ケテンラムはいろいろ謎の多い人物ですが、アシエンではないかと考えている方もいらっしゃるようです。私自身もありえなくはないと思っています。
というわけで、ケテンラムがアシエンである可能性について真面目に考えてみます。長文です。
今回、ゲーム本編からの引用等を多く用いつつ、長めの文章を展開しています。
そのため、論点が把握しづらくなりそうです。
ですので、まず最初に、要旨と最終的な私の結論を提示しておきます。
ケテンラムに関して、私が重要だと思っている点と疑問に思う点は以下の通り。
・高齢なはずだが、グラフィックから受ける印象は年齢よりも若く感じられる
・20年前と現在の姿に違いが見られるが、加齢のタイミングに不自然な点がある
・彼の来訪によってトラル大陸の歴史が大きく転換している
・トライヨラが建国された時期と、三大州でガレマール帝国が勃興した時期がかなり近い
次に、残存アシエンに関する要点
・残存している可能性のあるアシエンは、すべて転生組である
・転生組であるため、分かたれし世界の人間として生を享け、普通の人間として育った過去を持つ
・退場したと思われる転生組アシエンは以下の5名
ナプリアレス、イゲオルム、ファダニエル、ミトロン、アログリフ
・消息不明なのは以下の5名
ハルマルト、パシュタロット、デュダルフォン、ウルテマ、エメロロアルス
※エメロロアルスは消滅している可能性も高いが、とりあえずこちらに区分する
これらを踏まえた上で、ケテンラム=残存アシエン説がありえるか否か
ケテンラム=残存アシエン説がありえそうに思える点
・加齢のしかたに疑問点がある
・トラル大陸の歴史を動かしたキーパーソンである
→アシエンによる歴史介入の可能性を疑いたくなる
・ゾラージャに本気で殺されそうになったのに無事だった
・鏡像世界への扉を見守れる場所に住んでいた
反対に、ケテンラム=残存アシエン説の反証となりそうな点
・「老い先短い」ことを何度も口にしている
→永遠の命を持つ存在だとは考えにくい
・グルージャジャとの間に培われた友情が偽りだとは思えない
・アシエンであるならば、黄金郷(=鏡像世界)の存在を多くの人間に知らしめたのは違和感がある
・アシエンであるならば、「扉」の謎を解き明かすのにバルデシオン委員会のガラフを招くことを提案したであろうことは違和感がある。
以上から導き出された私自身の意見
・ケテンラムがアシエンである可能性を否定できるだけの証拠はない。だが、肯定できるほどの要素もまた見当たらない。
・個人的には「アシエンである」との見方に傾いている。
それでは、本編からの引用を行いつつ、細かい部分を見ていきます。
なお、ケテンラムの来歴についてはこちらでも触れていますので、併せてご覧いただければありがたいです。
今回の文章と重なっている部分もおおいです。
トラル大陸の歴史背景のまとめ
https://fusetter.com/tw/H0eCy4k0
ケテンラムという人物に関して一般的に知られている情報は、「おいしい野菜料理」という本からある程度窺うことができます。
この本は、6.55メインクエストにおいて、オールド・シャーレアンのヌーメノン大書院探索中に読むことができました。
クエストクリア後は大書院にいる「レファレンス用の魔法人形」に話しかけ、「トラル大陸の野菜について知りたい」を選択すると再度確認することができるようになっています。
『おいしい野菜料理』:
(前略)
第六星暦1498年のこと……。
リムサ・ロミンサの冒険家「ケテンラム」が、長い航海の末に蒼茫洋を突破、未知の大陸に到達した。
上陸した彼は、数か月に渡り内陸部の探検を行い、土着の植物の種子や果実を、エオルゼアへと持ち帰った。
特にポポトは、その栽培の容易さや栄養価の高さから、瞬く間に各地へと広まっていったのである。
