twst踊みた炎上の何がまずいのか、今後起こりうる事態の想定はどんなものなのか。長々と書いたから、自己責任とか対岸の火事と思ってるなら一読してね。これでわかんなかったら…君もいっぺん狩られてみればわかると思うよ。
今回の一件についてはtwstという作品のせいでは絶対にないと思います。
今年の、今までと違う世の中の状況に対してあまりにも無知で鈍感な方々が引き起こした炎上でしょう。
そして、トレパクやメンバー間トラブルなど、普通の不謹慎炎上案件とは明らかに性質が違います。
まず、今の世の中の流れについて。
知事が発言しただけで買い占めが起きたり、「コロナ八分」という心理が働いたり、自粛警察が誕生したり。コロナという単語は、民衆の過剰なパニックを引き起こすキーワードになっている、ということはご存じの通りです。
そのため、各業界では業界団体や組合内でガイドラインを作成し「この通りに自主的に感染防止対策をして営業しますよ」ということで決めごとを作ってそれを守ることで、自分たちの身を守っているとも言えます。それを守らなければ、その業界全体が白い目で見られることなんか明白だからです。だから、守っていないところには団体からの注意が入ったりする。こういう自浄作用も働きます。
ところで皆様。
「旧車会」と聞いてどういうイメージを持ちますか?
一瞬聞いただけだと、クラシックカーを愛好し、交通法規を守って楽しむ集団というイメージは出てこないと思われます。いい歳した大人が違法改造バイクで珍走まがいの集団暴走をするなんかおっかない連中、っていうイメージが先行しているはず。
それは、「旧車會」という、同じ響きの集団がメディアに登場するような事件を起こし、悪目立ちをしているからです。
世間の人は、実態がよくわからない集団を判断するとき、悪目立ちしている一部の情報を全てだと思って判断します。
槍玉に挙げられたパチンコ店も、実際は、報道されているごく一部の店を除いては真面目に休業したり、お客さん同士が密にならないような対策を行っていました。
歌舞伎町のホストクラブも、全部が全部感染防止対策を無視した営業をしている訳ではない。恐らく、真面目に対策しつつ頑張っている店舗も相当ある筈です。
では、「コスプレイヤー」ってどうなんでしょう?
コスプレを日本の文化として発信し続けてきた先人たちのおかげで、昔に比べるとはるかに市民権を得ましたが、それでも、世間一般の人から見れば「変な格好で練り歩いて楽しむ、実態の解らない奇妙な集団」であることには変わりありません。
下手をすると「露出度の高いエッチな格好をする人たち」というイメージすら持たれています。
実態がどうであるかは関係ない。それが世間の認識です。
「実態の解らない奇妙な集団」が世間に受け入れられるには、「実態は解らないが、自分たちでルールを守って楽しそうにやっているし、悪いことはしていなさそうだ」と判断されなければなりません。
今回のことが広く知られてしまえば、コスプレは「実態の解らない変な奴らだし、見た目通りやっぱりルールを守らない」という印象で世間に刷り込みが掛かってしまう可能性さえある。
マスコミ、特にワイドショー系は、常に世論を煽るセンセーショナルな報道を行います。そうやって民衆の怒りを掻き立てれば数字が取れるからです。
パチンコも、ホストも、風俗も、一部だけが取り上げられた結果、内情を知らない人々に「ルールを守らない、悪い業種」としてのイメージが刷り込まれました。実際には、感染防止対策をしっかりやっている店が多いにもかかわらず、です。
民衆が不安や怒りのはけ口を求め、正々堂々と叩ける何かを探している異常な状態。
そんな状況の時に、わざわざ自らターゲットになりに行く行為は愚の骨頂としか思えません。普通の感性で社会を見詰めていれば誰だって解ることです。
既に、ユーチューバーがネタとして取り上げるなど、話はコスプレ・ゲームの領域を超えて拡散しつつあります。
出演者に芸能人(しかも、ワイドショーを見る年代の人が知っている人)やモデルや声優がいることで、一般のゴシップ紙の目にも付きやすくなっている。しかも、誰もが食いつくネタ「コロナ拡散」というキーワードをわざわざ背負って…。
このまま話が拡散し続けたら、最悪どういう報道がなされるでしょうか。
「NHKにも出ている有名芸能人、コロナ禍のさなかに集団コスプレ撮影」
「プロのコスプレイヤーの集団、密で撮影会を実施、配信して炎上」
「メンバーにはモデルや、あの陽性になった有名声優所属事務所の新人声優も?」
一見して、世間の注目を集めるショッキングなタイトルであることは言うまでもありません。
ワイドショーに、躍ってみたの動画やメイキング動画が、顔モザイクで何度も流れるでしょう。
そして話はネタとなったゲームに、踊ってみたの配信者に、コスプレイヤー全般にまで拡大していく。
…果たして、この世の中で、これらのことが本当に起こらないと言い切れる自信はあるでしょうか。
さて、皆さんが公営施設の管理をしている仕事だったとして、「旧車会ですがイベントの為に駐車場を貸してください」といわれて素直に貸しますか?
