東京心覚、ストーリーの流れを理解すれば、セリフ一言一言にまで考察できるし、これを観る者の経験などによって見出すものが変わる余地のある演出もあると思う。
今作の「歴史とは」、歴史人物などについて、雑感。
前提として、歴史学は、学問として、近代科学として、「歴史学の危機」と言われたことがあった。
歴史は、歴史の勝者や書き残せた者が書いたものでしかない。歴史を学び、研究しても、過去のことが全てわかるわけではない。言語論的転回の影響も強いと思われる。それでは、歴史学とは、歴史を学ぶ意味とは、という問いが続いている。
そんな前提が、刀ミュの過去作でも表されていたと思うけど、今作は特に名言している。そこで、刀剣男士として、審神者として、歴史を守るとはどういうことかという問いに挑んでいると思う。
水心子は、歴史の中の「思い」が重要だとした。
○能面の女について
道灌パートでは、山吹の里伝説に出てくる娘。将門パートでは出てこなかったけど、将門が「惚れた女、命をかけるもの」(=桔梗の前)も意図していると思われる。
歴史に名前を残さなかった、誰か。けれども、道灌や将門に対するもののように、歴史に何らかの影響を与えることがある。大きな川の流れとしての歴史に対して、小さな川の流れのせせらぎである者。
現代においては、この作品を見る、そこで頑張っている、私達。そしてもしかしたら、後々歴史に名前を残す者や、歴史に影響を与える者がいるかもしれないけれど。
○花について
水心子が見る花びらと、終盤の歴史人物達が歌う「花の歌」では、歴史人物含めた人間を指す。
今作の歴史人物で言えば、
蓮:天海
山吹:太田道灌(八重咲きの山吹が実をなさないことから、平将門も指す?)
桔梗:平将門(太田道灌の桔梗紋も指す?)(もしかして、天海=明智光秀説の桔梗紋とかも?)
○疑問点
天海が、水心子の「なぜこの地に結界を張ろうとしたのか」の問いに答えなかったのはなぜか。
この地、江戸で、というのがネックだと思う。
例えば「なぜ安寧の地としたかったのか」のというような問いであれば、お手本的な答えは「自分が仕えた徳川家康が目指したものだから」みたいなもの。または諸説に注目すれば、明智光秀=天海説から、戦の影響で死んだ妻木煕子や細川ガラシャのことが念頭にあったかもしれない。
江戸で、というのは、もしかして、メタ的に、天海が江戸を選んだ理由が歴史に残っていないから、東京心覚の登場人物としての天海は答えられないとか。
(そもそも江戸を選んだのは、家康と秀吉の関係ではないのかな…)