SSS.S 現行・未通過× 自陣へ:もう伏せることは何もない
7日目、HO3視点🐶
「デルタグリーン」=「おティンティングの衆」の恒等式で小一時間笑っていられる。
〇FBI本部
あちこちで多発する暴動や事件。それの対応に追われる自分たち。相変わらず息もつけないような忙しさだ。
そんな中、銃声。
FBI本部に乗り込み銃を乱射してきた男がいた。その場でその男は抑えられたようだが………。
こんなことになるなんて。いったい何がどうなってるんだ。
こんな国に来るんじゃなかった。このままここはどうなる。どうせ自分は死ぬんだ。
チャンが取り乱しやり場のない憤りを零す。
それを聞いたメリッサが立ち上がり、チャンまで歩み寄る。そしてそのまま彼の横っ面を殴りつけた。
突然の行動に皆唖然としていた。メリッサの気がおかしくなったのかと思ったが彼女は極めて冷静だった。
あなたは死なない。私たちが全力で市民を守るために頑張っている。死なせはしない。なんとかする。
強い意志を感じる言い方だった。
今のこの状況でチャンのような不安を感じるのは不思議なこととは思わない。
だが逆にメリッサのそんな強い言葉、姿勢、しぐさが逆に危ういもののように感じられた。
彼女も不安を感じていないわけじゃない。
それを覆い隠す強い言葉で強く見せている。そういう風に思われて仕方がなかった。
カイさんやルーシーに諭され、「やればいいんだろ!」と半ば自棄になって仕事に戻っていくチャン。
よかった。ここで離脱されたら、ただでさえ人手不足の今の状況がマジでやばくなるところだった。
騒ぎがいったんは落ち着き、全員がそれぞれの持ち場に戻る。するとガチャリ、と扉があいた。
こどもが立っていた。
不審に思ったメリッサが扉まで歩いていく。するとこどもは手に持った何かを部屋の中に投げ入れた。
それが火炎瓶だということがわかったのは一瞬後だ。
気が付けば爆炎を浴び、その場にいた全員が大けがを負った。自分はまだ軽い方だ。
だが酷かったのは火炎瓶をもろにその身に受けたメリッサだ。
彼女の半身は爆発と炎で焼けただれ、目にはガラスの破片が突き刺さっていた。
チャンが懸命に応急処置に入る。このまま適切な医療機関に行かなければ助からないことは明白だった。
彼女を連れ全員で本部の外に出た。
そこも無残なありさまだった。救護室に向かうにも逃げ惑う人々で通路はあふれかえりろくに進めない。
そうしているとひとりのこどもがふらふらとこちらに歩いてきた。その体に鮮血を浴び真っ赤だ。
付着している血の量からおそらく人を殺してきたのだと思われた。それも何人も。
彼はこちらを見るや、手にナイフをかまえ襲い掛かってきた。
チャンにメリッサを頼み、なんとか彼を無力化。
ここでは埒が明かないとメリッサとチャンを連れて外に出た。
こんなときにイーサンさんは一体何をしてるんだ.....!?レオさんもだ!!
〇外
メリッサの状況は一刻を争う。はやく病院に行かなければ。
全員で先を急ぐ時、何かが爆音とともに近くの壁まで吹き飛ばされてきた。
見ればそれは人間だった。しかも顔に見覚えがある。
前に自らをおティ…「デルタグリーン」と名乗った眼帯の男だ。近くにはルーカスもいた。
傷だらけの彼はこちらの状況を確認すると、協力を申し出てきた。
こちらには今余裕がない。エリックの件はそちらに任せたい。
そうすればできる限りのサポートはしよう。そこの傷だらけのお嬢さんも病院に連れて行ってあげる。
全員が了承すれば、彼はうなずき、地面に魔法陣を描いた。
「門を開いた。これでニューヨークにいけるよ。いま奴はニューヨークにいる。後は頼んだよ。」
彼はあの青い獣の姿になりどこかへと去っていった。
自分、カイさん、ルーシーにルーカスを加えた一行は、眼帯男の描いた魔法陣に一歩足を踏み入れた。
〇ニューヨーク
気が付けば全く別の場所に立っていた。
ルーカスは詳しくは原理を教えられないという。なんだかわからないがこれ、すげえ技術だ。
だがこんな技術を持つ「デルタグリーン」でさえも「余裕がない」ほど、
今の状況は切羽詰まってるということか。
ニューヨークもあちこちで火の手が上がり、かつての面影は失われていた。
近くにあったバンに全員乗り込み、走らせる。運転はルーカスだ。
ここであらためて傷の手当、武器の調達ができた。
だが突然地響きが鳴り、このままではまずいと全員一度車の外に出ることに。
出たところで地面が黄金に光る。
