ミッドサマー 完全ネタバレ感想「このへんなしゅうらくは、まだ瑞典にあるのです。たぶん。」←フィンランドと間違えてたついでに加筆修正版
まず一言目に言わせていただきたいのが「疑似やんけ!!!」、二言目は「黒人と障害者の"枠"の使い方がメチャクチャに上手すぎる(誉めてない)」なんだけど、まあそれはもう言ったので一旦いいです。
さんざん既出でしょうが、「90年に一度」というのは絶対に嘘、あるいは言い方の問題で、毎年か隔年、最大限長く見積もっても高々18年に一度はやってますよねあのフェス。歴代メイクイーンの写真からしたらやっぱり毎年かな。「冬至にもやってるのでは」説も見かけましたがそれは流石に無いでしょう。現地真っ暗だわ氷点下余裕の寒さだわ氷雪に閉ざされてるわだし、向こうの一大イベント、クリスマスおめでとうハッピーニューイヤーの時期に失踪者が続出したら流石に騒ぎが大きくなりすぎますって。
ともあれ、祭礼、特にこの手の"秘儀"を維持するには「式次第」だけでは不足があり、「担い手」そして「経験」が必要不可欠なのであります。担い手を維持するに足るコミュニティ規模、経験を維持するに足るスパンのサイクル、これらが欠けてしまえば、いとも簡単に秘儀は失われてしまいましょう。本邦では最長64年というスパンを記録した「大嘗祭」という秘儀がありますが、これは例外中の例外、維持するコミュニティが国家規模というか国家そのものの大きさと権能を持っていて、あと式次第も明治以降に作ら……再整備された(であろう)ことが、人の一世代をギリギリ超えそうで超えない超ロングスパンを通せた秘訣ですね。しかし、そのあり方が「無理があろうと思われます」のは上皇陛下のお言葉にもある通りで、無理を通せなかった祭礼は消滅してしまいます。沖縄の久高島という場所で史料に残るだけでも600年以上の間、12年に一度のスパンで連綿と続いてきたとされる「イザイホー」という秘儀は、1978年に行われたのを最後に、1990年には島の過疎化により「新しい担い手」が不在となった結果行われず、以後2002年と2014年にも復活を果たせませんでした。このまま2026年にも行われなければ消滅が確定することでしょう。
ところが、本邦には「大嘗祭」の最長64年を超える72年のウルトラハイパーロングスパンで、かつ17回も定期的に行われている(つまり1152年も保たれている)祭り「金砂神社磯出大祭礼」というものがあります。どうやって担い手と経験の維持を?!という話ですが、これは乱暴に言うなら6年に一度の「小祭礼」が12回に一度「大祭礼」として行われるという仕組み。もちろん式次第の内容は異なりますが、担い手コミュニティや経験スパンは6年サイクルで維持・更新していると。これが「言い方の問題」ということです。同様に海外はインドでも144年に一度の「マハー・クンブ・メーラ」という大祭がありますが、実のところ3年・6年・12年といったスパンでその基礎となる祭礼がサイクルを回しているのです。そういった意味で「90年に一度」が"本当"だった可能性はゼロではないでしょう。ゼロではね。しかしながら、"類例も含めて完全に90年に一度しか行われない祭り"ではないことは火を見るより明らかです。
火といえば、ラストシーンはいわずもがな、老人二人も焼いてましたが「キリスト教国で火葬はアリなんか?土葬してたらキリ無いからカサ減らすために焼いてへん?」と思ったものの、どうもスウェーデンはキリスト教でもプロテスタントのルター派が治める地らしく、火葬が主流らしいですね。「じゃ、じゃあバイキングはどうなの?」と思ったらこっちも火葬してたらしく、身体を燃やすところには矛盾はないようです。まあ、矛盾が無いといってもホルガ村はHunter×Hunterのネオグリーンライフみたいな集団なので、表向きのサンプリング先と矛盾がないことと裏に邪悪な実利があることは全然両立するんですけどね。
ええと、なんの話だったかな。そう映画の話でしたね。正直言って最初はメール電話使いまくりだったのにフィンランド入りしてからスマホほとんど使ってないの謎すぎませんでした?まあスマホ使ってたら「ヘルシンキなう」「フィンランドまじ美人多すぎん?w」「自然の中で吸う草、最高!!!」「白夜でキノコに無限にまったりしてたら6時間過ぎてて横転している」「村人あったけぇ・・・」「え、待って無理すぎる、ヤバイヤバイ」で途切れるツイッタアカウントだらけですぐ村の存在が明るみに出るやろけども。何か携帯使うなとかペレ言ってたっけ。言ってたらごめん。村に入ってすぐに電波入らんみたいな描写があったかもね。
村に入る前に丘陵地で大麻とマッシュルーム茶みんなでやってましたけど、あそこの「目的地に極めて近いけど目的地じゃない」みたいなの、後から考えると怪しいですね。あそこは「麻薬は断固Noヤクブーツはやめろ」とか「SNSでここまでの道中を書いてる」とか「GPS持ってる」みたいな不適切な奴らを弾きつつ、麻薬をやらせてどこにいるかよくわからなくする場所だと思ってましたが、もしかしたらホルガA・ホルガB・ホルガC……みたいなのがあの先にいくつもあって、スカウトマンが指導者層に「今年はどこ?」って確認取る場所でもあるのかもしれませんね。
