2023年10月14日(日)に行われた『優しい死神の席』の感想です。未通過❌
v1.0.1 2023/10/19 17:40
虎笑を演じました。演匠れんの手紙がずるかったので、感情を成仏させるために書きます
1. キャラ選択と読み込み
2. 推理前半:先立つものを探して
3. 推理後半:先立つものを弔って
4. 反省
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1-キャラ選択と読み込み
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1.1. キャラクタの選択
僕は最初に座った席のキャラクタをそのまま選ぶことが多い。席は適当に流れに従っていて(誰もいなければ奥から詰める)、文字情報は見ずに選んで座る。今回の虎笑もそんなキャラクタのひとりだった。
いつものマダミスではそれで完結する話に過ぎない。今回は特にキャラ選択で衝突もなくそのまま選ぶことができ、ジャンケンで勝ち残った、みたいな運命的なものはなかった。でも『優しい死神の席』を最後まで演じ切って、虎笑を選んだことはそれ以上の意味に変化したように思う
HOに書かれている虎笑の公開情報は次になる
> 演匠れんに弟子入りし、前座になって3年
> 目つきがどうも反抗的だが、言われたことはきちっとする
> 無口で敬語があまり使えない分、態度で示しているらしい
思い浮かんだ可能性は2つ
・不器用で素直になれないけど、根はいいヤツ
・何か別の目的があるので、最低限の実績は作ってる人物
キャラ選択する時、どちらかなと思案した
前者だと特に好きだけど、後者も悪くない。他にキャラクタを見渡しても正直ピンと来る感じではない。こいつの正体はわからないけれど、きっと悪いヤツじゃないんじゃないか。そんなことを思って選択した
今から振り返ると、この感覚はきっと他PLが虎笑に抱いている感想ときっと似たものだったと思う
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1.2. 虎笑はどういう人物か
キャラ選択が終わり、HO読み込みの時間が来る
果たして虎笑はどういう人物であったか。まとめれば以下だ
- 生まれがかなり良くない。生きるために盗みをする
- ある日、落ちている演匠れん公演のチラシを見つける
- 演匠れんを「金がある痴呆老人」として認識。弟子入りする
- 文字を教えてくれたり、叱る時もあったが決まってご馳走をしてくれた
- それでも何もない日は食べるに困る日々だった
そこで演匠れんの私物を盗み、質屋に売って生き延びている
"目つきがどうも反抗的"で止まっているのが上出来な生い立ちだ。家庭環境でのネグレクトなのは当たり前として、生まれの団地に住む人も頭にアルミホイルを巻くような電波な人ばかり。そんな環境で育って、学もない子供にできる糊口を凌ぐ手段といえば、自然それは盗みになった
ただ運命は虎笑を見離さなかった。あるいは、不器用にでも、蜘蛛の糸をちゃんと掴むことができた、とでもいうべきだろうか
虎笑は演匠れんの存在を知り、学もないのに方々に聞き回って弟子入りをした。"身の回りの世話をしなくちゃいけない"という、普通の人なら面倒と思うことも、虎笑には痴呆老人に近づくチャンスにしか思えなかった
演匠れんは虎笑によくしてくれる。でも生きるためにと盗みを止めることができずにいる
虎笑という人物の生い立ちを整理すれば、そのようになる
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1.3. 虎笑を掘り下げる
正直なことを言えば、この虎笑のHOはかなり期待通りだった
なぜなら虎笑の公開情報を見て思い浮かべた内容が、ドラマ『タイガー&ドラゴン』のタイガーだったから。ドラマを殆ど見ることがなく、見ても興味を抱かない身だが、『タイガー&ドラゴン』は何回か見直したくらいには好きだ。やさぐれた身だが奇縁があって落語に親しむ(とはいえ、見たのはだいぶ前なのでうろ覚えな箇所も多い)
そんな虎笑の地頭の良さには光るものがある
"学がない"と前述したが、HOを読み込んで半分は正しく半分は間違っている内容だと思えた。その際たるものは、虎笑が思う各登場人物への印象に表れていた
例えば「羊太郎」を評して曰く
"馬鹿だ。こういう人物は見ているとイライラしてくる。向こうでこういうやつはよくいたし、よくカモにしていた(中略)この人間には愛嬌というものがある。多くの場合、これがあると許されるものなのだろう(後略)"
これは、実はプライドの高かった羊太郎の側面を上手く捉えている内容と言える。その上でそれが自分にないもの(=社会に甘えてこられなかったこと)を説明している。よい文章だと思う
このように、語彙こそ貧弱だが(そして金を巻き上げる獲物としての視点もあるが)、各人がどういう性根をしているかは正確に洞察されていた。虎笑のHOの端々には「もともとは馬鹿ではない」ことを示す記述があった
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1.4. 虎笑に造形を与える
