『よって、方相のごとし』https://kakuyomu.jp/works/16817330662486870314
本編必読、ネタバレ後書きです。
今作のテーマは「バッドエンドを書こう!」だったのですが、見事に頓挫しましたすいません。やっぱり長編で、がんばって生きている主人公たちを書いていると、そうそうバッドエンドに出来ないよ……。
そういうわけで、宵路くんは途中までは死亡する予定でした。自分で目玉抉って捧げるエンド、鬼頭観音大勝利イェーイ! しかし私、黒幕勝利エンドはどうも苦手ですね。過去作では当面のラスボスは倒したけど、黒幕は勝利という形に落ち着けたので、ホラーはあのぐらいのバランスがやはり良い。うーむ。
今作の主題は「怪異の原因が自分だったらどうする?」→「じゃけん死にましょうねえ~」だったんですね。でもほら……人間はやっぱり死ぬより生きている方が、苦しみが深まるし……。
題材が「邪眼」だったのも、ここから来ています。邪眼という概念自体はよく知られているけれど、あまり中心的に扱っている話は少ないんじゃないか? と(芦花公園先生の作品にそれがあるのですが、作中では「邪眼」と明言されておらず、考察するとおそらくそうだろう、という話なので作品名は伏せます)。
それで実際、探してみると邪眼の資料って少ないんですね……。まあカクヨムには、作品に出す希少な生物の情報を求めて、英語の論文読まれる方もいるので、私もへこたれてはいられませんが!
邪眼を調べていて「方相氏」にたどり着き、そこからストーリーの主軸が出来ていきました。
方相氏も方相氏でやはり深く論じた資料が少なく、だいぶ困りましたが……(参考文献にある『鬼が来た道』は仮面とか芸術的な観点からですが、追儺や方相氏については特に詳しい書籍でした。他は恵方巻きコルネさんの同人誌が、本当に詳しくて感謝……!)。あと南方熊楠先生と柳田国男先生は偉大ですね。
他は洒落怖の邪視や、テオフィル・ゴーチェ『魔眼』でしょうか。
■籠ノ目宵路
今作ではすっかりヒロインポジ。まあ私の作品はだいたい、男がヒロインですが……。
『あきちゃんの可愛いお人形』編では、当初「悪霊に憑かれたあきちゃんをあっさり見捨て、川に突き落とす」「キレたあきちゃん母に殺されかける」という冷たい性格の設定だったのですが、書いていて「何か違うな……」と首をひねりました。
それで現在の、さびしさを抱えながらも損得関係なく他者を助ける「見鬼くん」として書いて、ようやく彼のキャラクターがつかめたと思います。たぶん見鬼くんにならなかったら、当初の想定通り死んでいました。
ちなみに彼が美形なのは素ですが、「心中したくなるような魅力」は邪眼による追加効果です。
■黒鳥りん
宵路くんもヒョウも、色んな因縁因果に絡め取られていています。が、彼女はそういうものがないゼロ感のまま怪異に関わっていく……というポジションのキャラクター。
多重に呪いを背負っていますが、フィジカルの強さからくる健康さで何とかやっています。
おそらく放っておいたら、生涯幽霊とか怪異に会わない陽キャの人種なのですが、運命のいたずらでそちら側に引きずり込まれました。
■ヒョウ(入交漂)
宵路も大概ですが、神仏によって過酷な運命を背負わされているガール。ダークギャザリングの愛依ちゃん(神の花嫁)と違って、周囲に不幸はまき散らしませんが、寿命が本当にマッハなので早急に対策が必要です。
神に眼をつけられたのが十歳で、腕もその時に無くしてしまいました。そんな境遇ですが、おばあちゃんに愛されたり、りんたちとの交流でメンタルはだいぶ元気です。続編では彼女が主役になることでしょう。
■蕃雨太郎
本来としての蕃雨太郎は本当にただの人間でしたが、「蕃」という名前はメタ的に蕃神(鬼頭観音)の意を込めています。宵路くんが大好きだっただけなのに、運が悪かった。
没プロットでは正体が鬼頭観音ではなく、邪眼を目当てにやってきた魔術師(人間辞めている)でした。そっちだと宵路が邪眼殺できたんで楽だったんですがね……。
昔の作品では、黒幕ポジのキャラクターが最初から怪しかったので、ちょっとどんでん返しを味わって欲しいなあと思って用意したキャラクターです。
ところで登場人物に片目食べさせるのこれで二回目なんですが、私には目玉喰いのヘキがあるのかもしれませんね……。