『トップガン マーヴェリック』、その傑作っぷりを称賛しつつもあえて言っておくなら、観る前に「軍隊がカッコよく描かれる映画、よりによっていま素直に楽しめるだろうか…」と若干不安だったのは事実で、結論を言えば「素直に楽しめた」のだが、→
それはトム・クルーズやコシンスキー監督ほか、作り手の圧倒的なエンタメ技術のたまものであって、本作が根本的に孕みうる(下手をすれば軍隊のプロパガンダとしても機能しうる)危険な側面が帳消しになるわけではない、むしろ濃厚にもなりうるよな…と複雑な気持ちが湧くのも否定できない。
…だが一方で、作り手もそれは承知の上で、こういう(華々しく軍隊の活躍を描くような)ジャンルの映画が時代遅れであり、なんなら不適切でもあり、今後は(それこそ劇中でマーベリックが揶揄されるように)「絶滅」していく可能性が大きいだろう、ということを誰よりわかっているようにも思えて、それが本作に絶妙な陰陽のバランスをもたらしているようにも感じる。
実際、本作が成立したのは超有名な前作『トップガン』の続編という口実があって、何よりトム・クルーズという「最後の映画スター」の存在があったからこそなわけで、『トップガン マーヴェリック』が世界的に大ヒットしたとしても(もうしているが)、同じような大作エンタメ映画が作られることは2度とないんじゃないかとさえ思う。
なので本作が極めて面白いエンタメであった事実そのものに若干の危惧を覚える一方で、観客と作り手の一種の共犯関係によって成り立っていたある映画ジャンルの「終わり」の雰囲気が色濃く漂っている本作は、「最後の映画スター」トム・クルーズが贈る大作にふさわしいと言えるのかもしれないな…とか、少ししんみりもするのだった。