ブラックパンサー、ワカンダが発展してると視覚的に認識できる要素として、機械的なビジュアルの他にも実は作中に出てきていた馬に人が乗って走っていたり、サイを家畜化していたりと家畜産業が安定していた点もきっちり描かれていたというのが凄い
見た時に『演出なのか何なのか』って戸惑ったんですけど
ティチャラがマシンでワカンダに戻ってきた時の描写で、サラッと、実にサラッとワカンダの国民が『馬に乗って』飛行機を追いかけていたので妙な違和感を覚えまして。
『あれ?アフリカにあんなに思いっきり走るタイプの馬を使った文化ってあったっけ???』と。
調べてみたら、あれ、どうやらちゃんと意味があったみたいです。
ワカンダができた起源が作品冒頭でサラッと描かれていたんですが、
あの中で『独自の文明と発展を』って書いてあって、おおマジか…となったんですけど、
作中にはおもいっきり何か長い大河が流れていた形跡もないし(長距離に及ぶ川や大河と呼ばれるものは農耕や物流の大動脈にもなるので文明が発展しやすい)、
滝の描写はありましたが、高低差が激しかったり、水の使い道については明示がほぼなく、更に川の幅や長さもわからずで。
作中で表示されていたエリアがアフリカ大陸の中でも割と緑の多い砂漠化が進んでいないエリアだということがわかるのみで。
(その点において地下水脈の地上露出がある程度あり、雨季と乾季のバランスが取れやすいという推測はできますが)
しかしながら、民族的な衣装やバトルシーンで重点的にされるものはどちらかというと狩猟民族を主体にしたものだし、
でもちゃんと鉱山の文明ができてる=機械文明は発達してるってことだったので、
これはいったい、文明の発達においての経緯はどういうことになってる上での演出なのかな…?と思っていて。
で、ちょっと気になって調べた結果、
MCUから離れて『どうしてアフリカ大陸には発展途上国が多いのか』という
文明が発展する歴史の速度にスポットをあてたものを探すと
割と共通して出てくるのが
『歴史上の中で、狩猟という食糧確保の考え方から、
早い段階で動物の家畜化から放牧ではなく固定した畜産業を安定させ、
ソコから農耕、そして物流や機械産業などに発展させていった国ほど先進国になり
その流れが遅い国ほど後進国になりやすい』
という見識が見て取れました。
つまり
『動物の家畜化』と『放牧ではない固定畜産』に早い段階で成功しつつ
『農耕業と物流の安定』に成功している国ほど先進国として発展する確率が高いと。
人類の歴史上、数多くの動物が『家畜化できないかなあ』って試されたらしいんですが
現段階で家畜化できてる動物って物凄く数が少ないらしく
そこの段階で遅れをとってしまうと文化の発展にはかなり遅れがでてしまい
しかも、そこから放牧ではなく固定畜産にしたりできる環境が整っていたり
川があるかどうかとか、そういった色んな環境が整っているかどうかという要素もあいまって
遅れている・遅れていないという大きな格差が出てきてしまうらしいんですね。
アフリカは、そういった意味で家畜化できる動物が少なかったり
(シマウマは気性が荒すぎて乗るのに向いてないらしいです)
家畜化するより狩った方が早くね?
家畜化できても、草がありあまるほどないから、遊牧にしたほうがよくね?
という、ある種環境適応した選択の結果、後進国になっちゃった的な側面もあるようです。
詳しくはこの記事の最下部に参考にしたリンクがあります。
超わかりやすい記事と固くてちょっとわかりにくい記事と両方記載してますので
よかったら好きなほうを読んでみてください。楽しいです。
そんなわけで。
あの、馬に乗ってワカンダ国民が疾走しているシーンで
『少なくとも馬を家畜化するか、家畜化された馬を文化流入させて自国文化に取り入れることができている』
事や
サイを飼い慣らしているシーンでティチャラが『よく慣らした』と褒めているシーンもそうですし
その背景に割と潤沢に緑の牧草が広がっていたことも含めて
『気性の荒い動物の家畜化に今も積極的であり、成功もしている』
というポイントと
『遊牧ではなく固定畜産業としての環境づくりに成功している』
という、先進国に無くてはならない要素をワカンダは既に長い歴史の中で満たしているんだぜ!
だからクローズドな中でも独自発展を遂げることができたんだぜ!
という事を映像でシレッとサラッと証明しているっぽいんですね。
そうだとしたらすごいなMCU…すごいよ…作りこみ細かいよ…
MCUに限らず、映画って各作品のメイキング見ててもうわあ設定細かいなあ…と思うけど、映像や言葉で語られていないものも、もっともっとたくさんたくさんあるんだろうなと改めてしみじみ。
そういった、家畜産業の文化発展の側面から見ても、あの映画って
アフリカの子達が見ることができたら、
もしくはアフリカ出身で先進国にいる人たちがみることができたら
『こういう事ができたらアフリカもっと発展するんじゃね?皆幸せになるんじゃね?』
みたいな、凄く現実的な夢を抱くことができる作品じゃないかな?とも
思ったりするんですね。
更にワカンダは先祖に対する敬意を忘れない国で、
今作は鎖国状態で出島的な国交を行ってきたのワカンダが
鎖国解除する的な大きな節目の作品でもあるので(昔の日本みたいだよね)
そういう意味でも、日本の観覧者にも響くものはあるんじゃないかな?と思ったりしました。
牧畜や家畜のシーンだけでも、こんなに背景が色々見えたり考えたりできるので
何度もおかわりすることで、もっともっと色んな側面が見えてきそうです。
いやあ最高だよ…
<参考にした記事>
わかりやすい版↓
なぜ、アフリカは発展しなかったのか?
http://yuri001.com/blog/africa/
ちょっと堅い版↓
先史:アフリカ大陸の農業の起源について
http://rekishinosekai.hatenablog.com/entry/sensi-afurika