倫理観ってそれぞれの立場によって違う。だから人の数だけ異なる倫理観がある。つまり、正解のない問題です。
この前提で、複数人に倫理観を問うているシナリオで、合意形成を行い、ひとつの答えに辿り着くことを強制されることに違和感を覚えています。

ちなみに単なる議論であれば好きです。それぞれの立場があり、それを意見を通して理解する。勝敗のあるディベートも好きです。聴衆に受け入れられやすい言葉を選んで説明しようとする試みが好きです。ただ、たとえ勝敗のない議論であっても、決着がつかない=つける必要がないと分かっていれば、互いの意志表示を行うという目的で議論を楽しむことができます。

ただし倫理観を問うシナリオにおいて、全員でひとつの答えを求めることはあまりにも困難ではないかと思います。互いに納得できるまでにはとんでもなく長い時間を要すると思っています。
その最たる理由として挙げられるのが、「自分の倫理観(そしてそれに伴う意見)を曲げられないから」です。

私の議論をする際のスタンスとして、「相手も正しく自分も正しい」というものがあります。それまでの人生経験によって違う倫理観が培われてきているのだから、立場によって考えが異なるのは当たり前。倫理観に間違いなんてないと思います。だからこそ、議論したら対立は必然ですし、その上で合意形成を行うとなれば、必ず異なる考えの他者を否定しなければならないし、異なる考えの他者から否定されなければならない。「相手も正しく自分も正しい」立場の私からすると、誰の否定もしたくないし、誰からも否定されたくないのです。つまり譲歩の余地がない問題です。

「倫理観を問うシナリオ」自体は好きです。ソロであれば自由に自分や自分の作成したキャラクターの倫理観に従って選択して良いし、ただ問われるだけで、答えを用意する必要がないものなら、自己開示や他者理解に繋がって楽しい仕掛けだと思います。そこで勝敗をつけるような議論を発生させてはおしまいだと思いますが...
しかしこのような「倫理観を問うシナリオ」において、時たま「倫理観を問うような問題に対し全員でひとつの答えを導き出し、ゲームクリアに向かう」過程が組み込まれている場合があり、それをかなり「しんどいな...」と感じてしまいます。

TRPGはあくまで「ゲーム」であり、プレイヤーである私たちは「ゲームクリア」を目指したいと感じるのが普通だと思います。そのゲームクリアまでの過程において、シナリオで指定されている倫理に背いた選択を行うと、トゥルーエンドに移行できないというような仕組みがあったり、望まないのに後味の悪いエンドに進むことになってしまったりすると特に「嘘でしょ！？」となってしまいます。「倫理観を問う」だけでなく、他PLや、シナリオ作者の倫理観を強要されるシナリオだったのか、と....

人の考え方なんてそれぞれ違うんだから、そんなことは分かりきっているんだから、同じ方向に向かうなら、考え方を揃えるのではなく目的を揃えるべきでは？と思ってしまいます...。

あと、こういう倫理観系において議論ができない...私はダメだ...と思っている人は正直無理もないと思います。
倫理観における正しさってその人自身が形作るものだと思ってます。自分の倫理観が正しいなんて証拠はどこにもないし、それは相手も同様で。間違っていることなんて一つもない問題だからこそ、相手が強く発言してきたら「そうなのかな...」と揺れてしまいがちなものだと思っています。だから発言しない方が吉、議論はできない...となってしまう気持ちもめちゃくちゃわかります。(私は自分の倫理観が正しいと思って生きてるのでつい口を出し人を傷つけ傷つき後悔するタイプです)

倫理観問題に対して合意形成を行える人って、自分が正しいと確信できないようなことでもしっかりと自分の意見として口に出せる人かなと思います。それだったら他人の意見を聞いて「ここは曲げようがある！」とか「譲歩できる！」とか考えられるので...。

何度かこのようなシナリオを経験して、ああ、ダメだ！と匙を投げている状態です。多分しばらく通過しないとは思いますが、もし通過することになったら、自己を持たない探索者を連れて行くのかな...？という感じ。何色にでも染まりそうな、すぐ揺れる子かなと。んでもそれって、記憶喪失か物心つく前の子供(のような精神年齢の)探索者じゃないとできなくない？という葛藤もあります。
だ、だれか、助けて...。