紅音様作「瑠璃色絵画」KP鞍馬/PC猫・イルハ・ツキナミ・トト丸/PL草加葵(私立探偵)・美凪黒兎(高校生)・我家垂蔵(刑事)・霧原かすみ(探偵)、遅ればせながら生還しました!
※踏破記念SSです。シナリオのネタバレを含む。
それにしても、酷い目に遭った。
「気晴らしに美術館に行こうか」と普段思わないことを思ったがために、自称弟子を名乗る霧原を巻き込んでしまった。
あめが起きなくなった一件以来、あいつは少し箍が外れたような気がする。……少しだけ、心配だ。俺のことなんて放っておけばいいものを。
美術館ではない別の部屋で、あめと出会った時にお世話になった刑事の我家さんや、明らかに一般人ではなさそうな少女(後々美凪栞の関係者と分かって納得したが)と鉢合わせた。
妙な縁があるものだと思う。奇縁というか、悪縁ともいえる仲とも繋がっているのは勘弁してもらいたい。
そして、白い部屋で出会った絡繰人形。
瑠璃色の瞳をした、純粋無垢な少女。
彼女のゼンマイを巻いたのは自分だった。だから、どうしても見捨てられなくなって、ついあんなことを言ってしまった。
『この絵の向こう側の景色を、少しでも綺麗だと思ったのなら――』
……俺は守りたいものを守れたことがないというのに、なんて無責任な言葉だろうか。
俺の右手が握っていたはずの少女の手は、現実世界に戻った時にはすり抜けて、影も形も残ってはいなかった。
半ば、心の中で予感めいたものが渦巻いていたが、それが現実になった時、正直言って驚きはしなかった。
その代わりに「お前なんかが何をしても結局は誰も救えやしない」という蟠りが、自分の中で確信めいたものにすり替わっていくのを感じた。
――数日後、日常の端で同年代であろう子ども達と楽しそうに笑う、瑠璃色の瞳の少女を見つけるまでは。
遠目からチラリと見て、ゼンマイを差し込む場所などは見当たらなかった。よく似た別人にも見えたが、少女の雰囲気は他人の空似というわけではないようだった。
さすがに、声はかけられなかった。あの時名乗りすらせず、しかも覚えているかどうかすら怪しい男性が声をかけたところで、犯罪臭が増すだけだ。
衝撃で思わず開いていた口から、大きく息を吐く。
その後、一人何かを言いかけて慌てて噤んだが、その口角はいつもより少しだけ上がっていた。