【琴・禽・空・華】の話。
1回プロデュースして読んだだけの初見感想です。
◆
明確にGRAD以降の話でしたね。【鱗・鱗・謹・賀】で心細くなっている人のところへ行こう!と終わって、それからGRADで足を怪我したアイドルという霧子に救えない人物に出会うという展開となっていました。そこで医者とアイドルと二つの道が現れて、足を怪我した人を助けるなら医者でなければと思うところ、アイドルにもできることがあるという風に決着したのでした。で、【琴・禽・空・華】はその続き。アイドルと医学部受験を両立することの困難さが目の前に現れる。
◆
描かれていることのモチーフとしては、過去の霧子のプロデュースカードよりも、sSRの【我・思・君・思】と【君・空・我・空】の2つとの関連を感じました。土と空と、一瞬の生というイメージです。綺麗に整理できている話ではなくまだ連想レベルのことなのですが、書き残しておきます。
◇
【琴・禽・空・華】にはフクジュソウという植物が出てきます。Wikipedia情報ですが、フクジュソウは春に咲く花で、夏までに光合成をおこなって必要な栄養素を蓄えて、残りの時間は地下で過ごす植物だそうです。土の中にいる時間の方がずっと長い。
フクジュソウ - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%AF%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%82%BD%E3%82%A6
で、フクジュソウは春に咲く花なので、「スプリング・エフェメラル」として知られる、と。私はこの言葉を初めて知りました。
スプリング・エフェメラル - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%A1%E3%83%A9%E3%83%AB
Wikipediaを引用すると、スプリング・エフェメラルというのは、「春先に花をつけ、夏まで葉をつけると、あとは地下で過ごす一連の草花の総称。春植物(はるしょくぶつ)ともいう。直訳すると「春のはかないもの」「春の短い命」というような意味で、「春の妖精」とも呼ばれる」とのことです。はかないもの、短い命というのがなんだかいろいろ感じさせます。
長い間を土の中で過ごし、ほんの少しの間だけ土から出てくる生き物として霧子コミュでなじみ深い(?)ものといえば、セミですよね。【我・思・君・思】「みんみん」の。以前この「みんみん」について考えたことがあって、そのときはセミは土の中で過ごす時間の方が長いのだから土から出て空を飛び回る僅かな時間の方がむしろ夢なのではないかと考えました。そして空を飛ぶということはシャニマスではアイドルをすることの隠喩であり、それゆえ霧子にとって283プロでアイドルをすること自体が夢のようなことなのではないか、それが「かなかな」のラストの示唆と繋がっているのではないか、と考えました。詳しくは次の文章を参照してください。
セミであるとはどのようなことか――幽谷霧子「みんみん」について
https://fusetter.com/tw/OBlWlxKK#all
【琴・禽・空・華】のTRUEで、霧子は自分の現在の状況をフクジュソウにたとえています。フクジュソウは春に土を持ち上げて顔を出すわけですが、きっと「重たいな…… 寒いな…… しんどいな……」と思うはずです。でもそうやって土から出てくることで、「明るいな…… あたたかいな……」と春のお日さまが照らす外の世界を知ることができる。そして「出てきて…… よかったな……」と思うことが出来る。アイドルと医学部受験の両方を頑張ることに決めた今の霧子はめちゃめちゃ大変だということがコミュで描かれていますが、この大変さは土を持ち上げて外の世界に顔を出そうとしているフクジュソウと同じなんだ、と霧子は言っているわけです。
【我・思・君・思】「みんみん」では外に出てきて空を飛び回るセミを霧子(アイドル)になぞらえて読んだのですが、ここで霧子が自らを投影しているフクジュソウは土から出てこようとしているものです。このあたりどう整理するんだろうというのはおいおい考えるとして、セミとフクジュソウがイメージとして重なるなと思ったのでした。
◇
整理できていないところでもう一つ、【琴・禽・空・華】には土と空と一瞬の生のイメージを与えるものが出てきました。墓に埋められた小鳥です。小鳥は空を飛ぶものですが、死んで土に埋められています。霧子がその墓をお参りしていているところに、プロデューサーが来て、話を聞いたプロデューサーもお参りをしようと言います。で、ここは選択肢ですが、プロデューサーが小鳥は今は空にいるのかもしれない、と言うのです。
死んで土に埋めれらて、土の中から空へと繋がって行くというイメージに、私は【君・空・我・空】の風船を思い起こしました。
「【君・空・我・空】幽谷霧子に夢中になる話」
https://togetter.com/li/1492381
このTogetterで指摘されているのは、【君・空・我・空】の1つ目のコミュは、2つ目のコミュで熱を出している霧子が見ている夢なのではないか、ということです。だからあの風船が飛んで行った空は、現実世界の空ではない、どこかの別の空です。土の中に埋葬された小鳥がいま飛んでいるかもしれない空も、この現実世界の空とは異なった、どこかの別の空です。
こうして【我・思・君・思】【君・空・我・空】から【琴・禽・空・華】を見てみると、土の中と空が円環をなすような、命というか魂というかがこの世とあの世をくるくると回るような、そんなイメージが浮かんできます。
◇
さらにもう一つ。これはフォロワーのisaさんと狐夏さんの指摘によるものですが、カードイラストと思い出演出に注目すると、霧子には鳥籠のイメージが付きまとっていることが分かります。【霧・音・燦・燦】の思い出演出が鳥籠です。【我・思・君・思】の背景の廃墟の窓は鳥籠のように見えますし、【君・空・我・空】の背景のフェンスも鳥籠に類似したものだと見ることができます。で、【琴・禽・空・華】の思い出演出では海の中のドームが描かれていますが、これも鳥籠的なものです。
さらに重要だと思われるのは、これはisaさんが指摘していたことですが、【琴・禽・空・華】のドームも壊れている(穴が開いている)ということです。【我・思・君・思】の背景の窓も割れていますし、【君・空・我・空】の背景のフェンスも破けて穴が開いています。こうした点でも【琴・禽・空・華】はこの2つのsSRを思い起こさせます。
この点については今現在アイデアは何もないのですが、このように続いていると重要なポイントであるような気がしてきます。