村正双騎1部鑑賞後の木材独自解釈。直後のメモをリライトしたもの。ネタバレや独自解釈がいやな人は見ないでね。私の解釈した双騎は村正を救うための蜻蛉切による孤独で静かな総力戦。
円環の丸
境界の四角
※
始まりと終わりは線で繋がっている
終わりはいつも凄惨だ
斬って突いて怨まれて
終わりは始まりに連結している
そしてまた 終わりに追い立てられて始まる
斬って突いて怨まれて 妖刀だと呪われて
膨大な終わりに へし折れてしまいそう
膨大な始まりに 気が触れてしまいそう
※
環たる円
円のうちにある境界の四角
円に囚われる居場所・秩序・理由
始まりが終わり終わりが始まる
俺もお前と同じ、縁に縛られている。
縁の糸は、俺たちを折るのか??
同じではないお前を、俺は救えないのか。
この荒れ果てた世界で。
「俺も、村正だ」
しかしどうして??
水も草木も土も、環を恐れてはいない。
森羅万象はあるがままで回っている。
自らも、循環の一部であると。
あいつは言っていた。俺たち槍も、刀も。
それならば。
※
環たる円
円のうちにある対照の三角
隣を写し 反転し 色を交えず 形を変えず
広がってゆく 四角を超えて 円の果てまで
「真っ暗でなにも見えません」
「そこに居ますか?蜻蛉切」
「ああ、すぐそばにいる」
大丈夫 俺たちの 最初の最初を思い出せ
丸い円の連続の中の 四角の中の三角だ
思い出せ 三角は
隣を写し 反転し 色を交えず 形を変えず
広がってゆく 四角を超えて 円の果てまで
これが始まり 後ろはない
お前を追い回すものは何もない
ここから先は 広がるばかり
隣を写し 反転し 色を交えず 形をかえず
丸い円の連続の中の 四角の中の三角の
分子の子宮からまた産まれよう
そして広がる先の有象無象
全部討ち取ればよいだろう
*
「正気デスか」
無論正気だ
「ホントに馬鹿デスね」
何を言うか
後ろの心配がないのだから
勝機が見えてきただろう?
大丈夫 俺たちはできる
俺たちなら、できる
「バカ!馬鹿デスね」
「途方もないこと 誰の入れ知恵デショウ?」
何笑ってるんデスか 失礼デスね
仕方がナイデスね 後ろがナイのだもの
「行くか」
「行きまショウ」
行こう サルビアの花畑の向こう
我々の其々の世界へ
※
蜻蛉切は自らに絡みつく本多の因縁を命綱に、境界の四角から村正とともに飛び降りた。
飛び降りた先は、蜻蛉切も知らない。
自分も惑い、縁に縛られてた身であるから。
ただ、踠きながらも僅かに光る糸口は見えた。
大地と繋がるかの刀が教えてくれていた。
蜻蛉切は自分の縁を信じて飛んだ。
壊れる村正を引っ掴み、言い訳できないくらいの始まりまで。
心拍がなく血流(対流)だけが流れ響く、自らの根源、四角のうちの三角。鉄の分子の檻まで。
兄弟のようで他人のようで、混じり合えない異なる存在。同じ檻には入れない。しかし同じ三角なのだ。
それぞれの分子の檻で微睡みながら、そばにいると村正を励ます蜻蛉切。
大丈夫。勝ちすじは見えた。
共に産まれなおし、戦おう、と。
★サルビアsalvus の語源は、
印欧祖語 solh-(欠けたものがない)+-wos(形容詞)
ラテン語 salus(安全)と同じ語源。
派生語は主に以下
safe(安全な)
salvage(救出)
salvation(救い)
槍を持っては常勝無双の蜻蛉切を、最も追い詰めた戦い。
槍と肉体だけでなく、精神、縁、歴史、情緒、記憶。それら全てを振りかざした静かなる救出劇。
それが「万の華うつす鏡」だったと個人的には解釈している。
20231209 無垢の床板