EUREKA 現行未通過×
かかえておちる
▼▲▼▲▼▲
____ちがうな。
確かに、そう、思った。
▼▲▼▲▼▲
ピピピピ…ピピピピ…
「ぅ、ぅうん…?………、………朝か。」
目覚まし時計をいつものように止めながら、いつもと同じ緩慢な動作でキッチンへと移動する。
今日の予定は、とカレンダーを毎度の如くチラ見して確認して、テレビのニュースを良いBGMにこなれた手つきで朝食を作っていく。
…そういえば。
なんだか今日は、変な夢を見た気がする。
暗闇の中で、1人でいる、そんな感じの。
いや、もう1人、人がいた。
えぇと。あぁ、思い出した。兄さんだ。
少し、遠くの方に兄さんがいた。
そうだ、そうだった。今度こそ、手を伸ばして、
どうなったんだっけ___
「………………あっ」
目の前には焦げた二つの目玉焼き。考え事をしていたせいか焦がしてしまった。
「ご、ごめん、兄さん。今日の朝ごはん焦がしちゃ、」
そこまで言って口をつぐむ。
日下部 優音(くさかべ ゆうと)の兄、優満(ゆうま)は、この世にいない。
何よりも、静けさを保つこの空間がそれを色濃く物語った。
あの日からすべてが変わっていた。
彼の命日にはあの砂浜を歩いた。
ちゃんと葬式をした。
歌う日が格段に増えた。
新しい初心者用のピアノが増えた。
一人暮らしの生活が始まった。
医師にも、撫でられた。
医師に診てもらった。
男についていった。
謎の、男に撫でられた。
兄に撫でられた。
兄に抱きしめられた。
兄に名前を呼ばれた。
兄を、この手で殺してしまったことを自覚した。
僕が記憶する限り、兄は、僕に常に優しく接してくれていた。
僕にとって、唯一の肉親だった。
そんな、彼は。
もういない。
あの日から、そんな空白が、僕を襲う。