劇場版「モノノ怪 唐傘」のネタバレ含みます。
3回目観てきました。追加で気付いたところ、唐傘の「真」「理」についてなど、感想メモ。
また長いの書いてる。
■目次
・追加で気付いたところ
・唐傘の「真」と「理」個人的解釈
→唐傘の「真」は北川様。
→唐傘の「理」は「捨てないで」「一緒にいたい(取り戻してほしい)」
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■追加で気付いたところ
・三郎丸と平基が食事をしている時に物音と気配がする。二人が刀を手に襖を開けるシーン。
→襖の傍に北川様の人形が居る。
→三郎丸が侵入者を探して辺りを見回すとき、北川様の人形がスーッと消えていく。
→ほぼ幽霊の描写じゃん……。
・カメが櫛を捨てた時の井戸へと落ちていく視点(カメラワーク)は、櫛が見ている光景。
→今までの「捨てられた物」達も、こうやって、持ち主に捨てられるのを見ていたんだろうな。
→捨てられる(≒殺される)瞬間の、被害者の目が見ている光景。
■唐笠の「真」と「理」個人的解釈
劇場版を3回観て、ノベライズを読んで、公式Youtubeの解説動画を観ました。
公式Youtubeより
【※本編ネタバレ注意※】特別番組「モノノ怪秘話大公開!スペシャル」第三幕(ゲスト:花澤香菜さん)
https://youtu.be/Im2m0PESdNc?si=RfTRcHbnm9jE2Ja_
※ある程度は公式から答えが出ているので、このふせは板書を取ったメモのようなものです。
※そのため、このふせに書いている全てが私の発想ではありません。中には「他人様からの受け売り」も含みます。
▼唐笠の「真」は北川様。
・唐笠の「真」は北川様。
・だけど、唐傘は北川一人で成った訳ではなく、井戸に捨てられたものの情念の集合体。
・井戸に捨てられた「大切な物」達。
→北川様の人形
→麦谷の手毬
→淡島の万華鏡
→カメの櫛
→他にも、簪や小箱、皿、花束など、今まで大奥に務めることになった女中達が決意を固める儀式として井戸に捨てたもの。
・付喪神……とは少し違うけれど、「大切にされてきたものには何らかの念が宿る」というのが、解説動画での監督の談。
・だから、物(大切にされたきた物)達の「ずっと大切にしてくれていたのに、ここまで持ち続けて来たのに、どうして捨てた」「捨ててほしくなかった」という情念があり、それが溜まりに溜まって、唐傘になった。
・情念……いわゆる、モノノ怪として動き始めるためのエネルギーのようなものが、あの井戸にずっと溜まり続けていた。
・モノノ怪として形を成すだけに必要なエネルギーが溜まったのが北川様の時で、だから一応は北川様が媒介(モノノ怪の中心、きっかけ、依り代)になっているけれど、北川様一人で成っている訳じゃない。
・だから唐傘の断片は、麦谷にとっては手毬に見えたし、淡島にとっては万華鏡に見えた。
・今回は、薬売りさんの物語(主観)に関わって来るのが麦谷、淡島だったから(被害者として遭遇するのがこの二人だったから)手毬や万華鏡にスポットが当たったけれど、もし殺されるのが別の女中だったら、その女中が捨てたものになったと思う。
・モノノ怪を「北川様」として認識していた(「北川様と会った」と認識していた)アサは、モノノ怪の方から「私は北川である」という意識を表層化していたから、そう見えていた。
・アサと同じく、井戸に大切なものを捨てなかった歌山様。
→家を出て大奥に来た時点で「すでに捨てた」人だったから、大奥で儀式する時にはすでに捨てるほど大切なものを持っていなかった。
→だけど、唐傘に狙われるようになったのは、歌山様が「大奥で取締役をする内に切り捨てた女中がいたから。彼女達の死を隠蔽するために女中の死体を井戸に捨てたから。捨てるように命令したから」
→アサが大奥で過ごす内に、「カメ」という「大切なもの」を得たように。歌山様も、大奥で過ごす内に「女中、自分の部下たち」という「大切なもの」を得た。
→だけど、歌山様は仕事をするために「使えないものは切り捨てる」「死体になったら井戸に捨てる」という事をせざるを得なかった。
→井戸での儀式のときに歌山様がアサに告げた「高くから見えるようになる」「今のわだかまりが大したものではないと気付くようになる」と言ったのは、取締役をするような上の役職になれば、物どころか人の命を捨てる選択をしなければならなくなる、物を捨てるだけで済む今はまだマシ……という意味だったんだろう。
・歌山様の台詞「これがわたしのおつとめだ」
→歌山様が唐傘に殺されることを受け入れたのは、騒ぎが大奥全体に広がらないように、標的(囮)になるため。
→唐傘が無差別に人を襲わないように、狙いを定めさせるため。
→その方が、薬売りさんにとってもモノノ怪を捉えやすいというのもある。
(標的があることで薬売りさんも唐傘を見つけやすくなる)
→歌山様は、「女中、自分の部下」という「大切なもの」を井戸に捨てた。
→麦谷のときは手毬が、淡島のときは万華鏡が、モノノ怪の表層として近付いてきたように、歌山様のときは「女中達」「女中達の死体」が歌山様に近づき、彼女を殺した。
→この、「唐傘が歌山を殺している」という間を作ることで、薬売りさんが唐傘を捉えるための時間を作る。
→この時間稼ぎが、歌山の「さいごのおつとめ」という意味。
→歌山様が「これがわたしのおつとめだ」と言ってアサを突き飛ばしたのは、アサを巻き込まないため。
※このあたりの描写は、ノベライズの方では明確に歌山様がアサに「アサは下がれ、巻き添えになる」と伝えています。
