『Legends of the Twins』は2005年にD&D3.5版のドラゴンランスセッティングのサプリメントとして出された本です。
それだけ聞くと、現行のD&Dは5版だし、ドラゴンランスの世界でプレイする予定もない、あるいはドラゴンランスシリーズの小説は好きだけれどD&Dプレイヤーではない、と買う意味がない本のように思えるかもしれません。
が、この本についてはゲームとそれほど関係ない部分の内容が、ファンなら興味を惹きつけてやまないものなのです。

それは「ランス世界におけるifのタイムラインがいくつも載っている」ところ。
例えば「竜槍の英雄達が失敗して暗黒の女王が世界制覇した場合の世界」など、起こりえたであろうルートの世界のタイムラインが、年表と地図つきの解説で書かれているのです。小説では個々の行動が複雑に絡み合って英雄達の勝利になりますが、失敗した世界の章を読むと、それでもターニングポイントは少なからず存在していたのだと思わされます。

他にも
「ソス卿が使命を成功させ、大変動が起きずイスタルも沈まずに信仰が花開いた場合の世界」
「大変動の後、信仰の代わりに魔法が世界に受け入れられた場合の世界」
「（『伝説』で少し登場した）レイストリンが勝利して終焉していく場合の世界」
「灰色石が破壊されず、混沌戦争が起きないため時の流れが変わらず、本来あるはずだったその後の世界」
「混沌戦争の混乱時に、暗黒の女王が世界を盗まずに神々と一緒に戦った場合にきたはずの世界」
のタイムラインが、全200ページほどのこの本の80ページ近くを割いて書かれています。

もちろん文字情報の他にもゲームデータも載っており、あるifの世界では黒ローブ化しているパー・サリアンのデータなんてのもあります。
さらに「伝説」に登場する人物データも載っており、神官王はもちろん最絶頂期のレイストリンのデータもあります。
レイストリンとフォーゴトンレルムのエルミンスターはどちらが強い？というのはDragon誌などで何度もネタにされる内容ですが、3.5版のレルムサプリにあるエルミンスターのデータと比較すべきレイストリンのデータはこの本にあります。
（『War of the Lance』のサプリにもレイストリンのデータはありますが、赤ローブ時代のものなので。）

また他のゲーム用データとして、タイムトラベルなど時間関係の新呪文、タイムトラベル絡みのマジックアイテム、クリンにおけるタイムトラベルの法則などが載っています。
そしてヒックマンが3.5時代にDungeon誌に書き下ろしたシナリオ「The Anvil of Time」も収録されています。詳細は書きませんが、このサプリに収録されているだけはあるてんこ盛りなシナリオです。

またこの本は「伝説」を扱うサプリなので、キャラモン達があの時代で訪れた場所・行程の解説や地図はもちろん、「伝説」の中で起きた各戦争の解説まで書かれており、小説を読む際の副読本としても秀逸です。

とまあ勢いで書いてしまいましたが、この本はお薦めですという話でした。

https://www.drivethrurpg.com/product/3252/Legends-of-the-Twins-35