FF16は「どのように生きて、どのように死ぬか」の物語だと思っている人の雑感(アルティマニアを見る前の記録)
アルティマニア発売も来週末に迫り、日々いろんな方の興味深い見識や、多種多様な視点から綴られた感想の数々に感銘を受ける中で、そもそも自分自身がどう捉えていたかの輪郭がぼんやり滲みはじめていると感じて、いい区切りだから一度書き記しておこうと思って書いている与太話です。
大して真新しいことは書いていない&どこまでいっても個人の私見なので偏りがあること、論点が反復横跳びしてて大変読みにくいことと思われますが何卒ご容赦ください🙏
一応念の為書いておきますが ネタバレへの配慮はゼロ です。
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■作品全体への雑感
クリアしてからずっと思いを巡らせているので明日になったら全然違うことを言ってる可能性もありますが、今の私の中で、FF16は「生きるのはつらい、だからこそどう生きて、どう死ぬか」というお話なのだと感じています。
キャラクターほぼ全員好きだな...と言えるFF16箱推し勢であるが故に、個々について語ると無限に長く、そして話の焦点が行方不明になりそうなのでそれぞれについて掘り下げて語るのはやめておきますが、主要人物やNPCはもちろんそれこそ名も無きモブに至るまでのそれぞれが傷を抱え、悩み、苦しみながら生きている。
こんな書き方をするとなにそれ重すぎ...って思われてしまいそうですが、それって別に何も特別なことじゃなくて、むしろすごくリアルな在りかただなあと思っていて、そこがとてつもなく刺さったんですね。
ここでおもむろにサントラの話を差し込むんですけど、私は『To Sail Forbidden Seas』がとても好きです。
この作品の持つシリアスでドラマティックな側面を大真面目に象徴しているようなロマン溢れる曲だと言って憚らないのですが、このタイトル『白鯨』の引用らしいんですね。
結構最近の映画で(『白鯨』のモデルとなった実話を描いた作品を)見た程度の知識しかないうえ、小難しい話も苦手なので引用元が云々という話は一切できないんですが、主にドミナントのような強敵と戦う場面で流れるこの曲に、危険な航海をコンセプトとしたタイトルと歌詞があてがわれているのが、一見全然関係ない気がするのになんだかものすごくしっくりきたというか.......
クライヴの身にのしかかる因果は、船乗りにとっての大嵐のようなものなんだなあと、腑に落ちた感覚がありました(なので私は『月を見ていた』のサビに歌われている"嵐"も、思い出のエピソードからの引用というより"抗い難い運命"の比喩だと捉えているんですがさすがに余談が過ぎるので話を戻します)
スタッフロール直前に「a Farewell to Fate」と示されるように、この作品にとっての"最大の敵"は特定の個人や国でなく、因果や理と呼ばれる概念のようなものなんだと思います。本人の力だけでは覆しようがないほどの圧倒的な力で押し潰そうとしてくる理不尽を前に、必死で抗う姿を描いているんだなあと。
そういう精神が大好きなので、ただただ突っ伏してしまうんですね〜。
エンディングについてはもう語り尽くされている感があるし、自分も何か言ったところで同じことの繰り返しにしかならないので触れませんが、相変わらず「あのエンディングだからこそ良かったのだ」という感想は揺らいでいません。
圧倒的な美しさに以下略です。
100人いたら100の異なる感想があって当然です。
もっと優れた脚本、もっと魅力的なキャラデザ、もっと広くて果てしないマップ、もっと楽しい操作感のゲームは探せばいくらでもあるだろうし、そんなものは人によって違うので比較するのがそもそも無意味ですが、個人的には初期と変わらず「アラはあるけど、総合力になると急に100点満点中150点で殴ってくる作品」だという評価です。
私はやっぱり、ものすごく好きだなあと改めて思っています。
このゲームをやったことで、心の深いところにじくじく痛むひっかききずがめちゃくちゃいっぱいできて治らない...っていう種類の「好き」です。
■クライヴの話
個人的にRPGの主人公は不幸な生い立ちを設定されがちだという大いなる偏見を持っているんですが、クライヴって結構特殊だなあと感じていて。
フェニックスが宿らなかったこと以外は大きな瑕疵が見当たらず、母親以外の近しい人間との関係は良好で、大公にはなり得ないものの平民というわけでもない。
つらいことだってあるけど、絶望的と言うほどにどん底ではない。
決して幸せではないけど一概に不幸とも言い難い絶妙な塩梅というか...
