズミスト
前衛にバーチャルタフネス
オーレア:マルアク、イズにウィングフライヤー、キャッツアイ
翼①にソーンバッシュ〇、愚断剣(成否メモなし)
アット :デモンズアーム
イズ :全力攻撃、チャージ〇 29点くらい出る
2ラウンド目
翼① :オーレアに攻撃〇 毒の反撃を食らう
追撃〇 毒の反撃を食らう
翼② :オーレアに攻撃〇 毒の反撃を食らう
ここでオーレアが落ちる(が、このターンだけで毒が9点入っている)
頭 :イズ〇
追撃〇
メル :怒涛の攻陣Ⅱ:旋風、翼①にパラライズミスト
イズ、オーレアにアドバンストヒーリング
アット :キャッツアイ、マッスルベアー
翼①にスティールブレード〇 倒れる
イズ :全力攻撃×
馬×
3ラウンド目
翼② :アット〇
追撃〇
頭 :アット〇 残2点くらいになる
メル :怒涛の攻陣Ⅱ:旋風、効力亢進Ⅰ(アット)、パラライズミスト
アット、オーレアにアドバンストヒーリング
イズ :全力攻撃×
馬◎
アット :片手〇
片手◎ ダメージで変転してクリティカル
30点くらい出して翼②が落ちる
4ラウンド目
頭 :アット〇
アット〇
生死判定でピンゾロしたけど、計算し直したら実は3点残ってて事なきを得た
(この辺りで「前ターンで最もダメージを与えたキャラに攻撃が飛ぶ」という基準が開示され、与ダメの調整が始まる)
メル :怒涛の攻陣Ⅱ:旋風、パラライズミスト
乱戦に入ってオーレアにアウェイクポーション
オーレア:マルアク、イズにウィングフライヤー
ソーンバッシュ〇、愚断剣×
イズ :全力攻撃×
馬◎
アット :ブラッドアンデッド〇(普通に殴ると最大ダメージになってしまうため)
5ラウンド目
頭 :オーレア×
メル :怒涛の攻陣Ⅱ:旋風、パラライズミスト(最後1枚)
後衛に下がりたいところ、魔晶石を割ってアットにアドバンストヒーリング
オーレア:マルアク、ウィングフライヤー
ソーンバッシュ〇、愚断剣×
イズ :全力攻撃〇
馬◎
アット :ディフェンダー〇
マンゴーシュ×
6ラウンド目
頭 :イズ×
(ここで敵の残HPは12)
イズ :全力攻撃 ダメージでピンゾロ
馬×
オーレア:マルアク、
ソーンバッシュ〇、愚断剣×
メル :怒涛の攻陣Ⅱ:旋風
魔晶石を割ってファイアボルト
ここまで来れば半減でも落とせる。
力を削がれたキンググリフォンは力なくうなだれた。
「毛ノナイ猿ドモヨ。私ノ負ケダ、私カラ全テヲ奪ウガイイ」
これに対して誰も答えないの、グリフォンのこと喋る幻獣としか思ってなくていいよね。
・顛末
グリフォンをおじさん、もといガジェルに引き渡しに行く。
彼は「素晴らしい!」と大喜びして全員と握手をした。
この番が産んだ最初の卵を貰えるという前提で「好きな値段を付けるといい」と言われ、成獣ではガジェル以外にとって価値が薄いこと、卵をククサブジに相場以上の単価で売れる可能性があることを踏まえて10,000Gと回答。
お前さんたちは欲がないな、と言われ15,000Gで引き取ってもらえた。
夫婦が再会してハッピーエンド。
本当だろうか……?
一方、本筋。
「おお、これこそ兄の頭!」と喜び、頭を下げる副車掌。
約束通り、鉄道の乗車や記録へのアクセスなどで優待を受けられることになる。
こうして、物語はまた西へ。
次回もよろしくお願いします。
→(https://fusetter.com/tw/6JzaNoRu)