厄介事を起こされたくないし、何かあって市民から苦情が殺到したら困ると考えたら貸しませんよね。
コスプレイヤーに悪いイメージがついてしまったら、最悪、大型イベントを開催するどこの会場からもお断りされてしまいます。池袋、川崎、City系の同人イベント全部施設側がNGを出したら開催自体が不能です。
有名コスプレイヤーは、そうであるというだけで業界全体の鏡のように取られてしまいます。有名人がこうなんだから下はもっとひどい筈だ、と思われても当然です。
そんな状況で街イベを開催したらどうなるか…。
・迷惑動画配信者が「感染拡大コスプレ成敗じゃオラ!」と絡み始める
・白い目で見られた挙句、暴言を浴びせられる
・正義の名の許で殴る蹴るの暴行
これらが、一般の善良なコスプレイヤーに対して行われる可能性を考えられなかったんですね。
そもそも、バスの動画を何のためらいもなく発信してしまっている時点で、企画者・参加者の意識の低さが伺えます。「これくらいなら大丈夫だろう」「アンチが騒いで炎上したってすぐ揉み消せるだろう」という安易な考えがなければ、あんな動画を配信したりツイートすることなんかできるはずがありません。
事務所所属のコスプレイヤーの意識が、歌舞伎町の下手なホストクラブの考え方そのもの、あるいはそれ以下なんです。
そんな看板を背負ってこんなことをしたがために、現時点で迷惑の掛かっている団体や施設が多数あるでしょう。
①ゲーム公式(複数社)
問い合わせに全部返信する担当者だけでも大変ですが、こういう不祥事が起きた時、会社の中で対応策を練るのってすっごく時間掛かるし、多数を巻き込んでめちゃくちゃ会議とかやります。
②所属事務所
③出演番組
上記と同じく、まともな事務所であれば向かい合って対応する人がいます。全く余計な仕事です。
④バス運行会社
動画に車体が写されているので、ずさんな運行状況なのが露呈してしまいました。
⑤撮影施設
⑥ゲームのユーザー
⑦一般コスプレイヤー
⑧メンバーの勤務先
他にも、参加者が関わっているコスプレイベントの主催や市区町村にまで苦情の突撃が入ることが、現時点では予想されますし、既に実行されているかもしれません。
何度も申し上げますが、今の世の中の状況は尋常ではありません。
対岸の火事がいつ大延焼するかわからないのが、「コロナ」というキーワードと共存する世界です。
自分がターゲットにされるのを防ぐために、過剰な自粛を実施するオタイベントが出てきても何らおかしくない。
そういう可能性があるにもかかわらず、現状の参加者や企画者、そしてそれを応援する人々の考えはあまりに温いと私は思います。
むしろ自浄して欲しい。この方々より有名なコスプレイヤーさんや有識者たちがこぞって今回の企画は「問題であり、コスプレイヤーの総意ではない」と発信することで、業界内(?)できちんと正し合って欲しいです。世間に、コスプレ界はちゃんと自浄作用があると思わせるために。
ただ、単に「公式を降りろ」「二度とコスプレすんな」っていうのは違うと思います。
やらかしてしまったものは仕方がない、であれば、それをどうリカバリーするかが今後するべきことでしょう。
謝罪し、意識を入れ替え、二度とこういうことは起こさないという確証が取れる行動ならば。
動画は、どうしても残すなら謝罪文と、決して真似をしてはいけないという注意書きを組み込むくらいはしてもいいのかなと思います。
それが、良識ある大人の当然の対応ではないでしょうか。
【追記】
どんな業界であってもそうですが、まず、規律を守っているかを見られるのは最大手です。普通に考えて、業界大手が無対策なのに業界全体がちゃんとしてるって思われる筈がありません。
そういう意味でも、大手を名乗るなら率先して自分らの行動は戒めるべきなんですけどね…。それが、有名になることで発生する責任だと私は思います。
【追記2】
今ふと気づいたんだけど、バスの中で誰もシートベルトしてないね…?寝てる人がしてない(尻の下に敷いてるのが写ってる)ってことは撮影の時だけ外したっていうことでもないんでしょう。道路交通法という観点でも多少燃えるかもしれないのに、まるで刺されるとは思っていないその危機管理意識が今回の騒動に繋がったのは想像できます。ただ、有名人ならそれじゃいけないのは間違いないですけど。
【追記3】
炎上するメリットとリスクについて。
5月くらいのことを思い返して欲しいのですが、代表的なところだとへずまりゅう氏が「自粛の最中に営業しているパチンコ店に抗議の突撃」という動画を配信していたこと。
店ばかりか開店待ちのお客さんにすら「パチンカス!」「帰れコラ!」と暴言を浴びせ、警察が来ても暴れていた。
この動画を見て、「よくないけど胸がスカッとした」「これはやられても致し方なし」と判断した人たちがそこそこいて、少なからず支持されていたことを考えると、たとえば「イベントでコロナレイヤーに突撃」「カフェに成敗のメントスコーラ」などを思いつく収益目的の『正義の』過激配信者が現れることも想定の範囲内だと思います。ましてカフェ店員やモデルやレイヤーは顔を出す仕事なので、接触も容易いでしょう。これ以外にも、あの手この手で「自粛しない・絶対悪」を懲らしめようと考える輩の格好の餌です。
特にコロナに関しては、ルールを守らない絶対悪は叩いても許される、という過激な風潮がある中で、炎上するメリットの方が大きいということは、個人的にはないと思います…。
企業も、コンプライアンス上、センシティブな時期に問題を起こしかねない人(リスク)と積極的に契約するとは思えません。
最後に。
魔女狩りは本当に怖いぞ。断罪することで人を傷つけてもいいという免罪符を得たつもりになった人は、平気で街宣行為でも脅迫でも動画撮影でも、それが正しいと思ってやるぞ。
以上が、魔女狩りに遭ってその怖さを知る者の目から見た感想です。