『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』2回目。展開がわかっていて表現や演技などに注目する余裕があり、そのぶん、沙代が絶望を重ねて変容してしまう一連のシーンでぼろぼろに泣いてしまった。
「水木は知っている」と告げられる場面の絶望(乙米が醜悪すぎる、怖い)と、その後の「それも知っているのですね」の絶望。「ほんとうは、東京にも自由はないとわかっていた」と言うときの絶望……。
種崎敦美さんの実力を知っているつもりでも、あらためて感銘を受ける。
最初に観たときは、展開や戦闘シーンの描写に驚いていたり、乙米さんの最期に怯んだりなんだりしていて、ちゃんと観れていなかったな。
沙代はわかっていたのだ。村から逃げたとしても自分が救われるはずはないと。わかっていてもなお、自分の運命がひらけるかもしれないタイミングで東京から来た男に、最後の希望をかけていた。そんな希望などあるはずはないことも、沙代はおそらくわかっていたのだと思う。彼女はとても賢い人だったから……。
水木は、彼は、誠実であろうとしたのではないか……、とわたしは思う。
自分の度量や、気持ちの変えようのなさをちゃんと自覚していて、嘘をつけなかったのではないか。水木の答えは沙代への最後のひと押しとなり、そして沙代は変容してしまうのだけど……。
沙代がすべてを終わらせようとしたとき、彼女はひとりの人間として、もしかしたら互いに愛することができたのかもしれない男を殺す。運命のすべてを、愛したかもしれない男にぶつけて殺す。
生き延びようなどとは思っていなかったはずだ。ただ、人として、ひとりの人間として、過酷すぎた運命への怨みを晴らすことではなく、ひとりの人間の身勝手な恋愛の帰結として男を殺すことによって、それで自分を終わらせようとしたのではないか……。
そんな沙代を止めた長田の言葉が「化け物め…」であったことに、わたしは悲しまずにはいられない。その瞬間の彼女は化け物ではなかったはずだし、それに彼女を化け物にしてしまったのは他ならぬわたしたちなのだ……。
沙代の魂がどうか救われるようにと祈らずにはいられなかった。