永淵(?)さんと、プリンタニア4巻おまけであったことについて
マリヤ・ハリスの時代からの人だったんですね、永淵さん。
永淵さん いや、友人であるオリジナル永淵を自分に置き換えた誰かだった永淵さん。
彼が元々、どんな人だったのか、どんな名で呼ばれていたかはもう誰もわからないし、読者としても、これからも永淵さんと呼び続けるしかない。
あなたは誰だったのか。
実行後のエラーで具体的に何があってどんな流れで、友人であった永淵をトレースするような存在になったのかは、はっきりわからない。けれど、少なくとも今の彼は、バグっていること自覚して、それを受け入れた上で永淵でいることを選んでいると思える。
永淵になるということは、永淵と友人だった自分を消すことと重なる。それは友人として……彼を失いたくなかった者として、彼を思うこともできなくなるということなのではないか。
2巻で悲しむ待屋に猫が言いました。
「あなたが全部否定したら、本当に何もなくなっテしまいます」
元の永淵がシステムを使い生きてほしいと願っただろう、その自分自身を否定してよかったのか。その是非を私は決めるべきではないけど。
おまけを読むに、【 】(元の誰か。もはやこう表記するしか思い付かないのでこれで通します)はマリヤが肉体を失っても活動できる、後に彼岸システムとして機能するものを開発中の段階だったのですね。完成まであと少し。
そのシステムは、多分だけど生前の経験、記憶、あらゆる全てをデータに移し、その人を再構築する。言わばきわめて精巧なAIにすることで、その人を留めるシステム。死を克服するシステムと言ってもいいかもしれない。そのような捉え方でいいかな。
残兵が侵入した時、【 】が考えたことは、マリヤの睡眠装置をシェルターにして、まだ動ける永淵(オリジナル)を生き残らせることだった。
けれどその永淵は、自分の友人の彼岸システムが機能することに賭けて、負傷により力尽きようとしている【 】を装置に入れた。
装置内のその肉体は失われても、君の作ったシステムがきっと君を再構築させ、君は生きるだろう。
そうして「ばいばい」と笑って別れたオリジナルの永淵さんの、賭けの結果はどうだったと言えるのだろう。
実行後に起きたエラーは紐付ける本来の名前を見失った。今の彼が、永淵のアバターと永淵の性格、性質になっているのは、永淵に生きていてほしかった、失いたくなかった、その思いの結果なのかもしれない。
初読時は、もっとはっきりした意思で友人の姿を取り込んだのかと思ったけど、読み返してるうちに偶発的だったのかもと思えてきた。
エラーが起きた。残るのは自分じゃないと強く思った。友人を失いたくなかった。それらがバグになって出力された結果が、今の永淵さん。
そして元々の姿や人格をほぼ失って、今、永淵さんとして活動しているあの人は、元々の自分がどうだったか、半ば忘れているしどうでもいいとも思っているのかもしれない。
永淵さん自身、自分が何をどこまで覚えていて、自分の感情の動きがどうなのか、瀬田君との会話を見るにあいまいな部分も多いのかもしれないな。
だけど、彼岸システムを完成させ、人類全体に拡張し、管理をずっと続けてること。
元々の永淵の声を覚えていること。(アバター時の声は本来の彼の声なのか……)
かなりガタがきている様子のボディを「思い出の品」と手放したがらないこと
劇を見ている彼にすあまめが寄り添ったこと
それらすべて【 】だった頃の名残で、旧人類をあまり好きじゃないのもあなたの方ですよね、と、やはりやるせない。
永淵さんの名前も姿も声もそこにいて今も動いて佐藤たちと会話しているけど、それは本当の意味では永淵さんじゃなくて、それどころか【 】さんが存在したということに至ってはもう誰も知ることはないのか……という
どこにでもいてどこにもいない人じゃないですかほんとに……
永淵さんのコンサルが唯一知っているかも?
あのコンサルはたぶん【 】さんの方のコンサルですよね…これもなんとなくそうなんじゃないかなくらいの印象だけど。
本来の永淵さんの方のコンサルは回収された時に活動を終えていそう。そしてコンサルは担当を変えることはなさそうだから、今いるコンサルは【 】さんのコンサル。仮定。
けど、これもどうともとれるかも。
もしかしたら「彼の名前は何ですか?」ってあのコンサルに聞いたらあっさり教えてくれるかもしれないけど、コンサルは他人の質問に答えないからやっぱり全て闇の中ですね。つらい。