虎笑には愛嬌はない。学もないし盗みもする
採取的にはまたただのチンピラに戻るかもしれない
それでもこいつに期待しようと思った
HOを読んで理解し決めたことを整理すると、大きく以下3点だ
A. ヤクザな環境出身なので、年上を兄さん・姉さんと呼ぶ
羊太郎の説明で"よくカモにしていた"とあるし、きっと上下関係がある環境にいたことは間違いないだろう。落語界では入門時期が重要かもしれないが、そもそも落語界を全面的にリスペクトはしていない虎笑だ。年齢の方を軸に呼び方を決めるだろう
B. 地頭もいいし悪いヤツではないが、まだ救われてはいない
演匠れんに色々世話されて、少しずつ胸襟を開きつつあったとは思う。公開情報の"言われたことはきとっちする"などはその辺りだろう。しかし、それでも演匠れんのものを盗む日々はその魂にへばりつき、やさぐれていた身から完全に足を洗えていないことを意味する。もう数年もすれば変わってたかもしれないが、演匠れんが死んだことでその可能性はなくなったかもしれない
C. 盗みがバレてもそんなに気にしない
虎笑の目的には、盗みが告発されないことが入っていたが、正直この虎笑は気にしないだろうと思えた。咎められれば開き直る。それで関係が崩壊したら関係性から逃走する。それは落語という関係で繋がっていても、まだ性根がヤクザものであるから、それでいい気がした
よりイメージ的に言えば、『タイガー&ドラゴン』の救いがなかった(ドラゴンに出会わなかった)タイガー版、といったところだろうか
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2. 推理前半:先立つものを探して
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2.1. それにつけても金のほしさよ
演匠れんの死を承前して、推理は始まる
とはいえ虎笑の最優先事項は推理ではない。"明日を生きるために金目のものを手に入れる"ことである
虎笑は証明のスイッチが切れている間に、既に演匠れんから手拭いを盗んでいた。虎笑の持ち物として登場する手拭いはそれだ。また機会があれば演匠れんの扇子も手に入れたいと思う (これはHOの目的なものでもある)
他にも、現金や貴金属など金目のものが手に入ってもいいし、誰かを強請れる脅迫材料があってもいい。PLとしてはそういう風に考えていた。演匠れんが生きているならその対象は演匠れんのみにしただろうが、死んだのなら別の方法で生き残ることを考えなければならない。手持ちは多ければ多いほど良い (これはHOの目的外の内容)
これらを探すため、虎笑は基本的に情報カードではなく、入手可能な誰かの持ち物を基本的に探索した
手に入れたものは次の4つ
・鶴々の持ち物:ボイスレコーダー
・お熊の持ち物:カメラ
・びる象の持ち物:ポケットティッシュ
・楽屋に落ちていた物:家計簿
「どれも金にならねぇ...」そんな結果だ。鶴々にボイスレコーダーを問うても練習のために録音していると言われる。どうにも本当らしい。お熊にカメラを問うても、パワハラ受けててその証拠集めですと言われる。どうにも本当らしい。びる象のポケットティッシュなんてポケットティッシュだし、家計簿なんて虎笑のものですらありやがる。面倒の気配はすれど、金の匂いはしない。大丈夫かこいつら、いや落語家なんてそんなもんか
どうでもいい情報が手に入って、やさぐれている虎笑の姿をやろうとしたが、あまり上手くはできなかった
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2.2. 密談と推理
楽屋漁りもひと段落して、推理に加わる
個々の目的はあれど、やはり全体は推理を基調とする。虎笑は頭自体は悪くないのであれば、空気を理解してそれに乗るに違いない。そういう感じでうろ覚えな知識ながら推理をする
出てくるのはフグだのトリカブトだの物騒な情報
確かに高座にいたままお陀仏するには毒でなければならない。もし犯人がいたとすればだが。しかし、毒の情報はどう扱うべきかはちょっとPRとして難しいところがあった。それはどの程度虎笑が毒に関しての知識を持っているか解釈の余地があったためだ
虎笑はヤクザなところにいた。ある程度、毒に関する知識はあってもいいんじゃないか。フグ毒やトリカブトは常識としても、それらの扱いにもう少し詳しくてもいいかもしれない。漫画や小説は読んでいなくても、金になる話として悪い仲間と話をしていてもおかしくはないだろう
どう設定するか、かなり悩んだ。悩む過程で少し漏らしてしまったところもある。でも、最終的にそれらの知識は使わないことにした
例えば、トリカブトが登場しているが、出てくる情報はその花弁に欠落があるという情報だった。しかしトリカブトの毒の主体は根である。なので花弁に関する情報は確実にミスリードだが、しかし浅学の虎笑はそれを知らない。ゆえに、トリカブトの花弁で毒が...?みたいな推理とPRをした
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2.3. 羊太郎との密談
情報収集を目的として、羊太郎とも密談をする