村と言えばヘルシングランドはヘルシンキから車で北に4時間ということは2~300kmあたりでしょうか。劇中にも「ヘルシンキは南の端」みたいな話が出てましたが、ヘルシンキは北緯60度ジャストくらいで、実は白夜にならないんですよね。90度(北極点)-23.4度(地軸の傾き)=66.6度でようやく白夜になるわけで、この条件を満たすのはフィンランド最北端のラッピ県(ラップランド)でも半分より上でないと駄目。でそこまでヘルシンキから車で4時間はどう考えても無理やろ……場所間違ってるんとちゃうか?と観劇中は思ってましたが、どうやら北緯60.6度以上なら「太陽は完全に沈むが完全に暗くならない夕闇状態のまままた日が昇ってくる」とのことで、主人公の子がバッドトリップでぶっ倒れてる間に「2時間くらい薄暗くなった」ということ話もあったので、まあ場所はやっぱりその辺なんでしょう。と、長々書いてましたが実は舞台はスウェーデン、つーかヘルシングランドはヘルシングランドとして名前通りの名前で実在する場所なんすね。ヘルシングランドでヘルシンキ連想して記憶が錯綜したのかな~、でもその前に「ヘルシンキ着いたら性風俗店に行こう」と言ってた気が絶対するんだけどな~。不思議。そっちの意味で場所間違えてたか~。でもまあ、ヘルシンキから北上しようがストックホルムから北上しようが、夏至の太陽の具合はだいたいおんなじですね。はい。
で話が一気に不穏になる窪塚洋介からのモーターサイクルそしてクールポコはさておき、ラブストーリーのタペストリーだのヘンリー・ダーガー調の壁画(と言うんか?壁の絵ではあるが……)だの、その時点で「これどう見ても近年の作やんけ」みたいなの、博士号取ろうとしてるアメリカの大学院生が分からんもんなんでしょうか?いや始終大麻吸ってる眉頭低男はアホなんでしゃーないとしてもやで?そもそも90年スパンて時点で疑わへんかったんかいな、と。まあそこをあまり詰めると話が進まなくなるんですが、でも「このルーン文字は共通ゲルマンルーン(キリッ」とかやるんなら、「この女陰の描き方はおかしい」「しかもハートマークでらぶらぶちゅっちゅて」みたいなのあってもよかったのでは……あったら皆死んでへんか。そうか。そやな。というか「メイクイーンは5月1日に選出するのになんで夏至にやってんだ?」とか始終大麻吸ってる眉頭低男(立ちション野郎)はアホなんでしゃーないとして、アッテストゥパン知ってた黒人系の人は絶対おかしい思わんとおかしいでしょ。……まあおかしい言ってたら皆死んでへんか。そうか。そやな。
その後の余所者が一人一人消えてくところとかハーブを飲んでトリップとかメイクイーン・ダンスバトルとかはよかったですね。障害者枠を「無垢だから託宣を下せるんですわ、そういう風に作ってるんですわ」って出してくるのはブラックすぎて笑いかけちゃいましたけどね。向こうでも"奇跡の詩人"みたいな概念あるんやな、と。ところで最初の老人×2をオープンファイヤーで燃やしてましたけど、あんなんで人は綺麗に燃えるもんなんですかね?それと激臭すると思うんですよね。人って焼いたら。その後ラストシーンでなんか加工品にして持ってきてたし、あの場では火にかけてすぐ下ろしたって解釈か、それとも灰にした(ラストのは人形)という解釈か、どっちなんですかね。まああの焼き方で灰にするのは厳しいんとちゃいますかね。それと景気良くブチ殺したり血のワシやったりしてますけど、やっぱりそれも激臭すると思うんですよね。あんな開けた場所でね。アレでいけたら埼玉愛犬家連続殺人事件のアフリカケンネル関根元さんも「ボディを透明にする」テクでドヤらない訳でしてね。飲食物に怪しげな薬が混ざってて気付かないとかそんな話なのかな……
さて話はクライマックスまで飛んで種付け許可証の件ですが、あれどうみても疑似ちゃいます?いくら白人のが長いとはいえあれだけ腰と腰が離れてれば……ねぇ。そこ気になってしょうがなくありませんでした?脇毛はよかったけども。
喘ぎ声をみんなで真似するとか、悲嘆をみんなで真似するとかは顕著なんですけど、例のクールポコの前のみんなで苦しむシーンとか、最後のファイアーハウス(違)のみんなで苦しむシーンとか、感情の増幅と伝播にとても効果的なんですよね。特にアンアンとワーンワーンは村の部外者に当ててる分、そこを通して観客にも訴えかける力が凄かったですね。やっぱり呼吸と感情を揃えるムーヴはシンプルにしてマッシブな洗脳の力がありますからね。体育会系の声出していこう!も富士山麓地獄の合宿もみなこのメソッドは使いますし、主人公も最後は村とひとつになれてよかったんじゃないでしょうか。
それはさておき、アッテストゥパン知ってた黒人、なんでこのロケで黒人?露骨に"枠"でしょ……と思ってましたが、まさか「ハーフスケキヨスタイルで埋ってる足が黒いから一発で誰が死んでるか分かる」ちゅー露骨なブラックギャグをカマしてくるとは思いませんでしたね。ヤッターマンコーヒーライターあるいはマンコ・カパックの場面に並ぶ後半爆笑シーンだと思います。
まあそんなわけでミッドサマー、「自殺しそうな人には見せないでって議論が出てます!だから日本公開前に詳細にネタバレします!!」ってタマムシュッド事件並に謎な理論のブログが書いてる通りの筋であって、特に新鮮な驚きはありませんでしたが、細かいギャグとトホホが冴えるコメディホラーではなかったでしょうか。僕はそう捉えましたね。では、また。