ライオンな少年を見ましたの記
ライオン少年見た。この記事は感想っていうか雑談です。ネタバレはしてます。
正直最初は野卑さをおそれないパワーに圧倒されてしまったしギャグも半分ぐらい笑っていいところなのかかなりハラハラしてましたけど、最後の盛り上げはやっぱり凄かった。友達が上海行の切符破り捨ててるシーンめちゃ愛せる。あとクソみたいな性格の仇役いっぱい出るんですけど、彼らは別に改心とかしないけど柱が倒れそうになったらなんの躊躇もなく水に飛び込んでくるんだよな。
あとはやっぱ細やかな描写だよな~って話してました。この描写力で貧しさを描くことから逃げないでいる。キツいが共感されるだろう。そして郷愁を生むだろう。
チュンは同じ名前のチュンと劇的に出会って啓示を受けたが、出稼ぎ先の大都会で偶然再会した彼女が別の世界の人であることは、見ている方にも残酷なぐらい伝わってくる。彼女が運転する車に乗せてもらったチュンが、下りる時にシートベルトをしているのを忘れて阻まれる。普段車に乗っていない人間特有の動作だ。彼は車を使える階層にないが、彼女は女の子だからと獅子舞をやめさせられている。だが二つの格差がここでは断絶せず、静かに交差している。
中国華南地方の田舎や地方都市の描写も、凄まじい臨場感で立ち上がってきた。
モデルの地域は広東省のどの辺りなのかなあ。チュンが祈ってるのが観音なのでそのへんにヒントがあるかな。(パンフまだちゃんと読んでないから書いてあるかも)
ろしゃの「羅氏の村」もざっくりは華南地方だと思うけど、山間部だから雰囲気がだいぶ違うんですよね。でもあのミニバスとかは田舎のおじいちゃんちから街へ行く回のやつ思い出しましたが……。
あと、あのですね、
養魚池が。
めちゃめちゃ養魚池あったよね!?特に何の説明もなかったけどあれ養魚池ですよね!?解説しよう!
私には巨大な魚が異常に好きという嗜好があります。
もっと詳しく知りたい人はこの記事を読んでくくれ。
君は中国四大家魚を知っているか
http://peach.b-s.bambina.jp/?eid=1439466
あの~、そんなわけで畑の隣につくられた明らかに人工的なたくさんの池、絶対養魚池だ!って思ってからもう本題と全然関係ないところで大興奮してしまって大変だったんだよな。えーっじゃああの周りの草を刈って投げ込んでるってことよね?っていうかチァン師匠も多分あの辺から仕入れてるよね、あの子たちがしょってたデカい魚草魚に見えるし、小さい魚はハクレンとかコクレンだと思うんだよ。まさかこんなところでもう何年も憧れてきた中国の農村生活に密着した家魚の描写がさりげなく見られるとは思わなかったです最高!!!!!!!!!!!
最高……。
〇
最後の方はもう中島みゆきの世界だった。中島みゆきの世界観を愛する人は見ようね。
ファイト!闘う君の歌を
ファイト!闘わないやつらが笑うだろう
ラスト映っていたのは東方明珠電視塔に見えたので、あの後上海に行ったんだろうな。
ところで時代が2005年に設定されていて、はっきりと「少し古い時代の話」として語られている(作中でもスマホ等が一切出て来ない)。
これにより、あくまで「こういう貧しいが熱気にあふれた時代もあった」というスタンスの作品であって、現在の格差社会を批判する作品ではない、という一つの政治的な逃げ道ができている可能性についても無視はしたくない。
しかし同時に私は、それが作品自体の瑕疵になるとは、決して思わないものであります。