テンポ変更の計算方法の話
・言葉の定義
テンポ:♩=○○○←この値
音価:音の楽譜上での長さ。今回は全音符𝅝=1とする。つまり4分音符=1/4、8分3連符(=4分音符を3等分)=1/12、付点8分音符(=16分音符3つ分)=3/16……等となる。
12分音符 := 8分3連符 = 1拍3連符
24分音符 := 16分3連符 = 1拍6連符
……etc
単に「24分」と書いた場合は「24分音符1個分の長さ」を表す
・計算方法
原曲とバンブラ上で
音価 × 1/テンポ
の値が一致するようにする。
(この式でうまくいく理由は後述)
・簡単な例
Q1. テンポ100の16分音符をバンブラ上の8分音符で打ち込むにはテンポいくつにすればいいか?
A1.
元:音価 × 1/テンポ = 1/16 × 1/100
バンブラ: 音価 × 1/テンポ = 1/8 × 1/テンポ
この2つが一致すればいいから、
1/16 × 1/100 = 1/8 × 1/テンポ
→ テンポ=200 (つまり2倍速)
こんな感じで計算できる。
Q2. テンポ100で付点16分+付点16分+16分のリズムを、バンブラ上の12分音符で再現するには……
A2.
①テンポ100の付点16分→テンポxの12分音符
3/32 × 1/100 = 1/12 × 1/x
→ x = 88.888… (8/9倍)
②テンポ100の16分音符→テンポyの12分音符
1/16 × 1/100 = 1/12 × 1/y
→ y = 133.33… (4/3倍)
よって、3連符の1,2音目をテンポ89、3音目をテンポ133にする。
こんな感じでテンポ変更回数を多く消費することになるが、2倍速の使用を回避しつつ細かいリズムを再現できたりもする。
・16分音符と12分音符を併用する
16分音符と12分音符のズレをテンポ変更で調整することで、見た目上等速で24分音符・32分音符を再現できる。
1拍の中の16分音符の4音を16①~16④、12分音符の3音を12①~12③とすると、各音符の間隔は
16①12① ←16分→ 16② ←48分→ 12② ←24分→ 16③ ←24分→ 12③ ←48分→ 16④ ←16分→ 次の拍頭
これを元にテンポを計算していくと、
24分音符再現:
頭, 16④ - 3/2倍
16②, 12③ - 1/2倍
12② - 1倍
32分音符再現:16②~16④間のみ可能で、
16②, 12③ - 2/3倍
12② - 4/3倍
(16④ - 1倍)
とテンポを置くことで再現できることがわかる。
16分音符と12分音符を同時に使うため、大抵の場合2パート使う必要がある。(音量0で音を切るだけ、ドラムパートの上下を使える……etcなら1パートでも使える。)
・計算方法の拡張
複数の音符で調整するときは、原曲とバンブラ上で
音価 × 1/テンポ
の"和"が一致するようにする。
(この式でうまくいく理由はやっぱり後述)
・テンポ300くらいで近似する
計算結果でテンポが300を超えてしまうときに使える方法
例1. 16分音符と12分音符を併用して24分音符を再現したいが、テンポが240のとき
→そのままでは
頭, 16④ - 360 ←!!
16②, 12③ - 120
12② - 240
となってテンポ300を超えてしまう。
そこで、頭-16②の16分をテンポ300として、16②-12②の48分をテンポxにすることで長さを調節してみる。
原曲:テンポ240で24分音符2つ分 → 2/24 × 1/240
バンブラ:テンポ300の16分 + テンポxの48分 → 1/16 × 1/300 + 1/48 × 1/x
これが一致すればいいから、
2/24 × 1/240 = 1/16 × 1/300 + 1/48 × 1/x
→ x = 150
よって、
頭, 16④ - 300
16②, 12③ - 150
12② - 240
として近似ながら再現できる。少しくらいならテンポ上限超えてもなんとかなる!
例2. テンポ120で16分音符のリズムを維持しつつ12分音符で付点16分+付点16分+16分のリズムを打ち込みたい
→32分音符再現を参考にしつつ、12③と16④が同時になるようにすると、
16② - 80
12② - 160
16③ - 120
12③ - ∞ ←??????
16④ - 120
12③が明らかに無理。これを300で近似して、16③で調整することを考えると、
原曲:テンポ120の16分 → 1/16 × 1/120
バンブラ:テンポxの24分 + テンポ300の48分 → 1/24 × 1/x + 1/48 × 1/300
だから、1/16 × 1/120 = 1/24 × 1/x + 1/48 × 1/300
→ x = 92.308…… ~ 92
よって、
16③ - 92
12③ - 300
として近似再現できる。
実用例:Butter-fly(すいふぃトライ) http://9129suppon.com/music/anison/86698
2小節4拍目、テンポ86で 16分ハイハット+付点16分リム になっている
・計算ツール
こんな方程式手計算で解きたくない……というときにオススメのツール
スマホ向け:Photomath https://photomath.net/en/
PC向け:Wolfram
Alpha https://www.wolframalpha.com/
(もっと簡単なツールないかな……)
・参考ページ
モード/作曲 - 大合奏!バンドブラザーズP まとめ Wiki* https://wikiwiki.jp/bandbrosp/%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%89/%E4%BD%9C%E6%9B%B2#y194e2b1
簡単な例の比率がいくつか載ってます。
・おまけ:計算方法の証明、余談
再現するには原曲とバンブラ上で各音符の実時間での長さが一致するようにすればいい。音符の実時間での長さ(秒)はテンポ, 音価を使って
4×音価 × 60/テンポ (=音価が4分音符何個分か × 4分音符1個の長さは何秒か)
と表せる。
原曲の音価, テンポを音価a, テンポa、バンブラの音価, テンポを音価b, テンポbと書くと、
4×音価a × 60/テンポa = 4×音価b × 60/テンポb
両辺4×60で割って
音価a × 1/テンポa = 音価b × 1/テンポb
つまり 音価 × 1/テンポ が原曲とバンブラで一致すればいい。
また、秒を基準にしてるので、音符が複数あるときは音符それぞれについて 4×音価 × 60/テンポ を足していけばいい。つまり、
4×音価a1 × 60/テンポa1 + 4×音価a2 × 60/テンポa2 + ……
= 4×音価b1 × 60/テンポb1 + 4×音価b2 × 60/テンポb2 + ……
となり、両辺4×60で割って
音価a1 × 1/テンポa1 + 音価a2 × 1/テンポa2 + ……
= 音価b1 × 1/テンポb1 + 音価b2 × 1/テンポb2 + ……
つまり、音価 × 1/テンポ の和が一致すればいいことがわかる。
証明の過程からわかるように、音価の基準はどこに置いてもいい。(「4×60で割って」の割る値が変わるだけで結論は変わらない。)
例えば48分音符を基準とすると48分→1, 24分→2, 16分→3となり、24分を16分で表すには
2 × 1/元テンポ = 3 × 1/バンブラテンポ
→ バンブラテンポ = 元テンポ × 3/2
と計算できる。
しかし、基準をうまく取らないと逆に計算が難しくなることもある。全音符=1とすれば「○分音符△個分」→△/○と機械的に計算できるので分かり易い。