静かの海のパライソのあらすじまとめ。
ネタバレOK、先に心の準備がしておきたい、該当箇所の歴史の予備知識を入れてから観劇したい人向け。
ただしラスト付近〜最終的な結末には触れていません。刀剣男士達が何に直面するのかだけ書きました。
念のため、さらにワンクッション。
本当に、結末以外はかなりのバレ含む起承転結で言うなら起・承辺りまでを書いています。(事前に公式から歴史人物名の公開がなかったので、演出意図かと思い一部を除く主要な歴史人物の名前は伏せました)
最後のオチだけは実際観て欲しいので書いていません。
つまりラストどうなるのかが気になる人は、これを読んでも最後の結末は解りません。
あくまで、刀剣男士達がどんな地獄(はっきり言って、しんどいとかそう言うレベルではないです)に立ち向かわなくてはならないかのみの記載です。
大丈夫ですか?
本当に大丈夫なら、自己責任で進んでください。
ご覧になった後の苦情は一切受け付けませんので、ご了承ください。
いきなり核心に触れますが、今作は皆の予想通り島原の乱が主軸となるストーリー。
時代は三代将軍家光(家康の孫)の頃です。
天下分け目の関ヶ原の戦も今は昔。訪れた太平の世に育った人々は、戦を直接知りません。
今の私達にとって「戦争」が祖父母の代の出来事であり、実際の戦争を経験した人は少ないように。
……そんな時代背景だと思ってください。
そして「三百年の子守唄」のように、今回も本物の天草四郎は序盤で殺され刀剣男士が代役を務める。
けれど今回、天草四郎になり変わるの刀剣男士は一人ではありません。
日向正宗、浦島虎徹、そして最大の狂言回しである鶴丸国永の3名が天草四郎をそれぞれ演じ、人々と関わって行きます。
今回の任務はミュ本丸審神者でさえ刀剣男士達に出陣を命じるの躊躇うほど過酷なものになるであろう事が冒頭で語られ、鶴丸が自らその隊長と出陣部隊の選出を買って出るところから生き地獄はスタート。
刀剣男士達が過去に遡って早々に天草四郎は命を落とし、彼らはその一揆衆の「生き残り」と出会います。
正しく歴史を動かすために、生き残った男に協力を申し出る鶴丸。
鶴丸、日向くん、浦島くんの三人が天草四郎を演じる事になり、正しい歴史に伝わる通り2万人の仲間……つまり一揆に参加する民を集める事になります。
浦島くんはあの太陽のような明るさで、虐げられた農民たちの心を掴み、親を亡くしたとある兄弟と出会って深く関わって行く事に。
光を紡いだような金髪の、太陽のように笑う少年の姿をした付喪神、浦島虎徹。
出会った兄弟のまだ幼い弟は、無邪気に浦島くんに懐きながら
「パライソに行けばおっかあに会える」
と一揆の仲間達に教えられた事を告げます。
島原の乱の頃にはまだ打たれておらず、そして彼が打たれた頃には日本からほぼ消え去っていたキリスト教について知らない浦島くんは、笑って約束する。
「それなら俺がパライソへ連れて行く!きっとお母さんに会わせてあげるからな」と。
弟ってこんなに可愛いのか。兄ちゃん達はいつもこんな気持ちなんだな、と嬉しそうに。
……けれど「一揆に参加しなかった事」を理由に、本来仲間であるはずの農民達に自分達の母は殺されたのだと弟のいない場所で兄は語るのです。
弟は、母が殺された事を知らないのだ、と。
それでも自分達は生きていかなければならない。
だから母の仇であっても、自分達は一揆衆に加わるのだとまだ少年である兄は浦島くんに言い放つのです。
日向くんは、命を救ってやった男に尋ねられる。
いずれの家中の方か、と。
日向くんは答える。
豊臣家や石田家に仕えた事ならある、と。
本来の旗頭である天草四郎を失い、それでも民を扇動する目的を持った男は、その言葉を聞いて「豊臣家に仕えた方か……」と、ある事を思いつく。
