懇請に告ぐトロープス、プレイから1周年記念SS(セクエンツィア・トロープスネタバレあり)
瑞鳥の節、某日
今日は王都へ帰る途中の道で、約2年ぶりに果ての城に立ち寄りました。
ニルさんに「果ての城は自分で片付けます」と約束してから約1年半、ようやく果ての城に行く決心がつきました。
城内の鬱々とした雰囲気は昔のままで、レオンさんも「暗い城だな」と呟いていました。僕の記憶がこの城を暗く見せているのだと思っていましたが、他の人から見てもあの城は暗いみたいです。
まず城内全体を見て回ることにしました。回っている最中に気がついたのですが、この城はもしかしてあまり大きくないのでしょうか。僕の記憶ではもう少し広かったですし、天井ももっと高かったように思えます。僕の身長が伸びたせいでしょうか。帰国するたびに、身長が伸びているとアルバスさんから言われます。
肝心の片付けなのですが、例の部屋に向かう途中で気分が悪くなってしまったので、明日から本格的に始め
ドアをノックする音が聞こえた。書き途中だった日記帳をそのままにして、ドアを開ける。
そこに立っていたのは、エウケさんだった。果ての城の片付けの話をしたところ、片付けを手伝うために僕達が城に寄る予定日から待っていてくれてたらしく、果ての城に着くと彼がいて驚かされた。自分から手伝いに来てくれるなんて、親切な人だ。
「気分は良くなったか? レオンと相談した。あの部屋は明日、俺が見に行く。貴方は、彼と一緒に他の部屋を片付けてほしい」
「ごめん、なさい。僕が言い出したのに、め迷惑、かけてしまって」
そう言うと、エウケさんは気にするなと首を横に振る。
城内を見て回っている最中、舌を切除していた部屋へ向かう廊下の途中で吐いてしまった。昔はなんともなかったから、この反応には僕自身が一番驚いた。片付けを言い出したのは僕なのに、二人に迷惑をかけて申し訳ない。
僕の体調が落ち着いたことに安心したような表情をしていた彼が、ふと別の場所に視線を移した。視線を追ってみると、どうも僕の背後を見ている。
「エウケ、さん。どうしましたか……?」
「! 申し訳ない。あれが気になってしまった。日記か?」
開いた日記帳を指摘されて、僕は背後の机の上に置いていた日記帳を急いで閉じる。あまりの勢いに、エウケさんが驚いたような顔をしている。
「……日記の中身、み、見ましたか……」
「いや……。もしや、見たらまずいものだったか」
「……僕が死んだ時に、コル兄上とお話しするため、に書いてる、んです。ちゃんとお土産話、したくて。だだから、ええと……兄上に一番最初に、読んでほしいんです」
そこまで言うと、エウケさんは合点がいったという様子で頷く。これ以上は突っ込むつもりはないようで、明日の予定についての話に戻った。
「……きっと喜んでくれる」
話が終わってドアを閉じる前に、エウケさんはそう言ってくれた。
……前に僕がお土産話をした時、たくさん喜んでくれたから。きっとその時と同じくらい喜んでくれるはず。
次会ったときも、たくさん土産話を聞かせて欲しい
兄上、楽しみにしていてください。この日記帳いっぱいのお土産を持って、兄上の元に行きますから。
炬火の節 某日
会える機会にと、エウケさんが誕生日プレゼントを贈ってくれました。
気持ちはとても嬉しかったです。ただ、プレゼントが日記帳十数冊で、200年は生きないと使い切れそうにありません。
コル兄上達にはあと200年待ってもらうしかないのでしょうか。