#君たちはどう生きるか
ガッツリ内容に触れています まとまっていないです 善性にまみれた感想
まず、めちゃくちゃ面白かった。鑑賞前、ネタバレを踏まないようにしながらも確認できた感想がどれもどちらかというとネガティブ寄りだったので、楽しめるかな……と不安だったのだが、完全に杞憂だった。めちゃくちゃ楽しかった。そして、終盤はボロボロ泣いた。
これからたくさんの人の色々な感想や考察や批評を目にすることになると思うので、そういうもので自分の気持ちが上書きされる前に、簡単に書いておこうかな。ただ、映画後の居酒屋で配偶者と散々喋ったあとなので、彼の考えには多少影響されてしまっていると思う。
今回は幸いなことに、ほぼすべての情報をシャットアウトして観られたのだが(あのジブリの新作で!本当にすごい、幸せなことだと思う)、冒頭に戦時中の話だとわかって驚いた。そしてかなり不安になった。風立ちぬは宮崎駿作品の中ではそこまでハマれなかったので(それでも劇場で二回観たのだが)、今回も同じようなことになるのかと思ったのだ。父親と義母と主人公の少年の関係はやや歪でグロテスクであり、ちょっとこれはなかなかしんどいかもしれないぞとなった。でも、急にアオサギが喋り始めてからはワハハこりゃ良いぞとなった。
特に、夏子を追ってアオサギと共に「異世界」に行ってからは本当に最高だった。
おそらく、画面に存在するあらゆるものが何らかのメタファーであるのだろう。でもわたしは、それをほとんど理解できていないし、鑑賞中はそういうことを敢えて考えないようにしていた。多分理解しきれないから。ただ、目の前で繰り広げられる夢のような映像にうっとりし、笑い、心を踊らせていただけだ。それだけで本当に良かった、大好きだ~!となった。
一応、あれは宮崎駿の映画なのだろうとは思う。宮崎駿監督作品の、という意味ではなくて、宮崎駿のことを語った映画という意味で。誰が誰をモチーフにしているのかというのは人によって意見が割れそうだけど、私はマヒト少年が宮崎駿だと思っている。そして、あの世界の主たる大叔父も、宮崎駿かな……。あの映画で「鳥」は少年を導くもの、そして誑かすものとして描かれている。あれらは宮崎駿を唆す、愚かな群衆の象徴かな。烏合の衆という言葉もあるし。その中で、唯一少年の友たりえたアオサギは、おそらく鈴木敏夫……? 最初は敵対し、何なら殺そうとしてたけど。アオサギも甘い言葉で少年を騙そうとしていたので、まあイーブンなんでしょう。
わたしがこの映画で泣いたのは、まさにこの友のシーンです。少年が、あの世界の主となる権利を放棄し、外の世界で「友だちを作ります」と宣言するシーン。自分にとって理想的な世界を構築することではなく、戦争の気配が色濃く残る現実世界で生きることを決意するのがあまりに美しくて……自分でもビビるくらい泣いてしまった。なんで? わかんない。この映画のタイトル『君たちはどう生きるか』のアンサーだと思ったんです……宮崎駿の、「自分はこう生きたぞ」っていう。
あそこでマヒト少年が友だちとして名前を挙げるのがキリコとヒミとアオサギなわけですが、おそらくこの三人は宮崎駿にとって大きな意味を果たす人物の当て書きなのだろうなと思っている。鈴木敏夫と高畑勲と……あとわからん。わからんけど、わかんなくてもいいんです。「考察」なんてね、勝手にやってるだけなので。
そうなんです。色々ごちゃごちゃ書いたけど、こういう「考察」なんてしなくても、十分面白い映画だった。突然ですが、わたしの配偶者は「物語」を必要としない人で、当然というべきか、わたしのようにこんな色々と考えたりしていなかった。それでもめっちゃ面白かったよ、と言っていた。眼の前で起こってることだけが全てだから、それで面白かったよ、だそうです。シンプルで良すぎる。そんな彼が、今回の映画は駿の遺作だね、と言っていた。それはわたしも確かにそう感じていたところだった。
というのも今回の映画、過去作オマージュがめちゃくちゃ多い。パッと思い出せるだけでも、天から異物が齎されたのがラピュタっぽいし、森の小道を抜けると異世界に通じるのはトトロ。扉を開けると別の場所に行けるのはハウル、インコ王の胸にはハクの依代みたいな形の飾りがあったり。もはや宮崎駿の走馬灯なのかもしれない。
あの世界は大叔父(=宮崎駿)の作った世界で、そこには大切な友もいたし、理解をしないうるさいだけの烏合の衆もいた。マヒト少年(=宮崎駿)がそれを引き継ぐことを拒否したから、あの世界は崩壊した……というのは、やっぱりジブリの終焉なのかもな。寂しいけど、「遺作」と見るならこれ以上ない作品だったのかもしれない。引退しないでまた作品つくったらウケるけど。そしたらまた観に行きます。
ちょっと他のひとの感想をのぞいたら、これは宮崎駿の怒りなのだとか、スタッフに対する嫌味なのだとか、そういうことを書いている人もいた。ので、あの世界を壊すことにしたマヒト少年の選択に号泣したわたしは、かなりピュアなのかもしれない。わたしって、善性にまみれているんですよね。
そういえば、配偶者と飲んでいるとき、あの積み木13個を3日ごとに組み立てるってどういう意味なんだろう……39日で完成するって……急に具体的な数字が出てきたから意味ありそうなんだよな~と言っていたら、配偶者が「サンキュー(39)ってことじゃない?」って言っていて、まあそれでいっか!と思いました。とても楽しかったです。もう一回くらい観に行くかも!空いた頃に!