ラストマイル感想!
個人的な話ですが
自分もお客様のためなら!という企業にいたことがあります
しかもその対象のお客様が万人が大切にするべきだという存在だったものだから、「そのためならどこまでもできるよね?」という無言の圧力がすごくあったのでした
筧が真正面から「ブラックフライデーが怖い」っていう山﨑の声を伝える、あの、青っぽい白っぽい画面、エレナの視点、すごくぞわーーーーっとした
「せーの!」って言ってみんなで止めるんじゃなくて、
せーの、でひとりで飛び降りてしまう気持ち。
私、これ知ってる、ってなった。
山﨑が机持ってきたときの、もうこれしかないっていう確信、これだっていう興奮。後から考えたら何やってんだろっていう。
深夜の職場で、電気が煌々とついてる中、みんな帰っちゃって一人で、静かで、でも車が走っていく音とかはする中で。突然、古紙を入れた段ボールを殴って、落として、蹴って、中身をぶちまけて、30分くらい経って冷静になって紙を拾った日のことを思い出した。
高いところがなくてよかったと思う。
正直、五十嵐がそれでもレーンを動かし続けたのを、ヤバい、おかしいよ、と思う気持ちと共に、ちょっと、「わかる」「だよな」とも思っちゃうんだ。
たぶん、みんながどこかで「この感覚知ってる」ってなる映画だったんじゃないかな。
私もエレナのようにレーンを降りて、別の方法を考えることにして今に至っています。
でも、現状、特に何かの影響力を持っていない自分に接するたび、レーンを降りずに頑張れたんじゃないか、と思うときもあります。
内部から変えて、「せーの!」って言えるようになったらよかったなって……。
孔は現状維持で、って言ってたけれど、現状維持したままではたくさんの問題を孕んだままであることに気がついたと思う、あの一人用のロッカーを見ながら、「せーの」って言えるたくさんの仲間を集められるといい。
彼はあの四日間でエレナからとてつもないものを託されたけど同時にもらったんだと……思う!
最後、「間に合う」のが、実際足を動かして届ける人たちだったの涙腺刺激されてやばかった。しかも、あの洗濯機がなければ息子も無事じゃなかった……でもあの洗濯機はもう二度と直せない。
誇らしくて悲しい。
エレナ、すごく、すごく好きだけどなんていうか、あの、仕事ができて、明るく茶化しておちゃめで、そして全然平気!っていう態度とってるの、めっっちゃ覚えあるんだよね。私の前からいなくなった、「この人がやめるならもうこの会社は終わりだな」って思わせた人たちのことを思い出した。実際、その人たちがいなくなっても私がいなくなっても会社は終わってないんだけど。
満島ひかりがしゃべる野木脚本、すごいよかった。
いやしかし、中村倫也の説得力〜!!!!
山﨑の行動って追い詰められた人間のものだから整合性とれてなくて「?」ってなりそうなんだけどこの人のこの感じ、やっちゃうな、の説得力すごい。滲み出る繊細さ、追い詰められてる目、思い切りのよさ。いやホント、すごいわかるー、ってなった。
岡田将生の孔の、すぐ警察を呼ぼうとする「真っ当さ」が服着てる感じも非常にわかるー。
あの、爆弾にぶち当たってしまった夜のふたりがすごく好きで。
孔、逃げてもいいと思うけれど逃げないんだよね。あそこでひとり逃げられる人間じゃないんだよね。それだけで信用できてしまう。前情報なしで見に行ったので、彼が犯人の可能性とかも考えてしまっていたんだけど。
震える手でコーヒーを飲んだ夜、わけわかんないあの夜を、ふたりとも忘れないんだろうな。
エレナはおもちゃ買ってもらえなかったと言ってたけど、エリートコースに乗ってる現状をみるに、いいとこの家だけどほしいものは一つも買ってもらえなかったのか、それとも貧困から這い上がったのか。いずれにしても「ほしい」が肥大化する環境だったんだろうな。
エレナをファーストネームで呼ぶであろうサラよりも、「舟渡さん」って呼ぶ人たちの方が「仕事上の付き合い」でありながらよっぽど彼女のことを思っている。
ファーストネームで読んで、領域に踏み込んでまだまだできるでしょうってずかずか入り込んでくる人たちよりも、舟渡さーんって呼びかけてくれる人たちの方がよっぽど。
山﨑のことを静かに語る六郎。4話のときみたく「お前と話したかった」と言いたげに山﨑のベッドに佇む伊吹。引き取り手がいない遺体を切なげに見遣る神倉。見上げたやつだと言う中堂、そんな根性いらないときっぱり言うミコト。
みんなお仕事でやってる。やれることを実直に。それだけでいいんだって、しみじみする。
じわじわ染み込んでくる映画だった。いやー、見た直後よりも見た後にじわじわ来るのすごいや。
毛利さんやっぱ最高にかっこいいな。たぶん、「ちゃんと仕事すること」の象徴が彼なんだよな、と思う。