「不辜のサァカス ナイフノモツレ」 現行・未通過× 自陣まだ×!
7日目、HO2視点☀
うぐぐ、つらい…大切な人がどんどん手からこぼれていく……
セナちゃん、ウムトさん、それに、ファルマコさん………………………………
今回身近に思ってた人物との別れ+決別が多くて心に来る。
○アサドのテント
意識を取り戻したとき、自分の四肢が自由を奪われていることに気がついた。
体を捻り、抵抗を試みる。拘束具は全く緩む気配がない。
いつの間に。そんなに長い間気を失っていたというのか。
自分がどんな状況にあるかを確認する。
どうやら板のようなものに寝かされているらしい。両手首両足首を金属の輪でガッチリと固定されていた。
自分一人の力ではどうすることもできない。
そうだ。みんなは?
周囲を見渡す。周囲からはなんともいえない甘い匂いが漂っていた。薔薇の香りだ。
どこかで嗅いだことがある気がする。はるか昔に、それと、失踪する前のウムトさんの身体からも。
奥には幕が垂れ下がっているのが見えたが人影はない。
自由のきかない身だが、口をふさがれていなかったのは不幸中の幸いだった。
「だれか、だれかいないのか!」
そう周囲に呼びかけたとき。そばの緞帳が上がった。
その向こう側には見慣れた姿があった。団長だ。
「団長!」
ほっとした。彼女の方はどこも拘束されていない。怪我もないようだ。
「ファジュル?大丈夫か?」
向こうからも声がかかる。
駆け寄ろうとしてくれたようだが、こちらとあちらの間には大きな溝があり行く手を阻まれているようだった。
そこに声が降ってくる。
「さあ、ここにおわすはスィールク・ハルワサーフル団長。
彼の華麗なナイフさばきを見せてもらいましょう!」
どこからか彼女のもとに五本のナイフが手渡される。
遠目からでもわかる、五本のうちの一本はジャンが持っていたあのダガーと同じものだ。
団長とおれの視線が交差する。
団長が微笑む。
「なんて顔をしているんだファジュル。笑いなさい。みんなが見ている。」
そう言う彼女の手元が微かに震えているのが見えた。
こちらも無理やり口角を上げ、言葉を返す。
「はい。団長。
思う存分やってください。みんなに、見せつけてください。団長のショーを!」
○ナイフ投げ
団長がうなずく。
そして手にしたナイフを手に、こちらにふりかぶる。
一本、一本とナイフは彼女の手を離れ、風切り音を響かせながらこちらに一直線に飛んできた。
右腕、右足、左足を固定していた鉄の輪は見事にナイフに貫かれ、ただの金属片となった。
だが一本。左腕の拘束を解こうと投げられた短剣は拘束具をわずかに逸れ、左腕を貫いた。
----------------------------------------------------------------------------------------------
あなたは緊張と恐怖に苛まれながらもどうにか自我を保つことに成功した。
そのまま自分に向かってくるナイフを身体で受け止めることになる。
あなたの肌に勢いよく放たれたナイフが突き刺さる。
そしてその全てをあなたは目撃してしまう。
ナイフが突き立てられた箇所から血しぶきが上がり、悶絶するような熱さと痛みがあなたを襲った。
----------------------------------------------------------------------------------------------
なんてことはない。かすり傷だ、と強気に笑おうとした。
でも、できなかった。
四肢が自由になり、その場に崩れ落ちる。
団長が駆け寄ろうとしてくる気配を感じた。
ナイフ投げ後--------------------------------------------------------------------------------
あなたの胸中は強い不安と、どこかへ逃げ出してしまいたい気持ちでいっぱいだった。
どうして自分だけこんな目に遭わなければいけないのか、どうして、自分はこんな目に遭わされているのか。
どうして自分は普通と違うのか。どうして皆が当たり前に持っている物を自分は持っていないのか。
――どうしてこんな、呪いのようなものを背負ってしまったのか。
考えることを止めなければならないと思う。怒りや負の感情に支配されてはいけない。
深呼吸をして、落ち着かなければ。
そう考える冷静な自分と共に、もうどうなってしまってもいいと考える自分もいた。
