GODARCA(秘匿未配布✕)
あはっ あはっ こんなになっちゃった…なバジル君。
かつての優しげな面影は欠片もなく、そこにあるのはただ命を縊り殺すだけの化け物だった。
※※※注意※※※
「もしアルカナの力を使いすぎて異形の怪物になっちゃったらど~する?」という性癖を抉られたので、性癖と妄想を開放して書きます。
なんかのIF妄想だと思ってください…。ごだるか本編まだ始まってないけど…。
ちょっとグロっぽいかも?読む場合はお気をつけください🙇
あとせっかくなのでちょっと小話風です。
バジル君の隊のモブ隊員が出ます。
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対神話殲滅機関アルカナ 討伐報告書 No.■■■
討伐対象:Ⅻ ハングドマン
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その化け物は、命が枯れ果てた廃墟に陣取っていた。
かつてはガラスで覆われた天井の下、鮮やかな緑と色とりどりの花が咲き誇っていたその場所は、今や見る影も形もない。
それはそうだろう。なにせ、この場所を愛していた『彼』が居なくなったのだから。
草木は枯れ腐り、ドブのような匂いが充満していた。
踏みつけた花は粘り気を帯びており、歩く度に耳障りな音が鼓膜をくすぐった。
息を吸うだけで吐き気がする場所だが、それでもうめき声一つ溢すことさえ許されない。
その生命を縊り殺されたいのなら、話は別だが。
「────……」
『そいつ』は動くことなく、そこにいた。
機関所属を表す黒い隊服の袖口から、赤みを帯びた布切れがまるで触手の如く伸び、廃墟の至る所に巻き付いている。さながら蜘蛛の巣といったところか。
隊服の下半身には脚は既になく、体躯の真下には腐り落ちた肉片が脈動するように蠢く。
何より、首だ。首に、幾重もの布が巻き付き、きつく縛り上げている。だらんと首を前に倒した状態のため、その表情を窺い知ることは出来ない。
否、知りたくないのだ。
「……!」
僅かな、本当に針が落ちた程度の音が聞こえた。誰かが、隊の誰かが、腐敗から逃れた小枝でも踏んだのだろうか。
その音の先を目掛けて、赤い布切れが屍肉を貪るハゲタカの如く押し寄せた。
くぐもった声。そしてそれを掻き消すような、何かがへし折れる音。
伸びた布切れの触手は、今しがた縊り殺した生命を高く高く持ち上げて、丁寧に天井に飾り付けた。
その数、およそ数十人。
化け物『ハングドマン』に縊り殺されたアルカナの隊員が、また一人吊るされた。
いくら命が失われようと、亡くなろうと。中央にいるそいつは微動だにしない。
死体さながらではあるが、そいつが布切れの主である以上討伐対象に間違いがなかった。
「────……」
『彼』のことは、よく覚えている。
俺たちの隊長に選ばれた者のほとんどは、死刑囚のような目をしていた。
そりゃそうだろう。目にするだけで気が狂いそうな化け物共を縛り付ける力。その代わりに逃げることも抗うことも出来ない事実。
己の命を化け物達と同じ天秤に乗せる、『吊るされた男』。
そんなもの、アルカナの目覚めは死刑宣告も同然だ。
それでも。それでもだ。
『俺は幸せ者だ。…俺1人の力では神話生物達を止めることは出来ても、奴らを倒すことは出来ない』
『けれど俺には君たちがいる。こうして今日も、俺が生きていられるのは君たちが居てくれたからだ』
『だから約束するよ。俺は必ず生きて帰ってくる。もう、隊のみんなが悲しい思いをしないように』
『……大切な人を失って、苦しむその痛みが、これ以上広がらないように』
(嘘つきだよ、隊長。結局アンタも、戻って来やしなかったじゃないか)
『彼』は帰ってこなかった。代わりに、『化け物』が帰ってきた。
分かってる。あれはもう、『彼』じゃない。
唯でさえ人類は追い込まれている。それに加えてあんな『化け物』まで増えてしまったのなら堪らない。
だから、討伐するのだ。殺すのだ。これ以上大切な人を失う苦しみを、広げないために。
「……!!」
大地を蹴って駆ける。赤い布の触手が、いつも彼が身につけていたマフラーに似たそれが、捕らえようと迫ってくる。
それでも足を止めやしない。追いつかれる前に、吊るされる前に。
動きやしない、微動だにしないそれの、『化け物』の首を、落とすのだ。
「……■■■?」
ぐるん、と首が、動いた。生気を失った眼球が、緑色の瞳が、こちらを見た。
垂れ下がった舌が、揺れた。とうに潰された筈の喉が、優しいあの声が、名前を呼んだ。
あぁ、あぁ。なんだってんだ。
優しいあの声に。人の死を悼むことすら出来なくなっていた俺たちを、人に戻してくれたあの笑顔が。
なんで化け物のお前が、それを向けるんだ。
不意に、身体が浮き上がる。首に柔らかな死が触れる。
最期に見たのは、『ハングドマン』の光のない瞳だった。
✧ ✧ ✧
『ハングドマン』の討伐に向かった第Ⅻ小隊は壊滅。
以後、機関は討伐対象の危険度をレベル6に上昇。
原初のアルカナが率いる部隊による、壊滅戦を宣言する。