正直、羊太郎との会話は良い予感はしないものだった。まず虎笑が羊太郎を評価していないのがある。愛嬌があれど、みたいな位置付けをしている。そういう存在と交渉するのは虎笑の苦手とするところだった
虎笑にとっての不運は重なる。まずタバコの灰を持っていることを指摘される。「その情報手に入れてるのかー」「いやでも急に窃盗まではいかないでしょ」。そんなことを思いながら対応すると、質屋から買ったのかと問われる。演匠れんのものは虎笑のもの。事実上くれたようなものだろう。だから普通に演匠れんからもらいましたと答える。嘘をいう感じではなく答えたし、疑う材料はないだろうに、不信感がある気がする。うーん、嫌な感じだ
さらに、演匠れんの私物を持っていないか問うと"手拭い"を持っているという。「それ、演匠れんからもらったものなんだ、返して欲しい」と問うが、返してくれない。うーん、それ泥棒ですよね。みんなに言いますよ?というが返してくれない...いっそ、告発するアクションがあれば、むしろこいつを盗人として告発してやろうかと思う(しかし虎笑にそのようなアクションはない)
ただ、完全に運がないわけでもなかった。羊太郎はただ口撃力が必要だけで、別のものであれば交渉の余地はあるとのこと。なるほどと思いながら、でも手元に口撃力があるアイテムはないしな、また別の機会を伺うかと別れる
議論の前半はそういう風に過ぎていった
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2.4. 空とか山とか海とかの老人
海・山・空師匠へのお茶だしは、全くやらなかった
目上の人におもねるのは虎笑の方法ではない。演匠れんが死んだことで次の依存先を、と考えないこともないけれど、演匠れんへの義理がある。葬式もしてないうちにそれをできるかと言えば、虎笑はそこまで狡猾ではないように思えた (そもそも狡猾なら三年も落語をやっていないだろう)
この3人の師匠に関心を払わなかったのは、あとで振り返れば結果として正解だったと思う。というか"老人に振り回されるのは恩恵もあるけれど、弊害もあるし、いつか独り立ちする時が来るよね"というのが物語の中心の1つに思える。虎笑は、老人に振り回されるのではなく、生まれの悪さがそこに来ていて、結果その老人達の呪いのような部分の影響が少なかったのではないだろうか
他キャラクタも、鶴々はブラック企業、二十兎は女性であること、などが呪いの中心になっていて、恩恵部分が相対的に大きい感じになっている。恵まれた資質を持つお熊や羊太郎・びる象は比較的呪いの側面を強く受ける。全体としてそんなプロットになっていたように思う
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3. 推理後半:先立つものを弔って
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3.1. 形見を手にいれる
推理は後半戦に進む
前半と同じく荷物を漁る。得られたのは次だ
・鶴々の持ち物:お守り
・びる象の持ち物:ポチ袋
・二十兎の持ち物:花束
(残り1つは失念した。そんな影響を与えない物だったと思う)
鶴々のお守りが口撃力+1だったため、事前に話していたように羊太郎と演匠れんの手拭いを交換してもらう。あとはお熊と話をし、演匠れんの悪い面が移されたカメラと(確か)びる象の医学書を交換してもらう。正直もらっても仕方ないけど、他に交換できそうなのがなかったため
あとは方々に聞き込みをすると、びる象が演匠れんの扇子を持っていることを教えてくれる。それ欲しいんすけど、くれませんかと頼んでみると、逡巡ののち、何故か渡してくれる。えっ、いいんスか。びる象兄さん...さすがの器の大きさっスね...。このご恩は忘れません...ってなる
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3.2. 土か煙か食い物か
これで心残りは消える
最悪、手拭いやら扇子やらを売れればしばらくは生きていけるだろう。虎笑が演匠れんの死に向き合う時間が来たとも言える。議論は相変わらず、フグだのトリカブトだの。特に直前にお茶を入れた羊太郎が怪しいという話が出る。それはそう。でも落語が終わってポックリ、みたいにそんなタイミングよく死ぬかね、とびる象。それもそう
フグの話の中心は羊太郎だ。彼はフグを3日連続で買ったし、調理師免許もあるし、何よりお茶を入れている。ではトリカブトは?お茶に混ぜる?こちらはイマイチ判然としない (そもそもトリカブトの根が掘り起こされた記載もない)
蝋燭に毒を混ぜる話が出てくる
蝋燭に混ぜて、テトロドトキシンとトリカブトの毒をキャンセルして、蝋燭が消えた瞬間にトリカブト毒がなくなり、中和しなくなって死ぬ?蝋燭の濃度問題は、キャンセルで説明がつく?うーん、やっぱ分からない
蝋燭の煙の話もちょろちょろ見え隠れする
情報カードとしても、そもそも蝋燭の煙は体に悪いんじゃないの的なものもある。その煙を吸い込んだからではという話だ。正直、こっちもわからない。蝋燭を不完全燃焼させることで、そこまで有毒の煙を生成できるのだろうか?