全て、どうでもいい。
あなたは自我を失くし、その場で<旋風>に身を委ねてしまう。
地獄の嵐に飲み込まれる。いや、飲み込まれるのではない。自分が飲み込んでやるのだ。
大きな痣は急速に広がっていき、あなたは全身を黒く覆われる。
あなた自身が嵐となって、この場全てを喰らいつくすのだ。
----------------------------------------------------------------------------------------------
風が巻き起こる。
○・・・
意識が黒く塗りつぶされていく。
「ファジュル。ファジュル、聞こえるか。」
闇の中、聞き慣れた声がした。この声は…ファルマコのものだ。
こんなときに何だ。おれはこのまま眠っていたいのに。
「君の不安も苦しみもよくわかる。だが少し、私の話を聞いてはくれないか。」
うるさい。話したきゃ勝手に話せばいいだろ。
「ありがとう。」
彼女の安堵したような声が聞こえた。
そこから彼女は少しずつ、順を追って話し始めた。
実はおれが生まれた時からおれのこと、おれの両親のことを知っていたこと。
母はおれを産むときに危篤となり、父が薬師であるファルマコを訪れたが、
人間嫌いだったファルマコはそんな彼に薬代として桁外れな値段をふっかけたこと。
後日、父はおれを売り飛ばした金を持ってファルマコに会いに来たこと。
それで本来終わるはずだったが、仲が良かったアタハンという人物の顔に傷がついていたことが気になり、
彼に理由を聞いたこと。
なんでも、そのアタハンに傷を負わせたのがおれ自身だということ。
なぜならおれはアタハンに誘拐されたからだ、ということ。
ここでファルマコは一旦口を閉ざした。
こちらをいたわるように、優しい声音で尋ねてくる。
「これから先は君にとってつらい記憶かもしれない。無理して話を聞かなくてもいい。
君は、思い出したいかい?」
少し考えた。
たしかに、全てから逃げることができればどんだけ楽だろう。
知らぬ存ぜぬを繰り返して、全てに耳をふさいで、考えることを放棄して。
心地よい闇にこのまま逃げ込んでしまえば、楽なのかもしれない。
だけど。脳裏に団長の顔が浮かんだ。ダグさん、ガゼル、それにセナの顔も。
「今までずっと逃げてきた。
本来向き合わなきゃいけないことから目を背け続けた。
みんなに嫌われるのがこわくて、みんなと離れたくなくて、隠し続けた。
過去も、自分の中の「なにか」も、絶対におれを逃してくれるわけがないのに。
結果、またあんな出来事を引き起こした。
もうおれのせいで誰かが傷つくのは見たくない。
逃げ続けてたら、守れるものも守れない。
ここであんたからも逃げたらきっとおれは一生後悔する。
話してくれ。知っていることを。」
「きみは強い子だね。」
ファルマコの優しい声がする。
彼女は続きを話した。
蓋をされていた記憶が花開いていく。
おれは売り飛ばされ、身寄りのないストリートチルドレンに身を落としていた。
そんな折、アタハンがおれを誘拐し、ここ、アサドのテントに無理やり連れてきた。
そこで背中に何かひどく熱く、痛いものを押し付けられた。
涙と唾液と吐瀉物にまみれ、必死の抵抗を試みた。
おれをつかんでいたアタハンはそれにひるみ、思わず手を離した。
這う這うに、滅茶苦茶に走り、命からがらアサドのサーカスから逃げ出すことができた。
気力が尽き果て道に行き倒れていたおれを拾ってくれたのがアワドさんだった。
またファルマコの声がする。
「君はこのまま黒い嵐になることも、人間として抵抗をすることもできる。
どちらを選んでくれても構わない。どちらの道を選んでも、私は君をサポートしよう。
だがもし人間として生きる道を選ぶなら、君はきっと苦しむことになる。
君は、これからどうなりたい?」
答えは決まっていた。
「おれは初め何も持ってなかった。そこらへんの石ころみたいに、ただそこにあるだけだった。
でも団長が、アワドさんが、おれにボールを握らせて、おれに居場所を作ってくれた。
おれを「人」にしてくれた。
ダグさんはぶっきらぼうだけど、悪いことがあればおれをちゃんと叱ってくれる。
ガゼルは調子乗りだしムカつくけど、人を笑わせたり、楽しませるすべを持ってる。そこは尊敬している。
おれの居場所はここにある。
おれは制御できなかったおれの力でみんなのことを傷つけた。
そのことをちゃんと謝りたい。
そして、お礼を言いたい。恩を返したい。おれの大切な人たちに。おれの口から。」