※歌山様の「おつとめ」=「唐傘に殺されることで、唐傘が無差別に人を殺さないよう囮になる。囮になることで薬売りが動くための時間稼ぎをする」に、アサが巻き込まれないよう、歌山様は考えています。
→そもそも、歌山様が「唐傘が北川なら、次に狙われるのは私(歌山)」と思った。そう推測したのは、歌山が「女中(自分の部下)達を捨てた者」だから。
→数多くいる女中達から北川様を見出し、北川様をご祐筆に選んだ。
→北川様を選んだのが、歌山様だったから。
→北川が死んだのは彼女が自殺した(井戸に身投げした)からであり、歌山様が直接何かした訳ではないのだけど、歌山様には「私が捨てた」という自意識があった。心当たりがあった。
→それは、「大切なものを捨てる儀式」を進めていた責任でもあるし、死体を井戸に捨てて女中の死を隠蔽したからでもある。いなくなった北川を「実家に帰った」と処理して済ませたことも含むし、麦谷の死体を井戸に捨てて隠したのもある。もしかすると、今までにも切り捨てた女中がいたのかもしれない。
→「捨てられたものの恨みが向けられる(そうされても仕方ない)」という思いが、歌山にはあった。
→実際、歌山様が唐傘に殺されるとき、(北川様ではなく)女中や女中の死体らしきミイラが歌山様の絡みついている。
→「北川様が唐傘に変じて歌山を殺した」ではなくて。「唐傘の一部となった女中達が、歌山を殺している」
→「唐傘が歌山を真っ先に狙った」のは、唐傘が北上様でもありつつ、「唐傘は女中達でもある」から。
→唐傘は数多の意思(物・者)の集合体であり、その内のひとつが北川様で、ひとつは女中達でもある……っていうのはここにも表れていると思う。
→だから、「次は歌山様が唐傘に狙われる」が合っているし、アサの言う「北上様は歌山様を恨んでいない」も合っている。
→このとき、歌山様を殺そうとしたのは、「歌山様に認められたかった、選ばれたかった、だけど歌山様に捨てられた(見放された)」女中達だから。
→でも多分、これも、「捨てられたから恨んでいる。殺してやる」じゃなくて、「歌山様、どうして捨てたんですか」「どうして選んでくれなかったんですか」「あなたに認めてほしかった」という気持ちで、唐傘が手を伸ばした結果、人の身では唐傘の重量に耐えきれなくて、殺されてしまった……だと思う。
▼唐傘の「理」は「捨てないで」「一緒にいてほしい」
・モノノ怪が反応していたのは、井戸に「大切なもの」が捨てられたとき。
→カメが櫛を井戸に捨てたとき、カラカラという音と共に家鳴りが起こる。
唐傘の「理」は「捨てないで」
→恨みがあって殺している訳じゃない。
→ただ、「何かを捨てようとしている人」を唐傘が「止めようとして」、結果的に殺人になってしまう。
・唐傘が人を殺すのは、「大切なものを捨てた時、捨てようとした時」
・麦谷が殺されたとき。
→麦谷はカメの所持品を捨てようとした。
→カメは櫛をすでに捨てていたけど、あの荷物の中には他にもまだ大切なものがあっただろう。
→「捨てられた物達」である唐傘は、「まだ捨てられていないもの」を守るために、麦谷を止めようとした。
→事実、「カメを、カメの所持品を捨てようとする」麦谷の意思に反応して、唐傘は顕現しようとした(櫃から溢れる水、水に滲む幾何学模様、手毬や万華鏡など)
→自分達と同じように捨てられてしまわないように、麦谷を止めようとした。
→結果、麦谷を殺害してしまった。
→同時に、「カメを守ろうとした」
・淡島が殺されたとき。
→つまり、カメが虐められ、カメに危険が迫ったとき。
→カメは、アサにとっての「大切なもの(人)」でもある。
→唐笠に殺されたのは、カメを苛めた麦谷、淡島。
→北川と彼女の同期、アサとカメ、それぞれの関係はよく似ている。
→北川は出来の悪い同期を疎んじていて、彼女を大奥から追放した。そのときに「彼女が大切だった」と気付いた。
→アサもカメを大切に思いつつも、不出来なカメにもどかしい思いをしていた。
→北川にとって、「カメを捨てること」は、かつての自分がしたこと「同期を捨てること」と同じ(似ている)ことで、それを止めようとした。
→北川は、アサにカメを捨ててほしくなった。誰にも奪われてほしくなかった。
→唐傘が麦谷と淡島を殺したのは、カメを守るためであり、ひいては「アサには自分のようになってほしくない」「かつての自分と同じ事が起きてほしくない」でもある。
→ただ、モノノ怪が出来るやり方(物理的に止める)が、「相手を殺すこと」という手段しかなかった。
・カメが殺されそうになった(唐傘に飲み込まれそうになった)とき。
→カメは大奥に来た時、彼女の大切なものである「櫛」を捨てている。
→カメはアサの「大切なもの」であると同時に、「大切なものを捨てた者」でもある。
→カメは北川や捨てられた物達の「これ以上捨てないで」という感情は向けられていないけれど、カメが捨てた櫛からは「どうして捨てたの」という感情は向けられているはず。
→麦谷や淡島のように、優先的に標的にならなかったのは、北川の意思があったから。
(アサの大切な人、淡島によって捨てられそうに/殺されそうになった者)
→それでもなお、カメが唐傘の標的になったのは、彼女が捨てた櫛によるもの。
(櫛にとっては、カメは既に捨てた側の者)
→薬売りさんがカメの救出には間に合ったのは、唐傘の中でも北川⇔櫛の意思が混在していて、すぐに殺せなかったのかもしれない。
→そもそも、唐傘も別に誰かを殺したい訳じゃなくて、捨てられた櫛も「どうして捨てたの」という感情で、カメに巻き付いていただけかもしれない。
→これには、唐傘の「理」に、「一緒にいたい(取り戻してほしい)」があるのでは?
