RWO(ラクシア・ワールド・オンライン)
藤白水蓮の、新しい悩み
RP回の代わりみたいなもの。読みたい人だけどうぞ
ある日のバンド練習後、某ファミレスにて。
「はぁ~ぁ~~~……」
「珍しいですね?何かお悩みでも?」
「今やってるゲーム……VRのRPGゲームなんだけどね。なーんか行き詰まっちゃって」
「ほぼ毎日やってるくせに?時間突っ込めばどうとでもなるタイプ、得意ジャンルじゃんよ」
「火力が足りん。どーやってファイターどもに追いつけばいいんじゃ」
「それはー、8割くらい自業自得だねぇ」
「わがっとるわーい……昨日なんて同じフェンサーの子が『武器更新しないと火力が伸びん!』って言うから、私は武器更新相当先なんだよねーって。したら、『それはそんなことやってればキツいでしょ』だって。そうだよー、しんどいよー……武士(サムライ)とかいうジョブも強すぎるよー……」
「おーい、席入れ……何やってんの」
「みーちゃん専用のお悩み相談室」
「いじめてるようにしか見えないんだけど」
「まあまあ、おすわりなさいな」
「で、なに?」
「とあるゲームでみーちゃんってば、筋力ステータスを1から頑なに上げないのさ。大体に当てはまる話、強い武器とか防具ってデカくて重い!ってイメージはあるっしょ。そのゲームも大体当てはまるんだけど、筋力1でまさしく最低限の装備しかできないから伸びしろがないって、ぴーこら鳴いてるってわけ」
「じゃあ何でそんなこと始めたわけ?効率厨だよな、こいつ」
「最初のキャラステータスが割り振られた時に偶然出てきて、運命感じちゃったらしい?それなのに、ゲーム内で出来た友達にはステータスこそこそ隠してるらしーんだよねぇ~?」
「テキトー言いやがってぇ~……」
「じゃあ自分で言いなよ」
「はぁ…………あのさ。前にもちらっと言ったけど、私、しばらく難聴抱えてたからさ。生まれ持って、ってほどじゃないけど、まあ、かなり小さい頃からね。だから、ハンデみたいなのには人より敏感になってるんだよ」
「でも、その筋力のステータスは後天的に上げられるんだろ。現実の自分みたいに治してやればいいのに」
「致命的な欠点じゃないと思ったんだよねぇ。実際、ここまではそこそこやれてたから……段々先が見えてきて、あのー、中学で部活を初めて選び始めた時みたいな?ちょっと変な喩えか?まあ、自由な選択ができなくて苦しいって意味でひとつ」
「その……嫌になっちゃうくらいなら、いっそ諦めてやりやすいようにしてしまう、というのは……」
「うん、簡単だよ。でもそうしたら、大勢に埋もれた一人になっちゃうような気がしてね……ステータスを下げる方法は今のところ知らないし、あってもわざわざ下げる理由はあんまり無いからね。今だけはかなり稀有な存在でいられてると思うんだ」
「ゲームのことは知らないけどさ。何がしたくてそのゲームやってるか、じゃないの」
あるだろ、目標が。そう語る間があった。
「……ワガママに、自分のしたいことをしたい。ハンデがあってもやれるんだって証明したい。唯一の何かになりたい。あとは……一位に挑戦したくなったんだよね。闘技場のランキング一位に」
「その中で、絶対に捨てられないのは?」
「全部。捨てられないんじゃないよ。捨てたくないから悩んでたの」
「もうちょっと器用になれよな。妥協するのは得意なんだろ……姉としてもそうしてきただろうし、前のバンド辞めた時も」
「そうだろうね……でもさ」
「後で後悔するくらいなら、自分にも他人にも出来ない、バカらしいって思われることなら、ここで全部やってみせた方がカッコいいよね?」
「……同レベルとは全く思わないけど、お前もバカだな」
「おん?次会った時言っちゃうぞ???」
「好きにしなよ。面と向かってもう1000回は言ってやったのに、今更何だってんだ」
(バカップルだな……)
(バカップルですね……)
(これで付き合ってないはガチ有り得ないんだけど、本人たちが一向に認めないんだよね)
「そこまで突き詰めてるなら、やりなよ。やれんだろ」
「……ま、多分ね。いつか生まれてくる分身ちゃんにも、顔向けくらいは出来ないと」
「ステータス隠してるのも、恥ずかしいと思ってたんじゃないの。耳が聞こえにくいのだってほとんど一人で何とかしてたって聞いたし」
「あー……そうかもね。そうかもしんない」
「だからナメられるんだよ。堂々としてりゃいーの」
「はいはい……分かりましたよー」
「ところでいま何レベ?」
「今?5レベルの、ステータスとジョブがー……」
「……二人で楽しそうなことやってたんですね。……ちょっと、羨ましいな」
「瀬怜奈もやってみたらいいじゃん」
「「ぜっっっっっっっっっっったいダメ!!!!!!!!!!」」
「なっ……なんでですかぁ~!?」
そう、簡単には諦められないんだった。私は夢を叶えにこの世界に飛び込んだんだからさ。