モノトーンミュージアム卓も近づいてきましたので、キャラ紹介的な前日譚SSを……
こんな感じの少し無神経な庭師で参加していきます
https://character-sheets.appspot.com/mnt/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEY6f-AkwQM
がらがらがらがらと車輪が回る
たかたかたかたかと地面を叩く
時折、ひんっと声を上げるのは
灰色の毛並みにぶちが浮いた痩せ馬だ
老いた馬だ きらきらと輝くような眼差しも 精悍だったたてがみも
今となっては昔の話 それでも彼は歩みを止めず ただただ前に車を引く
「そろそろ『商いの国』に着くか・・・」
荷馬車に乗った御者が独り言をつぶやく
若い男だ。それなりに整った身なりと言葉遣いは彼が辺境の農夫ではなく、都市の人間である事を物語る
荷車には小さな麻袋が小分けにされて並んでおり、
人間の子供ほどの背丈の小木が根を保護された状態で詰め込まれていた
それは彼が左の地の各所を巡りに巡って買い集めた草木の数々である
「お嬢様もきっと喜んでくれるはずだ」
そんなものを荷車いっぱいにして運んでいく彼の仕事は、行商人でもなければ花屋でもない
ハルシア家という一族に仕える庭師である
「今回は『海』の方の花も手に入った。帰ったらすぐに植え付けをしないと」
ハルシア家の令嬢、マリアは『とある事情』から家の外に出る事が許されていない
外の世界も知らず、家の中で一生を終える・・・・それが彼女の『しあわせ』なのだ
従うべき御標を持たない彼とは違う、御標を持つ者だけに許された『しあわせ』
だけど、それは少し寂しすぎる話だ
そう思った彼は、暇を見ては国の外に足を延ばし、珍しい植物を手に入れてはそれを庭に植えていた
全てはマリア様のため、『外』に出られない彼女の目を楽しませたいという一心から出た行動だ
「最近、マリア様はあまり気が晴れない御様子だったからな・・・・
これで元気を取り戻してくれるといいが」
そんな事を呟きながら、彼は『商いの国』への帰りを急ぐ
先に待つものも知らず 彼女の抱えた想いも知らず
何も知らずに、ただただとことこと馬を走らせていく