余談だが、ケテンラムはマムージャ族の都、マムークを訪ねた際、「連王」と呼ばれる双頭の王に謁見し、親密になったらしい。
事実、彼は以後何度となくトラル大陸を訪れているのだ。
そして、エオルゼアに野菜のみならず多くの知識をもたらした。
豆たっぷりのブリトーのレシピから、伝承の数々まで……
あの「黄金郷」の名を巷間に流布させたのも彼の功績である。
この中から関係してそうな部分を抽出します。
・ケテンラムがトラル大陸に到達したのは第六星暦1498年である。
・ケテンラムはマムークを訪ねた際、双頭の王に謁見して親密になった。
・以降、何度となくトラル大陸を訪れている。
・黄金郷の名が広く知られるようになったのはケテンラムの功績である。
まず最初に、ケテンラムのおおよその年齢を推測してみます。
ケテンラムがトラル大陸の発見者として名を残しているということから、彼が未知の大海原に乗り出した船の権利者、もしくは一行の代表者だったのではないかと推測できます。
第六星暦1498年の時点で一行の代表者だったならば、それまでにある程度の社会的成功をおさめており、十分な責任能力を備えた人間と見なされていたのではないでしょうか。
本人の実力ではなく、出自等によって名声を得ていた可能性も考えられますが、その場合においても幼い子供というわけではなく、それなりの年齢に達していたと見たほうが自然です。
アルフィノやアリゼーの来歴から、シャーレアンにおける成人年齢は16歳だということがわかっています。ですので、あの世界における成人年齢はだいたいそのあたりだろうと推測できます。ならば1498年当時のケテンラムの年齢は16歳以下ではないと考えたほうがよさそうです。
常識的な線で考えるならば、20代半ばくらいが妥当でしょうか。
「食の試練」遂行中にシャブルク・ピビル誕生の逸話を聞くシーンで光の戦士の過去視が発動しています。この過去視の中で、かつてグルージャジャと旅していた頃のケテンラムの姿を確認することができます。
ルガディン族の成人男性であり、はっきりした年齢は不明なものの、子供でも年寄りでもないことは窺えます。20代~30代くらいならばしっくりくるでしょうか。成人したての16歳だとすれば、かなりの老け顔ということになりそうです。
新生エオルゼア開始の年は、第六星暦に換算すると1577年です。
1498年時点でケテンラムが25歳だとすれば黄金本編中の彼は104歳以上、16歳だとしても95歳以上です。
ルガディン族の寿命がリアル世界における人間と同じくらいだとするならば、かなりの高齢だと言わねはなりません。
現在の姿として示されているグラフィックは、若かりし日の姿と比べればひげや皺が追加されているものの、少しばかり「若すぎる」ように感じます。
もっとも、ルガディン族の寿命がどれくらいなのかは、今まで作中で明示されたことがありません。
ケテンラムの名を言い当てたアルフィノがその年齢に関して特に言及しなかったところから、年齢と見かけの間に違和感がなかった可能性も考えられます。
ですが、エレゼン族が「他種族よりも1~2割程度長寿」、ヴィエラ族が「200~250歳でヒューラン族のおよそ3倍」といったように、長寿であることが種族的な特徴である場合は背景設定が紹介された段階で言及されています。今まで言及されたことのないルガディン族に関しては「ヒューラン族と同程度の50~80歳」と見なすほうが妥当であるように思えます。
であるならば、ケテンラムは「平均的な寿命を越えてなお元気で若々しい」ということになります。
また、ストーリーが進むと、ガラフと黄金郷への扉を調べた時(=およそ20年前)の姿が出てきます。この20年前の姿は、先述したシャブルク・ピビル誕生の頃、すなわちおよそ80年前の姿と同一のモデルが使用されています。
