魔法少女リリカルなのはReflectionを3回見てようやく分かったんですが、この話の主人公はキリエなんですね。
キリエは最初、「何でもできて常にいい子」な姉と違って、出来の悪い妹として登場します。けれど、もしそのまま話が進んだとしたらそれはあまりにも残酷では? 出来の悪い妹は結局最後まで姉を追い抜けないのか? そういう視線でReflectionを見ていたら、話は全然違うということが分かりました。
キリエは確かに姉よりも出来が悪いかもしれませんが、その分必死でした。1回目に見たときはなんでキリエに変身バンクがあるのかがよく分からなかったんですが、あれはキリエの必死さを表してたんじゃなかったのかなと思います。なのはさんやフェイトさんと比べて、キリエの変身バンクにはあまりに無駄な動きがなさ過ぎる。無骨すぎるんです。しなやかな四肢の動きもなければ、華やかな躍動もない。ただひたすら愚直にパーツを装着していくだけなんですね。
そんなキリエですが、昔からよくできた姉を見てきて、それがコンプレックスになっていました。喧嘩をしたり怒られたりすると、キリエはすぐにイリスの元へと逃げ込んだ。泣き虫でくせっ毛で垢抜けない女の子だったキリエは、イリスからすべてを教わりました。キリエにとって、イリスこそが教科書だったんですね。
ところが物語の終盤で、キリエはイリスに銃を向けます。結局最後にはイリスの言葉に負けて銃を下ろすんですが、それでもすべてを教えてくれた存在に銃を向けるのは、相当な覚悟があったはずです。キリエはそれだけでも、十分に成長しました。
そして、キリエには一つだけ、確かにアミタよりも勝っているところがあったと気づきました。なのはさんの言葉にもあった、シリーズを通してのテーマの一つ、「諦めない」という気持ちです。物語の最序盤、アミタはエルトリアを捨て、コロニーに移住することを決めます。けれど「それで増える可能性はどれくらい?」というキリエの言葉にもあるように、言葉は悪いですが、それは父親のことをほとんど「諦めた」態度ではないでしょうか。
対してキリエは絶対に諦めなかった。「無理だって聞き分けよく諦めちゃう」のではなく、しぶとく最後まで父親とエルトリアを救おうとし続けた。その先にあったのがReflectionなのです。初見ではアミタのまっすぐさや信念はなのはさんに似ていると感じ、Reflection(鏡像)のひとつはなのはさんとアミタなのかな、と思っていました。しかし、「絶対に諦めない」というところを考えると、むしろなのはさんの鏡像はキリエなのかもしれません。
もちろんReflection(鏡像)はプリズムのようにいくつにも散らばっています。作中でフェイトさんが語ったように、辛い過去を背負っているという意味でフェイトさんとキリエも似ていますし、マテリアルズはいうまでもなく海鳴の仲良し3人組に似ています。なのはさんとアミタが鏡像でないことはないでしょう。でも、なのはさんはキリエの鏡像でもある。
キリエが最後まで諦め悪くあがき続けた先に生まれた物語なのですから、そこにピリオドを打つのはやっぱりキリエなんじゃないかなと思います。Reflectionの最後で、キリエは「泣いている女の子を助ける魔法使い」は存在することを知り、どんなことがあっても決して諦めずに前を向くなのはさんの姿を見ました。もう十分でしょう。彼女は成長した。Detonationで、彼女は爆発的な一歩を踏み出すはずです。姉にはできなかったことを、成し遂げるはずなんだ……。