「そうか。それもまたいいだろう。」
不意に記憶が鮮明に蘇ってくる。
いつもショーのとき、同じ格好をした「誰か」が見に来てくれていたこと。
おれが舞台に上がってから一度も欠かさず芸を見に来てくれていた「誰か」がいたこと。
その「誰か」こそ、ファルマコだったということ。
何故忘れていたんだろう。
「思い出した。やっと。
お前はたしかにおれのことをずっと見ていてくれていた。応援してくれてた。
ありがとう。
今まで邪険な物言いをしてしまってすまなかった。」
「いいんだ。言っただろう。私は君のファンなんだと。
さあ、君の舞台を私に見せてくれ。」
「ああ。本当にありがとう。」
○再び、アサドのテント
意識が戻る。
見渡してもファルマコの姿はない。
だが場内は大きく風が吹き荒れ、目の前では団長が飛ばされないように必死に何かにすがりついていた。
だがそれも限界に近い、と察するのに時間はかからなかった。
風に止むように命令する。
するとまるで聞き分けのいい犬に命令したかのように、風はぴたりと止んだ。
団長に駆け寄る。
体制を崩した彼女は片膝を付き、こちらに気がつき顔を上げた。
「大丈夫ですか。」
怪我をしていない右腕を差し出す。
団長はうなずいておれの手を取った。
視線が交差し、どこからともなく、笑い合う。
----------------------------------------------------------------------------------------------
あなたはもう、自分の身体を自由に使いこなせる。
あなたの体はあなたのものだ。何も不安に思うことは無い。
★目的の達成
「自分の中にある何かを退散させること」
あなたはその強い意思をもって「人」であろうとし続けた。
あなたは実感することができる。自分は「人間」であると。
自分の力で、克服してみせたのだと。
★以降 HO2 は舞台上のマイナス補正が発生しなくなる。
----------------------------------------------------------------------------------------------
晴れやかな気持ちだ。
今では自分の身体を、力を制御できると確信できる。
やっと、おれは本来の自分を取り戻したのだ。
「団長。」声をかけた。団長は首を傾げた。
洗いざらい話した。おれの中に風を起こす何かが居座っていたこと。
そのせいで三年前にあんな大事件を起こしてしまったこと。
それから自分の力を制御できないとはわかっていたものの、
みんなに嫌われるのが怖くて、離れたくなくて言えなかったこと。
さっきの公演でも、今の強大な風も、自分の制御できない力によって起こされていたこと。
でも、団長やみんなのことを思い出して、それがおれに向き合う力をくれたこと。
そのおかげで今は自分の中にいる「何か」を制御できるようになったこと。
「ありがとうございます。
おれ、団長に会えて、みんなに会えてよかったです。」
団長は静かにおれの話を聞いていた。
「そうか。小生も、とてもいい拾い物をしたよ。」
団長に抱きついた。
そんなおれが落ち着くまで、団長はおれの背中をずっと擦ってくれた。
感情の波が一段落して、顔をあげる。
「ありがとうございます。もう大丈夫です。」
「そうか。なら、探しに行かねばならないな。
離れ離れになってしまった大切な家族たちを。」
「そうですね。」
心の底から、笑った。こんなふうに笑うのは随分久々だ。
団長と歩を揃え、テント内を捜索することにした。
○檻
テント内に大きな檻があるのがわかった。
その中に動物の一群がふたつ。
手前のものにはダグさんの姿が見える。
「ダグさん!」
声をかけると、向こうもこちらに気がついたようだ。
「団長、それにガキか。そっちは大丈夫か。」
「平気だ。そっちは?」
「オレもなんともない。近くにはいつも面倒を見てる獣たちもいる。」
確かに言われてみれば、あれはライオンのラオにトラのラトではなかったか。
「みんな無事みたいでよかったです。そちらからは出られそうにないですか?」
「試みてみたんだが、鍵がかかっているようでな。」
確かにダグさんが入れられている檻には鍵がかかっていた。
そして、そのときにもうひとつあった動物の群れに視線がいく。
そこで動物たちの隙間から見えたのは薄青色の毛髪。
はっとした。どこかで見たような色合いだ。あれはセナのものではなかったか?
