Irisシリーズ第5弾「白虹燃え、天地を穿つ」どネタバレ注意。会話だけのやつ。たまとあいつ
たまと京極
「……あの」
「はい、なんでしょう」
「その格好、何とかならないんですか?」
「と言いますと」
「目立ちます」
「……そうでしょうか」
「どれだけ周りに興味ないんですか? すごく見られてますよ」
「それはお嬢さんの方では?」
「はい?」
「あなたも大概目立つかと」
「…………服、買いに行きましょう」
「分かりました」
「手持ちがないので貸してください。できればその、下着も揃えたいんですけど」
「予算の心配はございません。ご婦人の買い物に気を遣わせるほどの甲斐性無しではありません」
「……そうですか」
「お待たせしました」
「…………」
「何ですか」
「……いえ、参考になるなと」
「はい?」
「よくお似合いです」
「それを先に言うべきじゃありませんか?」
「面目次第もありません」
「はあ、もう良いです。あなたの分も買いましょう」
「分かりました」
「ふざけてます?」
「と言いますと?」
「今着てるのと大差ありませんよね?」
「…………? 新品ですが」
「もう、勝手にやります。上から下まで3セット見繕っておけば良いですよね」
「お嬢さんの手を煩わせます」
「あなたに任せた方が私を煩わせます」
「……お任せいたします」
「……ムカつく」
「何故」
「我ながら似合うコーデをしてしまったなという後悔です」
「なるほど」
「あなた本当に自分の見た目に興味ないんですね」
「ないわけではございませんが、リソースを割いた試しがなく。よく分からないというのが正確です」
「それ興味ないのと一緒です。とりあえず清潔さと白黒使えば大体問題ない程度の認識、最低ラインすぎます」
「鋭意努力致します」
「……まあ、黒が似合って良かったですね。何でも着れますから」
「はい」
「玉青様、入ってもよろしいでしょうか」
「……どうぞ」
「失礼します」
「何か用ですか?」
「お返しするものがございます」
「あ……これ」
「玉青様と幸江様のお荷物です。勝手ながら預かっておりましたので、返却させていただきます」
「もう、捨てられちゃったと、思ってました」
「……それでは、失礼します」
「あの」
「はい」
「……いいえ、何でもありません。私もう、寝ますから」
「はい。おやすみなさいませ」
「…………」
「やっぱりダメです。水気が多くて、これ以上先を軟泥たちだけでマッピングするのは厳しいです」
「ふむ」
「やっぱり私も地下へ行きます」
「ダメです」
「……!」
「限界まで粘りましょう。周囲だけでもやってから赴くべきです。地下にいる怪物たちへの対処法も逃げる以外ありませんので」
「でも、ゆきちゃんがずっと怖がってることだけが伝わってくるんです。日増しに……状況が悪くなってるのかも」
「そうだとしても、生身での探索は危険すぎます。私共しかいないのです。繭との接触も、本当に最終手段なのです。あなたがいなくて誰が幸江様の世話をするのですか」
「……分かり、ました」
「(信用できるか、使える人間がいないのは痛手だった。脳人間と化した研究員の皆様を動員できない、佐比売党に勘付かれるわけにもいかない中では、やはり限界があるか。天狗様のお力をお借りするべきか……対価の用意が急務だ)」