#ついぐな 既読者向けネタバレ後書きです。
『ついぐなの人魚は血を泳ぐ』ネタバレ全開後書きです。ちゃんと本編は読まれましたね? いいですね?
楽屋裏本番だ!
●小田島佐強
人魚と人間のハーフである那智子・直郎姉弟の間に生まれた八割人魚。那智子の遺体を食べた(+一割)十年後、「あなたのための果実(直郎の心臓で+一割)」を食べたことで、完全に人魚と化した。
伝説の翡翠姫と同じく、血液一つで他人の病や怪我を治せるし、自分も病気にかからない。何が起きるか分からないので、猫の右京以外には二度と使いたくないと思っている。他人を不老不死にしてしまったら、目も当てられないし。
※那智子の遺体を食べた父たちは基本的に一割人魚だが、オヤカタサマは一割以下の人魚率である。この人魚性は、人体の代謝とは無関係に付与される属性。
●世直郎
人魚と人間のハーフかつ、姉・那智子の遺体を食べたことで六割人魚。鴉紋と直郎を足すと合計八割で、残り二割をオヤカタサマや人魚實から集めて十割となり、みすらへの供物として足りるという計算。
養父に幼いころから教会へ連れて行かれ、クリスチャンとして倫理観を培った。そのため、知らずに近親相姦を犯したことに苦しんでいたが……。信多郎が初対面の時に「ちょっと変わっている」と言ったのは、そちら(アガペー)とつながりがあることと、人魚の血が濃いことに驚いたことから。
実は没にしたエンディング案では、彼だけ生き残って、佐強と共に八王子へ帰る想定でした。
佐強と二人きりの日常に戻るが、工房に行くと〝赤観音〟と化した鴉紋と八津次、そして自分自身と出会い、「今ここにいる私は何者なのか」と戦慄して終わるエンドA。
翠良尾瀬に行った事実もなく、今まで通り家族四人で平和に暮らしていたが、ある日工房で〝赤観音〟を発見。この現実は人魚になった佐強が作った幸せな夢で、平和に暮らす鴉紋と八津次も、〝赤観音〟になっているのもどちらも「本物」。だから気にせず、この夢を見続けよう、と佐強が手を伸ばし、彼がその手を取るか取らないかで終わるエンドB。
……という具合に。ホラーさとしてはなかなか捨てがたかったですね。
●宇生方鴉紋
正義と悪の二律背反。
性犯罪者を許せないという動機で正義感を志した彼の心には確かに「正義」があった。それは実際に任官し、現場へ出るようになってから「悪」=実際の犯罪者が可視化されることで強化される。
留置場に拘留されるる被疑者、現行犯逮捕された痴漢、パトカーを壊す非行少年、万引き常習犯のおばちゃん、取調室で怒鳴る暴力団員や、四半世紀潜伏していた極左などなど。悪の具体例を目にしていけば、自然と善や正義も曖昧な概念ではなく、確固としたイメージとして固まり、パラダイムを強化する。
「そこに悪があり、善があれば、命がけになっても助けるのが自分の仕事」という時、己を正義とでも思わなければ警察官という過酷な仕事はできない。それを踏また上、あるいは踏み台にして、彼は「悪」を選びました。
それはそうと最終段で、村人に捕まって縛り上げられながら殴る蹴るの暴行を受けるというシーンを予定していたんですが、流れ的にやる暇がなくて泣く泣くカットしました。ボコボコにされて欲しかったな~~。
●松羅八津次
ついぐながR18だったら、こいつが数々のえっちシーンを披露してくれたかもしれない。
「八津次が増える」「父三人衆最初の死者」という点は初期から決まっていた。
ただ増える原因は〝ごうやふとり〟で、殺しても殺しても八津次が出てくるという嫌な話だったのだが、色々調整してダイレクトに神の下僕にされるコースへ変更。結果、鴉紋の方にごうやふとりが行くことになった。
実は〝がんかじ〟も元々は鴉紋さんに憑ける予定だったのだが、このへんも設定を詰めていくことで直郎に変更。八津次には彼をメタれる(しかし八津次以外では倒すことが難しい)〝のとさま〟が憑くこととなりました。
それにあたって彼を掘り下げたあたりから、「こいつ思っていたより面白いな」となり、以後はどんどん、出てくるたびに株を上げる男に。
彼は善悪はわりとどうでも良くて、うわべの付き合いはできても他人に理解されない。その孤独を埋めてくれた家族が大好きで、だから手を汚すことに良心の呵責がない。他人からするとかなり最悪。
従って彼が翠良尾瀬の人々を殺害するのは遅かれ早かれ発生することで、鴉紋たちがそれを処断したのも必然。
●裏巽信多郎
本編の黒幕。徹底的に自己満足で動いていた男だが、元からそこまで自己本位だったわけではない。
愛娘・すずめの死体を発見して錯乱状態にあった時、その場が神域だったことと合わせて神の声が聞こえてしまい、ごっそりと正気を削られてしまった。「子供は死なせたくない」は彼に残された最後の正気である。
直郎とは逆に姉との近親相姦がさらっと流されているが、きょうだい姦は当人たちの間で気軽に行われるパターンも相当数あり、周囲にもそれを許容する環境があったので自然な流れとして子供まで作った。
何というか、翠良尾瀬や裏巽家に生まれていなければ、もっと平穏な人生を送っていたのかもしれない。
28歳の若さで大量の祝詞をそらんじ、様々な呪術に通じていたのでその方面にはものすごい才能と熱意がある。しかし本編では家宝の御神鏡を使い潰すなど、寿命をゴリゴリ削る真似をやっていたので、みすらがすずめを生き返らせても「小間の余命あと二年ね」とか言われていた可能性が高い。全方位詰んでいた男。
●みすら
子殺しの女神。子を自分の分身として産み落とし、それを喰らって永遠をつなぐウロボロスのような存在。かつての「尾瀬」で贄をもらったため、分身を下賜して彼らもまた自らに取りこんで愛でようとした。
廃村となった翠良尾瀬の地中にはにくべとが埋まり、野良いをがうろついている。面白半分で入ると帰ってこれない危険スポットである。
当のみすらは階梯……つまり次元が少し上の世界に引き上げているので、翠良尾瀬に残った人魚は見放してはいないが、だいぶ放置している状態。今の興味は佐強に向いている。
●あかかおん
みすらさまの新しいペット。
しつけとしてとりあえず百万べんブチ殺された。