ですが、人間の加齢変化を考えたとき、80年前(推定20代)と20年前(推定80代)が同じ姿であるというのは。かなり違和感があります。
グラフィックを使いまわすにしても、80年前は若者の姿、20年前と現在は同じ姿にしたほうが自然であるように思えます。
シャブルク・ピビル誕生の逸話は光の戦士が過去視で垣間見たものです。ですので、当時のケテンラムは実際にあのとおりの姿だったはずです。
20年前の姿に関しては、過去視ではなくケテンラムの語った内容の映像化です。ですので、光の戦士の脳内で展開された想像図であった可能性もあります。
単純に考えて、「過去の姿」であるから同じものとして処理されていたのかもしれません。
ですが、不死の存在アシエンや、時間の流れに異常をきたすことのある次元の狭間などが関わってくるストーリーにおいて、普通ではない加齢を連想させる描写が出てくると、そこに何か意味があるのではないかと疑いたくなります。
例えば、20年前まではケテンラムの肉体は加齢の起こらない状態だったのではないか。
あるいは、どこかの時点で次元の狭間、もしくは鏡像世界に飛ばされるような経験をしており、そのため肉体年齢がおかしくなっているのではないか。
このあたり、「単なる製作上の都合」なのか「重要な伏線」なのかの見極めがつきにくく、現時点でははっきりしたことはわからないと言わざるを得ません。
年齢に関する話は一旦ここまでにして、次はケテンラムがトラル大陸の歴史に与えた影響について考えていきます。
7.0メインクエストの序盤、トラル大陸に向かう船の中で、ケテンラムについて語っている人物がいます。
ルガディン族の探検家:
約80年前……あのメルウィブ提督が安全航路を発見する以前に、トラル大陸にたどり着いた初めてのエオルゼア人、ケテンラム。
俺の憧れの偉大な先達よ。
当時、彼はトラル大陸に初めて訪れた異邦人として、マムージャ族の王様に手厚くもてなされたらしい。
帰り際には、友好の証として大量の銀製品を贈られたんだとか。
加えてケテンラムは、ポポトやトマト、コーンなど、様々な作物をエオルゼアに持ち帰って広めた。
食卓にまで変革をもたらしたってことさ!
その後もケテンラムは、何度かトラル大陸を訪れたようだが、
航海の最中に行方不明になってそれきり、消息が途絶えたんだ。
偉大な探検家ですら命を落としてしまうのが、海の怖さだな。
(イベント会話後のヒントトーク)
ルガディン族の探検家:
トラル大陸には、ケテンラムですら到達していない、手つかずの秘境が多く残されてると言われてる。
それらを見つけて、あの人の功績を超えるのが俺の夢なのさ。
(Lv90メインクエスト:未知なる冒険へ)
先述の「おいしい野菜料理」と重なっている部分が多いのですが、こちらから知ることのできる部分を以下に書き出します。
・ケテンラムはトラル大陸に初めて訪れた異邦人としてマムージャ族の王に手厚くもてなされ、帰り際には友好の証として大量の銀製品を贈られた。
・ケテンラムは何度目かの航海の最中に行方不明になり、消息が途絶えた。
さて、上記の記述中にある「マムージャ族の王」ですが、グルージャジャと考えてよさそうです。
光の戦士がトラル大陸に着いた直後、ウクラマトによってトライヨラを案内されます。その中に「トライヨラ叙事詩」を刻みつけた石塔群を観察するシーンがあります。
ウクラマト:
こいつは「友(とも)の章」の石塔だ。
描かれてるのは、外つ国から来たナントカって探検家が、オヤジに謁見してるところらしい。
クルル:
もしかして、ケテンラムのことかしら?
ウクラマト:
ああ、たしかそうだ。
そのケテンラムってのがトラル大陸を訪れたことが、オヤジが旅に出るきっかけだったらしい。
オヤジは外つ国からの来訪者をえらく気に入って、友と呼べる間柄になったらしいが……
その後、そいつがどうなったのかは知らん!