「セナ!!」思わず叫んでいた。
彼女の容態はひどいものだった。
左腕を食いつぶされ、脚も引きちぎられ、内蔵を取りこぼし、貪り食われている。
彼女の目は見開かれ、二度と瞬くことはない。
もう手遅れだ。誰が見ても一目瞭然だった。
言葉が出なかった。全身が硬直して彼女に目を奪われた。
そのとき。
「こらこらー、だめじゃないか!ほらはやく離れろおまえら!」
○ウムト
聞いたことのある声思わず耳を疑った。
首の向きはそのまま、目線だけそちらにやる。
ウムトさんだ。前団長である彼がおれと団長の背後に立っていた。
前のときには見なかったタトゥーを身体に大きく入れている。
ただのタトゥーではない。あれは確か、ヘナタトゥーといっただろうか。
確か皮膚の表面にだけ入れ墨を入れる、消えるタトゥーだったと記憶している。
----------------------------------------------------------------------------------------------
ヘナタトゥーの装飾の意味は分からないが、
あなたは一瞬、その模様が嵐の中で目撃したあの“嗤っている男”に見えてしまう。
ヘナタトゥーが何かを呼び寄せるための案内図・呪文の類だと分かる。
第六サスラッタの祈祷(LA136p)
正気度や MP の消費をしない代わりに、呪文を使用した術者に悲惨な結果をもたらす可能性を秘めている。
粉を薄く固めたものに祈祷の文句をテソライト文字で記し、
呪文を詠唱すれば黒い至上者を呼び寄せることができるとされている。
----------------------------------------------------------------------------------------------
直感的に理解した。このタトゥーはただの模様、飾りではない。
何かを呼び出すための依代のようなものではないか。
そんな思惑はよそに、ウムトさんは依然ひょうきんな口ぶりでこちらに寄ってくる。
「セナ、大変だったな。ずいぶん顔色も悪いじゃないか。
いつもこき使って全然休ませてやれなかったからな。いつもすまないな。」
何を言っているんだこいつは。セナはとっくに死んでいる。
彼は檻のそばまで寄り、しゃがみこんで哀れなセナに話しかけ続けた。
「お前踊り子になりたいって言ってただろ。お前にちょうどいい仕事を見つけたんだ。
お前の経歴も生かされる、まさにうってつけの仕事だ。よろこべ!」
プレゼントを持ってきたようなそんな無邪気な笑顔で、得意げに彼は口を動かし続けた。
「猛獣たちへの奉仕だよ!」
そのとき、セナの身体が浮き上がった。いいや、立ち上がった、というべきか。
それと時を同じくして、檻の猛獣たちも様子がおかしくなりはじめる。
唸り声、涎が床に落ちる音。
そんな音をかき消す大声が場内に響いた。
「さあ、きみは優秀な猛獣使いなんだった!