そこは、秀吉の治世では厚遇され、そして関ヶ原では西軍に与したために今では重税に苦しむ人々の暮らす集落でした。
古ぼけた豊臣家の馬印、逆さ瓢箪を持ち出してきた男は日向くんを農民達の前に連れ出し
「この方こそは、先の大坂の陣で亡くなられた豊臣秀頼様の忘れ形見。太閤様の御孫様にあらせられる」
と虚偽の希望を掲げて見せるのです。
まるで十字架のように掲げられた、豊臣家の馬印。
腕の立つ、どこか神々しく気品のある美しい少年の姿をした付喪神、日向正宗を前にして民は言う。
「そうだ、この方こそが希望の光。かつてのような栄光を取り戻すのだ。この方が我らをパライソへ導いてくださる」
……と。
今回、審神者から命じられた任務の全容を唯一知る立場である鶴丸は、ミュ本丸の審神者でさえ任務を命じるのを躊躇ったほどの重い荷物を自ら担い、宗教の名のもとに暴徒と化していく民衆を集め率いる天草四郎となります。
農民達は些細な諍いから、一揆を止めようとした村人を殺し、この太平の世に戦を起こしてはならぬと諭す相手さえ殺し、異教徒である仏教の寺を襲う。
次第に膨れ上がり狂気さえ帯びる集団は、キリスト教の信者達以外も巻き込んで行く。
けれどそれは「正しい歴史」。
刀剣男士達には止められない、止めてはならないと鶴丸は言います。
もっとこの火種を大きく煽り、3万7000人までに膨れ上がった人々を死なせるのが自分の役目だと。
みほとせの任務を経験した大倶利伽羅は、刀剣男士が歴史上の人物になり変わり人々と関わって行く事の苦しさ、辛さを知るだけに「憎まれ役を買って出るのか」と鶴丸に問いますが、鶴丸は「自分さえ憎めるくらいじゃなきゃやってられねえだろう」と飄々と笑うのでした。
かつて暴走しかけた石切丸を見ていただけに、「抱えすぎるな」と鶴丸に物言わず寄り添う影のように助力する大倶利伽羅。
それでも扇動をやめず、何万人が死のうと正しい歴史を守ろるのだという役割を曲げない鶴丸。
三人の天草四郎が織りなす、三種三様の苦悩と地獄と「パライソ」がそこに描かれていきます。
……そして松井江。
彼は、かつて島原の乱を鎮圧した武将に振るわれた刀。
神を信じ、パライソへ行けると信じた人を斬った。その血を吸った刀。
その知識を活かし、一揆勢とは逆側……つまり鎮圧軍側から正しく歴史が動いているかを見張るための潜入任務を行うようにと、鶴丸は松井くんと豊前くんにも別行動を命じます。
あの歌合での顕現以来、自分に問い続けている「生まれた訳」の答えと、松井江は嫌でも向き合うことになるのです……。
刀であった頃ならただ振るわれていれば良かった。
心を持ち、身体を得た今、今度は自分の意思で……女も子供も大勢参加している一揆勢を、また斬らねばならないのか……と。
それでも、江を束ねるものとして豊前江は真っ直ぐにこう言い切ります。
これは松井が向き合わなくてはいけないことだ、と。
こんな惨たらしい地獄を作れと、誰が言ったよ!!?
刀ミュくんいい加減にして!!!
って、引きつけ起こしそうなくらい泣きました。心臓を掻き毟る方がまだ楽だろうと思うくらいの苦しみを、それぞれが抱えなくてはならないなんてあんまりだと。
歌合であんな風に、めでたやめでたやと祝福されて、嬉しそうに笑いながら顕現してくれた神様への仕打ちがこれ……?
八苦を受けても人間のために戦おうと、人を愛してくれた刀の付喪神への仕打ちがこれなのかと。
正直、想定外の方向へ、想定の50倍しんどかったです。
でもね、信じてて欲しい。
これは「刀ミュ」だって。
それだけは信じて、彼らが選び取る結末と苦悩の果てのパライソを見届けてください!!