クルル:エオルゼアでも、彼の消息については伝わってないわね。
しばらくの間は、トラル大陸との間を行き来したみたいだけれど、何度目かの航海で行方不明になったそうよ。
(Lv90メインクエスト:王が歩んだ旅路)
なお、このシーンでのウクラマトは「ケテンラム」の名を知りませんが、後に提示される情報によって、「タンカ」の名で本人とは幼少期から親しんでいたことがわかります。
ウクラマトの説明によれば、「友の章」は「ケテンラムがオヤジ(=グルージャジャ)に謁見してるところ」だということです。
ケテンラムがマムークに到達した時点で、グルージャジャはすでにマムージャの王となっていたようです。そしてケテンラムとの出会いがきっかけとなって、グルージャジャはトライヨラ建国の旅に出る決意を固めました。
ケテンラムの来訪がなければ、グルージャジャが外つ国の存在を知ることはなかっただろうと思われます。その場合、彼は広い世界を知らないままマムークに留まり続け、ヤクテル樹海に生きるマムージャたちの王として生涯を過ごしたかもしれません。
当然、多部族国家トライヨラが誕生することもなかったでしょう。
つまり、ケテンラムとグルージャジャの邂逅がトラル大陸の歴史を大きく変化させたと言えます。
外界からの来訪者が閉じられていた世界に大きな影響を与えるということ自体は、ある意味当たり前の現象であり、疑問視するような話ではありません。ですが、その来訪者の年齢周りに不審な点があるとなれば、少しばかり話が違ってきます。
どんな影響を与え、結果、どんなことが起こったのかを、より慎重に見直したくなります。
さて、ケテンラムがトラル大陸を訪れたこの時期、三大州ではどのようなことが起こっていたでしょうか。
私が着目したいのは、ケテンラムのトラル大陸到達からあまり時を置かず、ガレマール共和国(後に帝国)においてソル・ガルヴァスが台頭しはじめたことです。
1513年:ソル・ガルヴァスが軍団長に昇進し、軍制改革に着手
1517年:ソル・ガルヴァス、最高指導者である「独裁官」に就任
1522年:ガレマール共和国が帝政へと移行、ソル・ゾス・ガルヴァスが初代皇帝に即位
ケテンラムとグルージャジャが出会ったおよそ15年後、ソル・ガルヴァス(=アシエン・エメトセルク)が魔導技術を拠り所にガレマール国内で力を奮いはじめ、以後、10年足らずのうちに皇帝としてガレマールを率いていくようになりました。
なぜガレマールの動向に注目するかと言えば、ガレマールを支える魔導技術が青燐水と大きく関係しているからです。
青燐水はトラル大陸北部において多く産出されています。
ガレマールの文明は魔導技術、すなわち青燐水によって支えられています。
ガレマール国内でも青燐水の採取は行われています。ですが、青燐水が豊富な土地に対して彼らが野心を抱かないでいられるとはあまり思えません。状況と機会が許すならば、トラル大陸を支配下に収めようとする可能性は十分考えられます。
ケテンラムがアシエンだと仮定した場合、ガレマール帝国が勃興する傍らでケテンラムがトライヨラ建国を促すような行動に出るのは理屈に合わないように思えます。トラル大陸に外つ国に対抗できる国家が成立していたならば、ガレマールが侵攻を企てた際の妨げになるからです。
ですが、そもそもガレマール帝国は「アシエンが人の歴史に介入しやすくなるように打ち立てた国」です。
弱い国を争うことなく掌中に収めるよりも、力ある国との間に激しい戦いを起こしたほうがアシエンにとって都合がいいならば、「拮抗しうる力を持つふたつの国を同時に興そうとする」のは不自然なことではありません。
魔導城でガイウスが語ったように「人は太古より、他者との争いで自己を鍛え、奪うことで富み、支配することで栄えてきた」のであるならば、人間の世界に戦乱があることは、アシエンにとってむしろ望ましいとも言えます。
