房丸檜扇様(@i6ey48yyo4qtpCY)の「横溝正史『黒猫亭事件』【ゆっくり文庫リスペクト】」
ふせったーに簡単な感想を書きました。ネタバレもあるので、ご注意。
最初に懺悔となるが、私は黒猫亭事件の原作は大昔に読んだはずだった。が、あまり記憶に残っていない。やはり一人二役もので少しややっこしかったのが原因だろうか。
そして、この度、房丸檜扇様の動画で改めて触れる機会をいただき、内容も理解できてうれしい限りである。
さて最初の動画視聴時には、私は淡泊な印象の物語だと感じた。村井刑事(朱鷺子)が淡々と語る構成だからだろうか。
だが今回、感想を書くにあたり繰り返し視聴すると、人間のドライな黒さが強調されていることが感じられた。
それは主にお繁と男性たちとの関係からである。
殺された糸島も、妻であるお繁との浮気ごっこで遊ぶなど、純粋さが感じられない。
日兆も、お繁に横恋慕して共犯になったわけだが、最後は自分の可愛さに裏切りをする。
お繁を愛人にしていた風間なども、目の前で死なれたにもかかわらず、さも他人事のように事件後の金田一との会話に入る。
お繁に関わる男性たちは、彼女を好いていても『愛』は決してないのだろう。
同情することはできないが、このような男性たちに囲まれては、お繁も人生のリセットをしたくなるのも当然だったと理解はできそうだ。
動画において、お繁は後編のわずかなシーンでしか登場しない。彼女は凶行を簡単に行えるエゴイストで、サイコパスだろう(役者も青娥だし)。しかし、それゆえに男性たちに翻弄され続けただろう1人の女性の姿がわずかなシーンから私は見ることができた。
動画の淡々とした雰囲気は、お繁の黒くドライだった人生を示したものなのかもしれないと、ふと思う次第である。