『シャザム』のヒーローとヴィランの対比について。
シヴァナとビリーそれぞれの家族との思い出シーンに登場する、占いボール(マジック8ボール)と方位磁石キーホルダー。
シヴァナの持っていた占いボールも、ビリーが母親からもらった方位磁石キーホルダーも、持ち主に進むべき道を示す道具ではあるが、子供向けの安物のオモチャであり、実用性はほとんどない。そのはずなのに、この2つのガラクタがシヴァナとビリーの進む道の明暗をこれ以上ないぐらいハッキリと指し示す演出が最高だった。
ヴィランたるシヴァナは、この占いボールを、自分を愛さなかった家族に対して積年の恨みとともに手渡し、その命を奪う(かつて兄にやられたイジワルをし返して殺す)。
一方ビリーは、実の母親が自分を裏切ったことを知った直後に、母親を許し、それどころか彼女が幸せになれるように祈りを込めて方位磁石キーホルダーを手渡し、静かにその場を去る。
同じように家族から見捨てられた存在でありながら、憎しみの連鎖に陥ってしまったシヴァナと正反対の行動をビリーが取った瞬間、超能力を自分勝手に使いまくるだけの未熟なこの少年が、ヒーローたる資格を確かに持った人間であることが観客に示される。
そんでそこから間髪入れずに入る最高にカッコいい変身シーン、非力な兄弟たちがビリーを助けに駆けつける王道展開、シヴァナの能力が一人で独占するほど強くなる性質なのに対してシャザムの能力は心を開いて背中を預けられる仲間が多いほど有利になるという対比が判明してからの、兄弟6人がシャザム化するシャザ松さん展開に至って、最高すぎて「俺は今なにか幸せな夢を見ているのではないか…?」と不安になりましたが、劇場の明かりが付いてから確認したらどうやら周りの人も全員同じ夢を見ていたようで安心しました。