つまり、ガレマールの帝国化を図るアシエン・エメトセルクと示し合わせた上で、同時期にアシエンがトラル大陸に統一国家を創ろうとしていた可能性は、十分考えられるのです。
例えばエリディブスは、5.3メインクエスト中のヤ・シュトラとの対話の中で、次のように語っていました。
エリディブス:
あるときは(英雄の)手を取って導き、またあるときは、敵対者として成長を促した。
さらには本人に「なって」、世界を先導したことさえある。
それは私が力を得るための手段であると同時に、同胞たるアシエンたちが暗躍する舞台づくりにも役立った。
エメトセルクにとっての国と同じだ。
(5.3メインクエスト:色あせた記憶)
アシエンの世界との関わり方は、こういった形を取るものだったようです。ならば、相対する両陣営どちらの裏側にもアシエンがいるような状態は、別に驚くべきものではないと言えます。
ただ、だからといって「すべてがアシエンの陰謀である」と結論付けるのもまた、あまり健全な考え方ではありません。
偶然に導かれて人間同士が出会い、それによって歴史が動いていく。そういった可能性もまた十分考えられる……というよりも、個人的にはそのほうが好ましいと考えています。
ですのでここでは、「アシエンの計画によってトライヨラ建国が促された可能性もありえる」と示すにとどめたいと思います。
続いて、ケテンラムがヤクテル樹海の「碧眼の家」に住んでいたことについて考えていきます。
ケテンラムがいつ頃からここに住んでいたのかは、作中では明らかにされていません。
また「トラル大陸で暮らしていた」という真実が周知されず、「航海中に行方不明になった」という説が流布するようになった経緯も不明です。
「碧眼の家」で暮らしていたことについて、ケテンラムは次のように説明しています。
ウクラマト:
ケテンラムと言えば、外つ国じゃ有名な探検家なんだろ?
なんで故郷に戻らずに、こんなところでひとりで暮らしてんだ?
ケテンラム :
グルージャジャから頼まれて、マムークの連中が妙な真似を起こさぬよう、見張ってたのさ。
ま、それもお前のおかげでお役御免になりそうだがな。
ちなみに今回の継承の儀では、見届け役も依頼されていたんだ。
よほどの事がない限り、介入する気はなかったけどよ。
ウクラマト:
いくら連王の頼みつってもよぉ、外つ国からやってきた爺さんが、なんでそこまで……。
ケテンラム:
ウォーコー・ゾーモーの生前墓は見なかったのか?
若いころ、俺たちはともに旅をしていたんだ。
ま、今のお前たちと似たような関係だ。
(Lv95メインクエスト:黄金郷に至る路)
この引用の中でも感じられることですが、グルージャジャとケテンラムの間には親友、もしくは信頼に値する仲間というべき関係が結ばれていたようです。
この場面だけではなく、グルージャジャがゾラージャの手にかかって命を落そうとした場面でケテンラムと交わした言葉には確かな友情が窺えます。
武のグルージャジャ:
友よ……そこにいるか……?
ケテンラム:
もちろん、いるさ。
武のグルージャジャ:
我が子らを……たのむ……。
ケテンラム:
俺だって、お前と同じくジジイなんだ。
そこまで時間は残されちゃいないが……
わかった、引き受けよう。
武のグルージャジャ:
なあ……またいつか、旅をしようじゃねぇか……。
ケテンラム:
ああ、きっとな。
(Lv96メインクエスト:血の涙を拭って)
こういった場面に触れると、内心に偽りを抱えながら関係を築いていたとはあまり思いたくありません。
ですが、使命のために真実を隠して周囲の人間と深い関係を結ぶというのもまた、これまでにアシエンがやってきたことです。
エメトセルク:
私を見ろ……!
ほかの誰よりも長く、お前たちに交じって生きてきた!