私達にみせておくれ。きみのその芸を!」
○VS獣たち
うそだろうそだろうそだろ。
いきなり落ち着きをなくした獣たちの様子を注意深く観察する。
これは確か、うちの獣たちもなっていた症状だ。
獣がなる病気。たしか狂犬病だとかいわなかったか。
狂犬病は接触することで獣から人に伝染する、かなり致死性の高い病気だったはずだ。
あれに噛まれるものならひとたまりもない。
檻の外にいるおれたちは安全だ。だが、中にとらわれているダグさんは話は別だ。
檻の中にいるライオン、犬、ウサギ、パイソン(大蛇かな?)がダグさんとセナに襲いかかった。
大変なことになった。ダグさんが獣たちを鎮めるまで、なんとか時を稼がなければならない。
団長が手から火花を出し、獣たちを牽制。
おれは途中から「狂犬病罹患者は水を恐れる」ということを思い出し、嵐を起こして雨を降らせる。
その間にも獣たちはダグさんに飛びかかり、セナを食い荒らし、生殖器を押し付けようとする。
ダグさんの必死のテイムにより、なんとかこの場は収まった。
○ウムトとの会話
パチリ、と音がし、檻の扉がひとりでに開いた。
中に居た動物たちが一斉にそこから走り出てくる。
セナもそれに巻き込まれ、檻の出口から少し出たあたりで床に転がった。
「ああセナ。」
ウムト(もう呼び捨てする)がセナに寄っていき、その体をなで上げる。
皮膚の剥がされた無惨な状態のそれを、何度も何度も。
さわるな、と叫びだしそうな気持ちを抑える。
今すぐ突き飛ばしてセナを取り戻してやりたい。
そんなこちらには目もくれず、彼はふと団長に視線を向け、顔をほころばせた。
「アワド。大きくなったな。」
彼はセナを床に横たえると、その手で団長を抱きすくめる。
「会いたかった。元気にしてたか。」と、団長に語りかける。
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!(発狂)
さわんじゃねええええええええええええええええおれの団長だぞウオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア(威嚇)(中指立て)
ほんとこのときよく自分を抑えられたと思う。だれかほめてほしい。
ウムトがなおも口を開く。
「なあアワド。お前も、家族とやるサーカスが大好きだろ。
おれたちと終わらないサーカスをやろう。
おれはずっと、ショーをやるたびに終わってしまう、そんなサーカスが嫌だった。
でもここでなら。アサドでならそれができる。
アワド。俺と来い。」
もうこれ以上は堪えられなかった(ほんとに堪え性がない。こいつ実はPOW3くらいなのでは??)。
「さっきから何を言ってるんだ、ウムト、あんた、頭がおかしくなっちまったのか!
セナだってもうどう見ても死んでただろ!」
ウムトが驚いた顔でこちらを見る。
「ファジュル。セナは大丈夫だ。そう見えてるだけだ」
「本当にどうしちまったんだよ、ここにきてあんた、おかしくされちまったんだよ。
ここでなら何ができるって?正気に戻れよ!」
「アサドはすごいところなんだ。ここでなら永遠のサーカスができる。
ここは本当に素晴らしい場所なんだよ。」
「そんなわけがない!
おれは小さいときに誘拐されてここでひどい目に遭った。
無理やり背中に何かを押し付けられた。痛くて、熱くて、泣いても叫んでも助けてくれなかった。
子供たちを誘拐してそんな目に合わせて成り立ってるこんなサーカスがまともなはずがない!」
「まあアサドは人数も多いし気の合わないやつも居るかもしれないけど、なんとかなるって!」
「ふざけてるのか!?
永遠に終わらないサーカス?ありえない。そんなものがあるはずがない。
どんなものにだってはじまりがあれば終わりがある。あんた騙されてるんだよ。」
「どうしてそう言い切れる?世界中を見て回ったのか?
