燃ゆる女の肖像をみてしわしわになりながら落ち込んでいるりこるが追記にいる
空間と環境音がすごくきれいな作品だった。
最初画材にアタリを描く時の音をスピーカーから聴いて音が良いからヘッドフォンで見ようって思って鑑賞してたんだけど、正解だった。BGMがほとんどなくて環境音や物音、人の声や息遣い、そういったものをリアルに感じ取れる。何だろう、飾り気がないからこそ際立つっていうか、良い素材に塩コショウのみで味付けしたっていうか。必要最小限のものでストーリーを彩っているのが個人的にはすごく好きだし落ち着いた。
あと空間の撮り方が上手い、とかちょっとかっこつけて言ってみたりするけど、映し方が上手いな~……ってずっと思ってた。
どこを切り取っても絵画になりそう。目まぐるしく場面が変わるんじゃなくてゆったり流れてる感じ。私はソフィを最初見たとき「絵画から出て来たみたい」ってずっと思ってた。ソフィが映るシーンはずっと目が離せなかったね。
色々好きなシーンはあるんだけど、個人的に印象深い、というか映画に引きずりこまれたのは館についたマリアンヌが服を乾かしてる時に全裸の状態でキセルふかしてたとこかな。綺麗…っていうのも何か違う。だけどここで確かにどっぷり浸かった気がする。
ストーリーについては、この感情なんて言ったらいい?やるせないって一言で表せる?ってくらいむちゃくちゃ複雑な感情がぐるぐるしてるんだけど、ただ生きてるだけでなんでこんな思いしなくちゃいけないんだっていまぬいぐるみを抱きしめながらわたしは伏せたを書いてるよ。
火とか水とかに生命を感じることはよくあるんだけど、生理の描写から堕胎の描写まであるんだって、びっくりしたあともうどうしようもなかった。私がこの映画で泣いたのはソフィ周りと最後のオーケストラのシーン。
女だから。運命だから。そんな言葉で片づけられんの悔しくて仕方ないって思うのと同時に、それを粛々と受け入れ生きていく人も居るんだろうな。もしかしたら奥様もそうだったのかもしれないし。
誰が強いとか弱いとかの物差しで語れない。私はソフィが母になることに抗う姿を見てて、ただただ世界が気持ち悪いなって思ってしまった。ソフィ何歳よ。まともな医療技術ない中で出来る堕胎方法なんて限られてて、あれ直接映されてないから想像でしかないけどおそらく半首吊り状態というか、頸動脈か何かを締めて窒息寸前の行為を何度も試みてたよね。足だけのカットが逆に怖いし、それを当然のように見ている(というかよくあることだと受け入れている?と私は感じた)マリアンヌとエロイーズの二人にも凄く泣いた。こんなのが普通であってたまるかよ。
堕胎のシーンも、ここで赤ちゃんをうつしてくるんだって、誇張抜きに夕飯吐きそうになった。隣で無邪気に頬に触れて来る赤ちゃんを見て「やっぱりやめて」と言わず、涙を流すソフィを見て、しんどいとかなんかもうそういう言葉で言い表せないくらいやばくて、でもエロイーズが目を逸らすなって言ってそのシーンをマリアンヌに描かせたのは、良いなって思うのも間違いかもしれないけれど、私はすごく肯定的な感情で受け止めた。
絵っていうのは残せるからね。ソフィの選択を。覚悟を。その場にいたマリアンヌが抱いた感情を。だから、とても大事なシーンだなって、思った。
エロイーズとマリアンヌ……………。もう何て言ったらいいかわっかんないよ…………。
すんげえ丁寧に感情の動きが描写されていた分、絵が完成したら終わりなんだよな……って思って……あの、これは辛いと言っていいんですか?
この映画、全体を通して「辛い」とか「苦しい」とか言っていいのか分かんなくなる。そういった感情を抱いた方たちを非難する意図は全くなくて、あくまで私個人の感想として、この複雑な感情がその一言で表せるかと言ったらNOだし、あの時代の女性たちが抱いた苦悩(私の考えとしては男性にも男性なりの苦悩があったのだろうなと考えはするのだけれど映画の本質から外れるから今回は置いておく)をたった一言で語っていいのか……みたいな……気持ちがある…。生と死が明確に描写されるものを見る度に自分のいま抱いている感情って合っているんだろうかって自問自答しちゃうんだけど、そんな感じ。納得できる正解も言葉もない。だから最終的にいま残っている感情が「世界気持ち悪い」。強い弱い、誰が良くて誰が悪い、わからん。わからんけども、やっぱり私は反発する生き物だから泣きながら「気持ち悪い」って威嚇しちゃう。
冥界のおはなし、元ネタ分からないんだけど「思い出のために振り返った」「愛ゆえの衝動」これが別れのシーンに効いてくるの胃が痛かった。正直この時代のことなんも分からないんだけど、エロイーズが着てたの花嫁衣裳であってる?
振り返ってよ。
この「よ」が、すごく、すごくね。
映画みてるとき多分このお衣装が何回か出てきたじゃんか。2回くらい出てたかな。最初「ホラー映画ですか!??!?!!??!?亡くなったお姉さん!?!??!?!」って怯え散らかしてたんだけど、マリアンヌの脳裏にはずっとこの瞬間がちらついてたのかなって伏せた書きながらいま思った。
悔やむより思い出してってマリアンヌは言ったけれど、最後扉を閉めるシーンで「ほんまかぁ…?」ってきりきりする胃を抱えながら思ってた。
お互い別れたあとも思い出してたんだろうなあって思うよ。絵画に描かれた「28」にも、それを見て微笑むマリアンヌにも。別れの瞬間を描いた作品を出したところで、彼女の絵と再会したときむちゃくちゃ「うわあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」ってなった。
だけどそっからラストのシーンでの「私を見なかった」のあと、エロイーズを映しバックにオーケストラが流れる。音は言葉じゃ語れないって言ったあとにラストでこういうことしてくるんだ……ってボッロボロにないた。
絶対どっかで聴いたことある~~~~~~~~~って暴れてるんだけど全く思い出せねえあの曲。マリアンヌが部屋で弾いてみせた曲だよね。
エロイーズがさ、オーケストラを聴いて涙を流しながらも笑ったのをみてマリアンヌを想ってのものだって確信したんだよ。でもマリアンヌは……。
「私を見なかった」って言葉のあとにむっっっっっっっっっちゃくちゃ暗い音奏でられるの胃がキリキリするからマジでやめてもらっていい?この映画がなんの意味もなく音楽使うはずがないって暴れてるんだよわたしは。
確かにあったことなのに。想いあった二人なのに。なんかこう、ほんとうに「思い出」になってしまった感じがして、なんだろう、複雑。とっても。音の印象が根強くてこの映画は「ハッピーエンドだ」って言いきれない。ならバッドエンド?と聞かれても首を振る。
ただただシンプルに「END」だけでいいな、って感じ。
ハッピーなのかバッドなのか、さっき書いた「辛い」「苦しい」の話じゃないけど、それだけじゃ語れない気がするしあんまり決めたくないのかも。
でも涙は出る。泣いてる。なんで泣いてるの?って聞かれたら、分かんない、って答える。
いまの感情をどうにかして言い表すなら、こんな感じだな。