江水の南泉がなぜあんなに井伊直弼に肩入れするのか、という話を少し考えていたんだけど、彼は鍛刀されて間もない刀で、初めて触れ合ってかわいがってくれた人間が井伊直弼だったのだろうなあと思うと……。10年以上、あの世界で……
江水作戦は作中事件から類推するに
1851年から1865~1867年程度の期間にわたる作戦だったので
短く見積もっても10年間、長ければ15年、あの世界で彼らは過ごしている。
南泉たちは鍛刀間もない新刃たちで、
長期作戦は初めてだったんじゃないかなあと思うと……。
南泉、きちんと対等に接した初めての人間だったと思うんだよ……
審神者は多くの刀たちを束ねていて、
常に作戦を取り仕切っており、そうそうゆっくり
話す機会もないと思う。
顕現したてでねぎらいの言葉と祝いの言葉をもらい、
短期出陣で褒めてもらい、あいさつを交わす。
この程度だったのではないだろうか。
それこそ、鬼滅の刃における、お館さまみたいな存在。
それが、南泉にとっての「人間」のすべてだった。
そこに、井伊直弼だった。
ひざを交え、盆栽をする横でずっとお菓子をくれ、
なにがしかと話をしてくれ、猫丸猫丸、と可愛がってくれた井伊直弼。
それが10年。
情が移らない筈がないんだよ……
井伊直弼も多分あんなにそばに長く置くのだから
どこの縁者とも知れない、どこの馬の骨とも知らない客を
長く邸内に留め置くこと、周囲に反対もされたことと思う。
それを差し置いても、あれらはよいのだ、と彼らが自由に出入りすることを許し可愛がった。
清廉で厳しく、曲がったことを許さず、いわば理想的な人間像で
南泉の情緒を育てたひと。
実は出会った時井伊直弼は36歳
(なのでおっさんと言われてちょっと心外そうだったのですね)
それから50歳くらいまでの間、南泉を可愛がっていた計算になる。
本当に、猫のように。猫かわいがりしていたのだろう。
頭が悪いわけではないが、物事を知らぬ。
難しいことを理解はしないが、柔らかい情緒は素直に感動を表す。
茶菓子が好きで、日向ぼっこが好きで、まさにあれはしゃべる猫のような存在だった。
それが、可愛くないわけがないのだ……。
私も猫飼いなので、ストレスも多い30代~50代の藩主が、
南泉にどれだけ癒されたかと思うと。
先輩の刀たち、山姥切や肥前、兼定はそれを好きにさせた。
南泉がこころから井伊直弼を慕い、人を好きになり、いずれ傷つくことをわかっていて
それもまた、彼にとって大きな財産になるという判断もあったのだろう。
あったかい日向。
あったかい寝床。
あったかい手。
美味しい茶菓子。
優しい声。
あたまがいいひと。
理想を持つ人。
ただしいひと。
南泉は井伊直弼をとてもとても慕った。
それだけだったんだろうなっておもった。
もちろん南泉だって、顕現間もないとはいえ
自分の使命は理解していたはず。
間違った歴史は、間違っている。
歴史は正しく、それを守るのが使命。
薄々はこれじゃいけないのだと分かっていたと思う。
これは、史実とは違う。
このままではいけない。
でも、小竜が言うように、「ある程度の」変化なら、歴史の流れに飲まれて正史に縒り戻されるという。
その「ある程度」がまだ南泉にはどのあたりかわからない。
だから、これくらい、これくらいは大丈夫なんじゃないか、と
焦る気持ちをごまかしながら、井伊直弼のそばにいた。
招集がかかっても、すぐにおっさんのもとに行く南泉。
後半では「おっさんが嬉しいと俺も嬉しいよ」と目を細めていた南泉。
あの時すでに南泉も、もうわかっていたのだと思う。
これはもう、駄目な歴史だ、と。
このおっさんは、居てはいけないおっさんなのだと。
それでも、まるで孫のようにかわいがってくれたひとを、死なせたくない気持ちにも嘘をつけなかった。
頼む、頼むおっさんを殺さないでくれ。
肥前にしがみついて懇願する南泉は、自分もまたこの事態を招いたのだと深く理解していた。
だいすきなひとだった。
人間とはこういうものなのかと教えてくれた人だった。
(前半南泉は、動物的に「心地よい」ことを優先していたが、
後半は「嬉しい」という感情を理解しているんですよね……)
ついつい自分の猫を重ねてしまって。
猫がそう言ってると思って見てみると、涙が滝のように流れるのだった。うう……
最後は、ちゃんとけじめをつけた。
彼はここに至って、自分の使命を、体得したのだろう。
人は愛せるものだ。
人は慕わしいものだ。
彼らを守るために自分は居るのだ。
彼らが必死に生きた、生き様を守るために、自分は生まれたのだ。
今回のメンバーはみんな南泉に甘くて、
南泉が成長することが分かっていて
南泉が悲しむことをわかっていて
見守っていたのだなあと思った。
そもそも吉田松陰と井伊直弼が出会ってしまった時点で詰んでいたので、
それを待つ余裕のある作戦だった、ということもある。
……にゃん~~~~(涙)
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◆一番最初に描いた江水フセッター
江水ね、あの流れだとね、以蔵サンが持ってたのは最後まで切っ先の折れてない肥前だったかもしれないんだ。という内容。
https://fusetter.com/tw/1qtJuLpi
◆二番目
江水感想、兼さんについて。今回の兼さん素晴らしかった。
最終的に肥前とのこともやっぱり書いてしまいました。
https://fusetter.com/tw/XdvEX5n2
◆三番目
まだまだ江水を味わい尽くしたい。……ディレイもきたし、作品中のキーワードをもとに年表を紐解きながら、肥前の江水を紐解いてみようと試みました。これで、江水肥前について書きたいこと大体書いた気がする。
江水は、いったい何年から何年までのお話だったのか、などを土佐を中心に解説します。
https://fusetter.com/tw/fMsd2G6a
◆四番目
南泉と井伊直弼について。これは短文でさらっと…
https://fusetter.com/tw/nHPiWCWv
◆五番目
江水の大包平について。こちらも短文感想。
がんばれ!がんばれ大包平!
https://fusetter.com/tw/PfTRKbqI
◆番外
https://twitter.com/urahanabi/status/1488507117820858370
絵での感謝も。
ライブ衣装も今書いていますが、発表ってどうしたらいいんだろう……
ネタバレ配慮についてちょっと聞いてこなくちゃ……。
◆こちらは二部衣装肥前の背中バーン‼の時の衣装。
プライベッターでワンクッション置けばいいよって先輩猫が教えてくれたので。
ネタバレだけど、ここ読んでる人は多分すでに配信見ている人だと思うので。
他の二部衣装も描きたい肥前…!!
https://privatter.net/i/6477648
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それぞれ内容が少し被るところもありますが、大体違うことを書いています。
あわせてどうぞ。