突然のことに動揺し、状況もつかめないまま、突然意識が刈り取られた。
〇夢
ふと、独特のいい匂いが漂ってきた。ろうそくの香りだ。
目を開ければ目の前には何本もろうそくが並んだケーキがあった。
乗せられているプレートには「Happy Birthday」と書かれている。
そして、それを囲むように。こちらに慈しむような視線を向ける人が、ふたり。座っている。
パパとママだ。
記憶にある中でふたりにこのような視線を向けられたことなど一度もない。
ましてや、一緒に食事をしたことなど…
いや、一度だけ、楽しかった思い出があった。
小さいころに連れて行ってもらった遊園地で犬のぬいぐるみを買ってもらった。
それを後生大事に持ってきた。それもいま、自分の手の中にある。
ぬいぐるみを抱き寄せ、目の前の光景に呆然とする。
自分の体は7歳ほどになっていた。だが今までの記憶はしっかりと残っている。
おかしい、自分たちは世界を救うために移動していたはず。これは一体どういうことだ────────────
「どうしたのジェームズ。」
「ぼうっとして、夢でも見ていたのかい。どんな夢だったんだい?」
パパとママに優しく話しかけられる。
ぬいぐるみを抱いていない空いている方の手で自分の頬をつねった。痛い。
夢では、ない。
今まで見てきた夢のことを話した。
FBIに入ったこと。ルーシー、カイさん、レオさん。そしてハリーさん。
そのほかにもたくさんの人と出会い、一緒に仕事をしたこと。事件を解決してきたこと。
世界の危機が迫っていて、それをなんとかするために奮闘していたこと。
楽しかった。大変なこともあったけど、楽しかったんだ。
すべてを聞いた二人は優しく微笑んで、「ずいぶん壮大な夢だね」と言った。
「またあの人たちに会いたいな」とこぼすと、
ママが「大きくなったら、またどこかで会えるかもしれないわよ」と返してくれた。
「しかし、FBIか。立派だな。」パパが目を細める。
「いつの間にかこんなに大きくなって。少し前までこんなに小さかったのに。」
「改めて。」
「ジェームズ。お誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとう。」
自分がずっとずっと欲しかったもの。
ふたりからのやさしさ。いつくしみ。あいじょう。いばしょ。
ただただ愛されたかった。こっちをみてほしかった。このふたりに。ずっと。
気が付けば涙がこぼれていた。
肩に誰かの手が触れる。
振り返るとハリーさんが微笑んで立っていた。
生前のように、何も変わらない姿で。「ジェームズ。」と、懐かしい声で名前を呼んだ。
会いたかった。
会いたかった、会いたかった、会いたかった。
想いがあふれてハリーさんに抱きついた。
こちらも何度も名前を呼んだ。会いたかった、と繰り返した。ハリーさんは優しく受け止めてくれた。
ハリーさんは言う。
「このままここに居れば、君は欲しいものを得られる。幸せな夢を見たままでいられる。
君は、ここに留まるかい?」
ここに居られればどれだけ幸せだろう。
この世界には全部がある。パパとママはぼくを愛してくれている。
そうすれば二人の気を引こうといたずらに手を染めることもなかったし、
あの悲惨なテロも起こらなかった。
他のみんなもそれぞれ元気にやっていて、それぞれ幸せに暮らしているはずだ。
ハリーさんがあんな形で死ぬこともない。
でも違う。結局現実は「そうならなかった」のだ。
それから逃げるのは違う。それは、「ハリーさんに胸を張れる人間がやる行動」じゃない。
顔を上げて、笑ってハリーさんに告げた。
「戻らなきゃ。ぼくにはまだやることがあるから。」
どこからかルーシー、カイさん、それに少女の声が聞こえた。
〇現実
目を開ける。
そこには悲惨な状況をさらしているニューヨーク市街と、
自分を心配そうに見るルーシー、カイさん、そして小さな女の子の姿があった。
安堵する二人をよそに女の子を凝視する。どこかで見たような…?
カイさんに言われてやっと確信に至った。ハリーさんの家族写真に写っていた子だ。
「え!?生きて…無事だったの!??」という疑問を投げかけると「彼女は幽霊だ」という説明をされた。
?
??!?!?!?????!?!?
今まで見えていなかったが彼女はずっと自分たちのそばにいたらしい。名はテレサ。
知らなかった………。というか、え、なんで今見えるようになったんだ?