ともに飯を食らい、戦い、患い、老いもした。
傍らで死を見送り、ときには子を成したことさえある。
(5.0メインクエスト:漆黒のヴィランズ)
ですので、友情が育まれていたことがアシエンであることを否定できる材料になるかと言えば、難しいものがあります。
少し話が脇道に逸れました。
航海中に行方不明になったとされていたケテンラムが実際にはヤクテル樹海で暮らしていたことに、もう一度話題を戻します。
ケテンラムがヤクテル樹海で暮らしていたのは、マムークのマムージャ族たちを見張るだけではなく、黄金郷への「扉」を守る役割を担っていたからだと思われます。
先の引用で示した部分はウクラマトたちが「天深きセノーテ」の内部に入るよりも前の場面です。ですので、ケテンラムはヤクテル樹海に黄金郷への扉が存在していることに言及することができませんでした。
ですがグルージャジャの死後、ゾラージャに秘石を奪われたことを打ち明けている場面では、彼が扉の監視という役割を担っていたことを明かしています。
ケテンラム:
実は、継承式があった日のこと、ヤクテル樹海にある俺の家に賊が侵入してな……。
不意を突かれ、無様にも昏倒させられちまったんだ。
どうにか気がついたときには室内が荒らされ、グルージャジャから預かっていた品々が消えていた……。
扉の監視という役目のため、保管していた秘石がな……。
(Lv96メインクエスト:頼れる仲間と共に)
「扉」の存在は、トラル大陸という場所を考える上で重要な要素です。
20年前の調査のとき、扉の向こうから訪れたクルルの両親から「鍵」を託されてからは、実際に鏡像世界へ繋がる可能性が出てきてしまいました。あまり多くの人間に存在を知らせるべきではない場所だと言えます。
なお、ガラフを招いて行われたこの20年前の調査ですが、なぜこのタイミングで調査を行うことになったのかに関しては、若干の心当たりがあります。
第六星暦1556年、メルウィブによってエオルゼアとトラル大陸を結ぶ安全航路が発見されています。以降、それまでは命がけの冒険であったエオルゼアとトラル大陸の往来がある程度安全に行えるようになりました。
このことによって、航海者を本業としているわけではないバルデシオン委員会の人間をトラル大陸へ招くことが可能になったのではないでしょうか。
バルデシオン委員会は「世界の脅威」に対抗するために未知の事象を研究する組織です。
トラル大陸の住人であるグルージャジャがバルデシオン委員会の存在を知ったのは、おそらくはケテンラムを通じてだったのではないかと思われます。
ケテンラムがアシエンであると仮定した場合、天深きセノーテの深部に鏡像世界への扉が存在しているという事実を事前に把握していた可能性は十分考えられます。
だからこそ、真実に辿りつくかもしれないバルデシオン委員会の存在をグルージャジャに素直に伝えたのは、疑問の余地のある振る舞いです。「わからない」とはぐらかしつつ、「扉」に触れる者が現れないようこっそり見張り続けるといった選択を行いそうなものです。
あの「扉」は「鍵」がなくては作動しないものでした。そして、あのタイミングで「扉」の向こう側から「鍵」を持つ者が訪れるとは、たとえアシエンであっても事前に予測できるものではないように思えます。
ただし、クルルの両親が「鍵」を持って逃亡できるよう導いたのもまたアシエンの仕業であったとするならば、話は別です。
クルルの両親はプリザベーションを避けつつ原初世界へと移動するという困難な試みを成功させたわけですが、そもそも成功できるようお膳立てされていた可能性もないとは言えません。
とは言うものの、何でもかんでも「アシエンのたくらみ」としてしまうことには、正直なところ抵抗を覚えます。辻褄があってしまう気持のよさのせいで「わかった」ような気持になりますが、「正解」だと決めつけるには仮定の事項が多すぎます。
長々と書き散らしてきましたが、現時点で提示されている情報をひととおり見た範囲での結論は、「どうとでも解釈できる」といったあたりになるかと思います。
とはいえ、見落としや勘違いもあるでしょう。何かお気づきのことがあれば、教えていただけるとありがたいです。