そうでもないなら、この世界のどこかに終わらないサーカスがあったって不思議じゃないだろ。」
「やめろよ。あんた、おれたちの今のサーカスを作ってくれた、親みたいな存在だっただろ。
これ以上おれを落胆させるような真似をしないでくれ。」
「そう言われてもなあ。
なあアワド。お前はわかってくれるよな?永遠に終わらないサーカス。魅力的な話だろ?」
歯噛みをした。こいつに何を言っても通じない。本当にもうおかしくなってしまったのか。
団長を見た。彼女は何かを逡巡しているようだった。
「なあ。本当に、お前がやりたいサーカスはそういうものなのか。」
「ああ。」
「このサーカス、アサドが素晴らしいものだとお前は思っているのか。」
「そうだ。だからお前らのために色々用意してるんだ。こちらにこい、アワド。」
「ウムト。
太陽と月の共通点は何だと思う?」
ウムトが瞬きをする。
「共通点?さあ…なんだろうな。」
「それは、『どちらもずっと空には居られない』ということだ。
サーカスもそれは同じだ。
お前は「終わらないサーカス」が素晴らしいものだと思ってるようだが、小生は違う。
お前とともに行くことはできない。」
「……そうか。
それがお前の決断なんだな。じゃあこれ以上おれが言うことはねえ。
あとはお前の好きにやれ。」
気がつけばウムトの姿はなくなっていた。
周囲に目を走らせどもそこに彼の姿はない。
団長がこちらに向き直る。
「待たせたな。話は終わった。」
「おかえりなさい。」
ダグさんも扉から出てきた。
「さて、まだあのピエロはどこにいるのかわからないのか。」ダグさんが腕を組む。
「探しに行かないといけないな。」団長が静かに言う。
「あの、その前に。」おずおずとおれが口を開いた。
「セナを、連れてってやりたいんです。構いませんか?
こんなところに一人で置いていくのは、どうしても嫌なんです。」
団長がうなずく。
「ああ、それは小生も同じだ。連れて行こう。」
三人でセナのもとへ歩み寄る。彼女は依然眼を開けたまま、そこに横たわっていた。
しゃがんで、彼女のまぶたを閉じてやる。
そしていつか彼女に渡そうと買ったおまもりを取り出した。
「ほんとうは昨日これを渡すつもりだったんだ。渡しそびれちゃったけど。」
彼女の首にかけた。
「守れなくて、ごめん。」
手を組んで額にあて、黙祷をする。
団長とダグさんも目を閉じ、彼女に祈りを捧げた。
彼女の遺体はダグさんの命令で、ライオンのラオに担いでもらうことになった。
○玉座
階段の先に絢爛豪華な椅子が設置されていた。そこに誰かが座っているのが見える。
階段を登っていくにつれ、それが一人ではない、ということに気がついた。
男が座っている。見たことのない顔だ。肌の色は白く、髪の色素も薄い。
そしてその上にまたがるようにして男と向かい合っていたのは、ガゼルだ。
ガゼルは上体をぐったりとさせ、男にもたれかかっている。
その体は男の腰の動きにあわせてゆらゆらと揺らめいた。
ガゼルが、何者かと性交渉をしている。
男はおれたちが来るのを見ると微笑みかけてきた。
「やっときたね。ガゼル、もうぐったりしちゃったよ。」
ガゼルから自身のものを引き抜き、彼を掻き抱く。
「ガゼルを取り返しに来たのかな。でもあげない。
君たちにはここで死んでもらうんだから。」
そのとき、散っていた獣たちが階段を駆け登ってくるのが見えた。
それらはおれたちを素通りし、男のそばまでやってくると、男に噛みつき、肉を食いちぎる。
骨が砕ける音、内蔵が破裂する音、鮮血が迸る音。
猛獣たちに食われている最中もなお、彼は口に笑みを浮かべていた。
男の姿がなくなると、次は獣たちが互いを喰らおうと牙を剥き出す。
食い破り、咀嚼し、飲み下し、また食らいつく。
そうして獣たちの姿はぼこぼこと異形な「なにか」に姿を変えた。
男の声が聞こえる。
「ユラはアスランに加護を受けてるんだよ。
だからここでガゼルと結婚式をあげるんだ。」
異形の「なにか」は新郎の姿にそのシルエットを変化させた。
○VSシュゴーラン
ここで自陣全員が何かしらの狂気に陥る。
自PCファジュルが陥ったのは「淘汰」。
淘汰-----------------------------------------------------------------------------------------
(自分以外の何かに原因を押し付け、それを排除することで不安要素を失くそうとする。
周囲の者に対して攻撃的になる。)
----------------------------------------------------------------------------------------------
