リズ青5回目観て、初見の時「傘木まじ……鈍すぎる……鈍すぎて残酷……」ておもったの完全に間違ってたなとおもった。傘木ぜんぜん鈍くない。鈍かったらわたしはみぞれが思ってるような人間じゃないよ、むしろ軽蔑されるべきなんて言わないよね。。
傘木のなかには、じぶんの方がみぞれより社交性があり友達も多い、という優越感があって、そもそも部活にも入らず友達もいる様子のないみぞれを吹部に誘って「あげた」、声をかけて「あげた」という気持ちが確実にあると思う。まあ物語の冒頭から「ひとりぼっちのリズと、”リズがひとりぼっちだから”リズのところにやってきた青い鳥」の物語について、「なんか、わたしたちみたい」って言っていたしね。じぶんをあっさりと青い鳥に重ねているあたり、傘木のナチュラルな傲慢さが滲み出てるな〜〜とおもいます。
なので夏樹と優子に「みぞれ、音大受けるんだよ」と言った時の傘木は「じぶんより音楽の才能があり優れているみぞれ」に対するモヤモヤでいっぱいだった。だから、音大受験からわざとはなしを晒すようにお祭りにみぞれを誘い、そのうえで「みぞれは他に誘いたいひといる?」って聞いた時の傘木は、みぞれには他にあまり友達がいないことをわかったうえで言ったんだとおもう。
みぞれよりもじぶんには優れた部分(みぞれにはない社交性があり友達が多い)があるってことを、意識的にせよ無意識的にせよ確認したかったんじゃない?
だって、みぞれが「いない」って答えた時の傘木の表情うつってないんだよ。腕時計をはめた傘木の手首のカットだけ。あのときの傘木はきっと、ほっとした顔をしてた。そのあとりりかちゃんをみぞれが誘いたいって言ったときの表情、通行人によって遮られて見えないけど、きっと「いない」って答えられたときよりずっと追い詰められた顔をしていたとおもう。
こういう風に言うと傘木性格わるいな〜っておもうひともいるかもだけど、傘木はたぶん自分でも「心のどこかでみぞれを見下している/だからこそみぞれがじぶんより優れている部分を見せつけられるとつらくなる」ということの残酷さや闇に気づいてる。やさしくしながら、みぞれを見下す思いもあり、嫉妬や憧憬でぐちゃぐちゃになってる自分に気づいてる。だからこそ「むしろ軽蔑されるべき」って言葉がでてくるんだよね。。
でもみぞれは、そんな傘木の心情にまったく気付かずひたすら「のぞみのぜんぶがすき」って思っていて、やさしくしてもらって、声をかけてもらえて本当にうれしかった救われた、って純粋に思っていてさ〜〜〜そんなの傘木にしたらたまんないよ。「リズと青い鳥」を「わたしたちみたい」って言われてもなんにも反感を抱かないどころか、「わたしは青い鳥を逃さない、のぞみを縛ってる」なんえ思ってる。そんなの憎めないじゃんぜったい。「ずるいよ、みぞれは」だよね本当に。じぶんの醜さに少しも気付かず「のぞみがわたしのぜんぶ」なんて言ってくるみぞれの、鈍感さや純粋さが、のぞみには疎ましくて、でもかわいくて、憎めなくて、どうしようもなかったんだろうな……とおもった。
結論から言うと、初見は「傘木 お前……」とおもっていたし、みぞれの莫大な好意に気付かないのぞみの鈍感さは残酷だなあ、とおもってたけど、5回観た結果実際はまったく逆だったなとおもいます。傘木鈍くない。ほんとうに鈍いのはみぞれ。みぞれは傘木以外わりとなにも見えてなくて、傘木のことさえ本当には見えてない。傘木はちがう。色んなものが見えるからこそ、他の人も目に入っているからこそしんどい。リズと青い鳥が逆だったように、鈍感な子も逆だったなあとおもいます。