・唐傘の「理」に、「一緒にいたい(取り戻してほしい)」に居てほしいがあるのでは、という考察。
→唐傘の「真」が北川様なのは、北川様が唐傘の媒介(モノノ怪の中心、きっかけ、依り代)になっているから――という前提で。
→北川様の死は、自殺によるもの。
→自ら井戸に身を投げて、結果、井戸の底で死んでしまった。
→これは「北川が、自分自身を捨てた」でもある。
→ここの北川様の心境は、ノベライズに描写があります。
「どうしたら取り戻せるのか、考えた。一度捨ててしまったものを、この手に抱く術はあるのか。……答えは一つ。自分も捨ててしまえばいい。そうすれば、同じところに行ける」
→結果、北上様は井戸に身を投げて、井戸の底で死んでいます。
→「捨てた」という過去は変えられないけれど、「持ち主が死ぬ(井戸の底に投げ込まれる)」ことで再会はできる。
→北上様が唐傘に、ひとつの方向性を与えたのでしょう。
→「持ち主が死ねば(井戸に投げ込まれれば)また一緒にいられるという。
→結果、北川様と北川様が捨てた人形は、唐傘の一部として融合することで、「また会えた」が叶っているという。
→だから、唐傘は――かつて手毬だった唐傘は、麦谷を殺し。
かつて万華鏡だった唐傘は、淡島を殺し。
かつて女中であり歌山の部下だった女達は、歌山を殺し。
櫛だった唐傘は、カメを殺そうとした。
→「捨てられたから恨んでいる、殺してやる」という怨念ではなくて、「もう一度一緒にいたい」「もう一度手に取ってほしい、抱えてほしい」「取り戻してほしい」という情念(希望、期待ともいえるかもしれない)で、人を殺した。殺そうとした。
→ただ、この理屈も完璧ではない。
→北上様にとっての「大切なもの」は、彼女が捨ててしまった、大奥から追放してしまった「同期の友人」のことです。
北上様が自殺したのも「後悔を抱えながらずっと生きていくのは辛い。生きていればいつかまたあの子に会えるかもしれない。だけど、そのいつかを待つのも辛い。この会えない日々を終わりにしたい」という気持ちから来るものなので。
→北上様が井戸に身投げして死んだところで、「北川がかつて人形を大切に思っていた気持ち」が完璧に昔通りになる訳ではない。
→北川様と人形は唐傘の中で再会したんでしょうけど、北川様にとって「人形はそこまで大切じゃない。大切じゃなくなった」という事実は変わりません。
→だから、北川様の人形は、唐傘の中に北川様がいる(同化している)というのに、笑わないし、傘を持っていない。
・唐傘が本当の意味で成仏したのは、「大切にしてくれる人(持ち主)が見つかったとき」
→大奥の井戸に溜まっていた、「捨てられた物/者の情念(唐傘)」は、薬売りさんに斬って祓われた。
→その後、カメの櫛はアサの手に渡り、北川の人形もアサの手に渡った。
→大切にしてくれる人の手に渡り、「捨てられた」という悲しさは一旦、払われた。
→アサが大奥で、「覚悟を決めるために大切なものを捨てる」という儀式を続けるかどうかは分からないけれど。
→少なくとも、「唐傘だった」人形と櫛は、もう唐傘に変貌することはない。
→大切にしてくれる人(アサ)が居るから、という。
→そういう意味では、「火鼠」、そして三作目へと謎は続いていきますが、「唐傘」というモノノ怪の物語においてはハッピーエンドなんだと思います。
モノノ怪シリーズらしい、切なくて綺麗なエンドだと思いました。
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2024/08/03