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3.3. 推理と期待
蝋燭に加工ができそう、という話が話題になった
だからと聞いてみる
「この中に蝋燭加工を依頼した人はいるか?」
聞いても、答えはない
「言えないのはやましいことがあるからだ」
あまり褒められた推論ではないが、元はヤクザものの虎笑だ。PRの一環として許して欲しいと思いながら話す
「蝋燭がトリックに使われたとすれば、これは殺人だろう」
反応を見るのも兼ねて、そんなことを発言する
この言動に至った理由はもう1つある
前述のようにブラフをかます技術を持っていたこともあるけれど、そもそもなぜそんなことをしたのか。それは、演匠れんの死を否定したいがためだ
親代わりだった演匠れんが死んだ
拾って優しくしてくれた師匠が死んだ
死神に魅入られるように死んだ
また不幸な生活に戻るのだろうか
またおちぶれるなら、せめて恨める犯人はいて欲しい
そこには悪意があって欲しい
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3.4. 火を継いで
虎笑の願いは叶えられなかった
犯人は存在したが、そこに悪意はなかった
そんな心情的に中空状態の虎笑に渡されたのは、演匠れんから手紙だった
それはひらがなを多用した3行の言葉から始まる
まず自分で漢字を勉強せよという。この手紙を誰かに読んでもらうのもいけないという
続く本文は、漢字を多用して書かれる
なんでも、お前は俺に似ているという。学もなく礼儀もなく、盗人の目をしていたと
金の持ってる痴呆爺として近づいてきたことは気づいていたともいう
消灯に乗じて、手拭いを盗むことは見越していたともいう。
それはプレゼントで、サインもしておいたから、売ればしばらくしのげるから、持ってなさいという
でもね、そんなことは長くは続かない。いつか捕まってしまうよ
そういって演匠れんはさとす
虎笑、落語家になりなさい。真から落語家になりなさい、と
世の中の汚いものを見てきたお前だから、いい落語ができるようになる
今のままでは金に困るだろう。だから二ツ目に上げてやる。心配しなくていい
ただ二ツ目は楽じゃぁない。二ツ目は長く、自分で仕事を見つけてこなければいけない
だが、虎笑。この手紙を一人で読めるようになったんだ。だから大丈夫
どういう巡り合わせか、演匠れんの手拭いと扇子も入手できてしまっていた。その上でこんな手紙を受け取ってしまったら、犯人がいても、それが誰でも、虎笑は救われざるをえない。きっと虎笑はこの時初めて、世界と自分がちゃんと繋がっていることを実感できた。そんな恩恵か弊害か分からないそれを、虎笑は笑って受け継いで生きていくように思えた
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4. 反省
反省点は色々ある
1つはそこまで粗野なPRができなかったことだ
もっと『タイガー&ドラゴン』のタイガーっぽく、"あ゛あ゛ん?"ってのとかできてもよかった。ただ、そもそも威圧的なPRは難しい。他にも親代わりが死んだ状態だし、物を盗もうとしているから、静かにやらねばならない必要性もあった。なんとかそこら変の設定を上手く解釈して、いい感じのPRに落とし込めれればよかったなと思う
どの程度の推理がメタに接触するのか、かなり悩んだ点だ
学がないという設定にしている。滔々と推理を発表しない程度の設定は容易だった。でも知識はどこまでが虎笑が持ってても自然な範囲だろうか?フグ毒やトリカブトは一般知識になるだろうか?虎笑はどれくらいそれを知ってるだろうか?それらはどれくらい正確か?フグ毒とトリカブトが打ち消し合う話は?
最終的にフグ毒やトリカブトについては知ってる、ただし抜けも漏れも多い、という想定で話をした。知識をどこまで設定するかはいつも難しい
何にせよ、本作は名作であると思う
トリックは正直推理ものとしては高レベルというわけではないが、そもそもミスリードが大量だ。老人たちに振り回されるのが本作の意図であれば、そもそもトリックがそうであること自体がまさにその通りなのだろう
総じてレベルが高いし、何よりやはり、最後の手紙がいい。よければパッケージを買って読んでみるのもまた一興かと思います