それになんで彼女は自分たちと行動を共にしていた…?
クエスチョンマークだらけの自分のもとにテレサは歩み寄ってきた。思わずキョドる。
「パパの近くに居てくれてありがとう。」
お礼の言葉だった。全く予想外の言葉だったので面食らった。
むしろ礼を言いたいのはこちらのほうだ。助けてもらったのはこっちの方なんだから。
「お礼なんていらないよ。ハリーさんにはこっちが好きでついてってたんだ。」
うまく言葉が出なくてつっけんどんな言い方になってしまった。
でもこちらの気持ちは伝わったらしい。彼女は微笑んだ。
するとルーシーが口を開く。
「あっちにはレオさんが倒れてるみたいです!」
なんて!?!?!?????????!?!??!
〇レオさんと合流
必死の呼びかけに答えてか、レオさんが目を覚ました。
彼と状況を確認しあう(テレサのことはずいぶんすんなり受け入れていた)。
エリックに呼ばれニューヨークまで行動を共にしていたこと。
エリックは衛星を使ってミサイルを撃つつもりでいるということ。
彼は神の召還を阻もうとしているということ。
締めくくりに先に行く、と書かれた紙をこちらに見せてきた。
エリックに脅されていたのではという予想は、まあ近からず遠からずといったとこだったようだ。
久々にこの四人が揃った。ずいぶん懐かしい思いがした。おかえりレオさん。
〇テレサ
全員が情報を共有しおわると、テレサが一点を指さした。
見れば、そこには黄金色に光る自由の女神像がある。
「あそこで誰かが神様を呼んでいる。
あの神様にとらわれた人はみんな幸せな夢を見て、帰ってこれなくなってしまう。」と彼女は言う。
そしてなにかを口ずさんだ。
「今日は10/31。死者と生者の境が最も曖昧になる日。だから私の姿がみんなに見えている。
あの神様に会ってしまえば普通の人はただでは済まない。でも、きっとこれで大丈夫。」
歌い終わりこちらを見る。すると足が透け始めていた。
立つこともままならなくなり、彼女はよろめく。
「今までカイにとりつく形でそばにいたけど、もうそれはできない。」
カイさんが彼女に寄り添って言葉をかける。
「20年。長い付き合いだったけど、いつのまにこんなに立派な女性なってたんだな。
ありがとう、テレサ。」
「わたし、あなたの相棒にふさわしい、いいレディになったでしょ?
わたしほどの相棒を見つけるのは大変かもしれないけど、頑張って探してね。
どうか悔いのない選択を。
あなたのこれからに、幸運と、祝福を。」
「去りゆく君の行き先を照らす灯にも、祝福がありますように。」
テレサが消えていく。
カイさんは彼女の手を握っていた手をもう一度強く握った。
「行こう。これからが正念場だ。」
我々はFBIだ。
司法省に属するアメリカ合衆国の警察機関の一つ。
国内の治安維持を一手に担い、テロ・スパイ、政府の汚職、
複数の州に渡る広域事件、強盗事件などの捜査を担当する。
人々の秩序と安寧を守らなくてはならない。
次回、自由の女神像へ向かう。
〇あと5年
何度も聞き返してしまった。信じられなくて、信じたくなくて。
ルーシーがもう死んでいる、っていう事実も受け入れたくなくて…
たぶんそれがショックだったから呪文も耳に入らなかったんだろうな。
ルーシーからしたらすでに死んでるのに25年も生きること自体が奇跡なんでしょうけど、
こっちからしたらふつうに仲間を一人失う話なんですから聞き捨てならねえべよ、
やだよやだやだやだやだやだやだやだ!!!!!!!!!!
バンクさんと「みんなでいける継続シナリオありませんかね~」って話してたのに
これってひどいよ!!!!!!!!!!!!!!111
助ける方法ない?ハスターさんとの交渉次第でなんとかならない…?
いやでもサシキさんのシナリオだからなないかもなーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!
う、やだ、ギャン泣きします。駄々をこねます。見苦しくてもかまわねえやい!!!!!!!!!!
〇女神像の上にいるのは?
ハスターを呼んでるわけなのでジェラフマン側ということになるのでしょうが、
すでに出てるNPCでって考えると、依然居場所がわからないイーサンさんか……?
イーサンさんマジでどこにいるんだよ。次電話してみる…?
次回は八月。まるまるひと月開きます。
今までのセッションの思い出を胸に抱えて待ちます。この陣のためだったらいくらでも待てる。
次回も頑張ります。