子どもとして扱うには大きく、でも大人とは呼べない15歳という年齢設定も絶妙ですよね。
置かれる立場も終始なんとなく特殊です。
大公家の一員でありながら家族とは離れた臣下の列に並び、臣下の中にあっては将軍にさえ敬礼を向けられる血筋で、ベアラーの印を刻まれてはいても生来のベアラーではなく、ドミナントとなるに至っても普通のドミナントですらない。
イレギュラーケースの塊みたいなところがある。
主人公であると同時にプレイヤーの耳目でもあるから、いろんな立場から物を見られる必要があったんだろうと思いますが、そのせいでどこにいてもどこにも属せない立場に置かれている印象があります。
青年期のクライヴは自己肯定感が低いとよく言われている気がしますが、個人的に自分を肯定することができないというよりも、それこそ28歳でシドに出会うまでの間、はじめは母親から、次はおそらくザンブレクの非ベアラー兵なんかの有象無象から「お前には価値がない」というレッテルを貼られ続けていたのだと感じます。
それってある意味ベアラーの置かれている状況と同じなんですよね。
そしてベアラーと決定的に違うのは(少なくとも15歳時点では)それを少しでも覆そうと足掻いていたところ。
(母親との関係は言うまでもないレベルで最悪なんですが、あの母親がいたからこそ我々の知るクライヴになったのは確実だとも思います。少年期からベアラーに優しいのは生来の性格なのだと最初は思っていたんですが、今は「軽んじられ・疎まれる辛さ」を本人が痛いほど知っていたからこそ、という部分も大きいんだろうな、と)
前述した"因果"が自らの意思では選びようのないものであるのに対して、"使命"は自ら定めるものである、という描かれかたをしていました。
15歳の少年が自分なりに居場所を作ろうと模索し、《フェニックスのナイト》という使命を得たことでやっと第一歩を踏み出した矢先、の出来事だったんだと思うんですね。
フェニックスゲートの事件が。
本当に酷い話です(褒めてます)
そして、少年期に掴みかけた《フェニックスのナイト》という使命は、本人が望んだものであると同時にジョシュアによって与えられた称号であり、大前提としてフェニックスありきのものです。
だから、ジョシュア(10)が殺されてしまった時点で、ふたたび迷子になってしまう。
このふたりの兄弟愛っていいものだよね...としみじみ感じ入る反面、良くも悪くも、彼の人生はどこまでもジョシュアとフェニックスに囚われている側面があるのだとも感じてしまいます。
(これは彼ひとりに限ったことではなく、ジョシュアだってそうだし、当代のドミナントは大抵ドミナントであることに振り回されて人生めちゃくちゃですが)
そういう経緯で生まれた、からっぽの"ワイバーン"を"クライヴ"に戻したのは偶然再会したジルの存在なのだけど、隠れ家に移動したあと彼は彼女をシドに委ねようとする。
彼の根底にあるのはどこまでいってもロザリアの騎士という生き方や価値観で、そこはこの先も最後まで一貫していて絶対に曲がらないしそれでいいんですが、この時点の彼には"それしかなかった"。
だから復讐という選択肢しか選べないし、思いつきもしない。ジルに合わせる顔もない。
そこで煙に巻いて結果的にジルを手放す選択をさせなかったのも、目覚めた彼女に会いにいくのを躊躇う背を押したのもシドで、マーサの宿で二人にした何気ない話が巡り巡って影の海岸に大きな影響を与えていたりする。
彼の齎したものは下手したら実父エルウィンよりも多いのでは?とすら思います。
前に「クライヴという炎が再び燃える為に必要だったもののうち、空気や薪はジルでありジョシュアだけど、種火はシド」だというようなふんわりニュアンスのポストをしたことがあるんですが、冗談抜きでシドの存在、本当にとても大きい。
何よりクライヴの生き方を変えたのは、シドが遺した《大罪人シド》という役割だと思うんですよね。
基本理念や活動基盤はシドから受け継いだものとはいえ、一度壊滅した組織を再建するのは並大抵のことじゃない。
生まれ持った身分やロズフィールド家の血、与えられたナイトの称号や、不可抗力で得たに過ぎないドミナントの力と違って(オスカーやガヴみたいな理解ある仲間たちの手助けはあったとはいえ)ほぼ彼自身が自力で築いた居場所だと言っていいと思う。
よく「ジョシュアはなぜ長い間クライヴを避けていたのか」って言われていますが、(ジョシュア側の事情や思惑はさておき)仮にあの時期にジョシュアと合流していたら《大罪人シド》は中途半端になってしまっていた可能性もあるんじゃないかなあと思ったりもします。
クライヴの性格的にどちらかを疎かにして蔑ろにするという意味では決してないんですが、あの空白の5年間で培われた人間関係が彼に及ぼした変化は、例えば15歳までのそれと同じくらいに大きなものだったんじゃないかと思うんですよね。
きっと目が回るほど忙しく、身体的にも精神的にも極めてしんどい日々だったことが想像できますが、フェニックスありきの、他人と深く関わらない生き方しか知らなかったクライヴが、多くの人と助け合った時間と経験が、「人は自分で居場所を作れる」という言葉の基盤を創ったんじゃないかな......と。
ところでクライヴたちの隠れ家のBGMが「Our Terms」なの、とてもいいよね...私はサントラのタイトルに夢を見過ぎ。
肝心な時に毎回なんでか顕現できない不甲斐なさ、ジルの意思に反して戦線離脱させてしまう身勝手さ、弟の死に周りが見えなくなるほど狼狽する弱さ、びっくりするくらい美形で性格だって良いのにびっくりするような暴言を吐く、品が良いのになんでか足癖が悪い。
イフリート・フェニックス・バハムートでトライディザスターしてた召喚獣合戦の最終局面といっていいあの時点に至ってもたったひとり飛べなくてフェニックスに運ばれているという描写がいっそ面白いなと毎回笑いそうになるんですが、実際あれも意味深というか敢えてああしてるんでしょうね...。
いいとこばっかりじゃないところがめちゃめちゃ人間っぽいな〜〜と感じていて、そういう完璧でないところこそが彼の良さだと思っています。
なんだろう、欠点 も 魅力になってる...とか、そういう感覚です。
FF16自体歴代一好きなナンバリングタイトルになりましたが、クライヴも歴代一好きな主人公になりました。
ジルとのあれこれは有識者のかたがたが深く語っておられる文書が無数に存在するとおもうので特に触れませんが、使命や役割がないとまともに生きていけないような男を、ただのクライヴ・ロズフィールドとして愛する人(と狼)がちゃんといるのもまた良いね...と思うところです。
■最後に
FF16には、他人のレビューやプレイ動画からでは絶対にわからない良さがあると思っています。
あの感情のジェットコースターは、何も知らない状態でしか味わえないたった一度きりのもの。
下手な説明などという野暮なものより、興味あるなら体験版をやってみてほしいものですね...
タダであの濃密なプロローグをまるごと遊べるんだぜ...太っ腹だよ(^。^)
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