#グッドオーメンズ、最終話でのクロウリーとベントレーとボヘミアン・ラプソディの話。
クロウリーの必死の希いを受けて業火の渦を駆け抜け、耐えに耐えてタッドフィールドまで辿り着いた愛車ベントレーが爆発するシーン。
呆然と愛車の死を見つめるクロウリーが膝を落として言うのが、
"90 years and not a scratch, now look at you."
(90年間かすり傷ひとつつかなかった、なのになんてことだ…)
基地への登場シーンでも爆発シーンでもクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」が流れているのですけど、よくよく耳を傾けるとクロウリーの台詞の直前、ほんの少しだけ曲のラスト部分の歌詞が聴こえています。
"Any way the wind blows..."
ボヘミアン・ラプソディのいちばん最後の部分です、これ。
これってこの曲の要でもあるフレーズで、サビで全体を聴くことができるですけど、その歌詞は
"Any way the wind blows doesn't really matter to me"
(どんな風が吹こうと俺にとっては大したことじゃない)
"Any way the wind blows..."(曲)+"not a scratch"(クロウリー)で、要するにこの歌詞で歌われてることとシンクロしてるです、ここの部分。この90年、「どんな風が吹こうと大したことじゃなかった」ベントレーへ向けた曲。
※蛇足ですけど、ボヘミアン・ラプソディでとても印象的であるこの"Any way the wind blows(たとえどんな風が吹いてこようと)"ってフレーズ、実はクイーンがオリジナルではないです。
ドリス・デイ(※彼女の逝去時、ブライアン・メイが彼女の大ファンであったことを明かしてます)の1959年の曲に"Any way the wind blows"っていうのがあって、元はたぶんこちらですね。ちなみにこの曲、恋愛をメリーゴーラウンドにたとえているので"Ins, outs, highs, lows"って歌詞があって、クイーンの方の曲にも"little high, little low"ってフレーズが入ってたりします。
グッドオーメンズに話を戻すと、90年どころか6000年の長きにわたって
"Any way the wind blows..."/"not a scratch"(どんなことがあってもかすり傷ひとつつかなかった)
のはクロウリー自身と彼がすべてを捧げるアジラフェルのことでもあるですよ。
でもそれが決して未来まで永遠には続かない、という残酷な事実を、愛車ベントレーがクロウリーに告げた瞬間でもあったわけです。
だからこそクロウリーは、サタンが迫り来るときにあの台詞(https://twitter.com/toasttweet/status/1149683812277686274)をアジラフェルに言ったんですね。たぶんですけど、ふたつは繋がってる。
愛する者に対してだけ見せる、彼の情の濃さをこんなかたちで見せつけられると、もう言葉もなくなるですよ。すごく好き。