東雲虎翔のSS。
お題メーカーで「『暗闇』をその単語使わずに取り入れた文書いて」みたいなこと言われたので書いた。「暗い」は許してよ。
「帰りたいと思える場所があること」
ピピピ…ピピピ…ピピピ…
「う~ん…??朝、??」
ベットから腕を伸ばし、目覚まし時計を止める…はずだった手は空を切る。
何度か虚空を彷徨わせてもけたたましい音は止まない。それに観念したのか唸り声を上げながら東雲虎翔(しののめ たいが)は体を起こした。
光源のない室内は暗く、「もう一度横になってしまおうか」という思いが彼の脳内をよぎる…がそういうわけにも行かない。
だって、今日は、俺の二十歳の誕生日だ。
昨日は正直言って散々だった。今までも沢山反抗してきたし、親孝行らしい親孝行は出来ていない。それは申し訳ないとは思う。でもだからってぶたなくても良かったんじゃないか。
一晩経ってもまだ熱を持つその頬をさすりながら東雲は立ち上げると、まっすぐ自身の勉強机へと足を向ける。二つある引き出しの一方から鍵を取り出し、鍵穴のついたもう一方の引き出しを開ける。
中に入っていた三つの封筒を手に取り、机の下に置いていた鞄とギターケースを手に取る。着ている服はもう既に私服だ、そもそもとしてパジャマは昨夜はクローゼットの中で眠っていた。あとはこの手紙を置いて無駄に広いこの家から出るだけだ。
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「う~ん、やっぱ慣れないなぁ」
カットからカラー、それに加えてセットまで全てお任せにしたからなのか、今までの東雲だったらしない金髪のハーフアップとかなり目立つヘアスタイルとなっていた。また、少し視線をずらすと両耳にはファーストピアスだろうか、シンプルなピアスが輝いている。本人も気恥ずかしさが勝つのか視線が泳いでいた。
「でも、実際に見てみると本当に栄えてるな、ここら辺…」
別にずっと家の中にいたとか、そういうわけではない。が、今までは学校が終わればすぐに習い事、コンサートや大会に参加していたため自分の時間が取れなかった。その反動だろうか…今の東雲は肉まんを食べながら「次はあそこのお店入ってみよう」と考えていた。因みに次で五軒目になる。
「あ、折角なら海、見ておきたいかも」
どうせ後はこの街を出るだけなのだ、やっておきたいことを存分にやってからでないと気が済まない。金ならあるし、今は急いでいるわけでも、急かされているわけでもない。…途端に目を輝かせ始めた東雲に店主もにこやかな表情で彼を見守っていた。
その瞬間、通りを潮風が吹き抜け、東雲は思わず笑みを浮かべたのだった。
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