またKPからPL向けにこんな秘匿が。
----------------------------------------------------------------------------------------------
HO2 は<旋風>を使用することで、口吻を一時的に退けることができるかもしれない。
<旋風>による回避方法は、自分への攻撃にも他 PC への攻撃にも使用可能。
しかし<旋風>は全体攻撃であるため、自分への攻撃または他 PC の攻撃
どちらへの回避方法として用いても、他者へ被害が及ぶ可能性がある。
また、他 PC への攻撃に《旋風》を用いる場合は、
間に合うかの《DEX*5》に成功してから《旋風》判定で退けられたかを判定する。
《旋風》に成功した場合、《POW*5》を判定する。 (《旋風》に失敗した場合はそもそも回避が不可能)
成功 → 他PCにダメージは発生しない。
失敗 → 1d8のダメージ発生。その場にいるHO2以外の全員は《回避》の判定が可能。
----------------------------------------------------------------------------------------------
もうこれは問答無用で《旋風》連打しかできんのよ。
こんな状況になってることの八つ当たりに周囲に《旋風》を浴びせまくる。
なんとかどれもPOW*5に成功し、他PCに怪我をさせずに済んだ。
良かった~~~~~1d8とかシャレにならないもんよ!!!!!!!!!!
その間に団長が敵をすばやく確認し、状況を皆に知らせる。
団長らしくないクソデカ大声だ。びっくりした。
----------------------------------------------------------------------------------------------
あなたは彼が現在、特別な状態にあることを理解する。
それは、彼の容貌が人ならざるもののように見受けられるから――だけではない。
彼に対して攻撃をしても手ごたえがありそうには思えない。
あなたは彼が受けている祝福の内容が
『昼と夜、地面と空中で、神・人・獣のどんな武器でも倒れることがない』というものであることを理解する。
この状態で彼を退けることなど、可能なのだろうか。
あなたは、『シュゴーランを、昼でも夜でもない<夕方の時刻>に、
地面でも空中でもない<火花のシャワーに打ち上げられた状態>にして、
武器ではないファジュルの<旋風>によって全てを巻き込み倒すことができる』ことを思いつく。
----------------------------------------------------------------------------------------------
それを共有され、ガゼルがこわごわ手を上げた。
「天候ならぼくがなんとかできるかも…」
「本当か?」確認を取る団長。
「たぶん。でもきみたちだれ…?」おれたちをまるで初めて見るかのように視線をさまよわせるガゼル。
「小生たちはサーカス団、スィールク・ハルワサーフル。小生は団長のアワドだ。
さて、できるなら協力してくれ。」
「い、いいけど…」ピンときてなさげなガゼル。
「おい。」それにダグさんが声をかけた。
「お前、あの男はなんだ。結婚式だとか。俺というものがありながら…。」
ダグさんが目をギラつかせてガゼルに詰め寄る。
え?え?と素でキョドるガゼル。
こっちはこっちで「付き合ってたのか?」とか小ボケを突っ込む余裕もなかった(※つきあってないらしいです)。
全員で力を合わせ(こっちは旋風ぶっぱしてただけだけど)相手を抑えることに成功した。
(この時全員の発狂も解けました)
○戦闘終了
敵、ユラがいたところには獣たちの死体が山のように積み上げられていた。
その中に見知った者を見つけたのか、ダグさんが駆け寄る。
そこにあったのは犬と猿の死体。イアンとシミアというらしい。ダグさんは友達だと言った。
そんなシミアの死体は切り裂かれ、内臓が顕になっていた。
そこにキラリと光る何かを発見する。
それは鍵のようだった。
これは何だと顔を見合わせれば、視界に黒い四角いなにかが映る。
それは自分たちのサーカスの動物小屋で見つけた、あの黒い布がかけられた檻だった。
どうしてこんなところに。
だがダグさんが手にしているその鍵と、あの檻にある鍵穴はサイズが合いそうだ。
ダグさんが鍵穴を試している間、自分はガゼルに駆け寄った。
安否を気にしていると、彼は衣服を寄せ集め、身体を隠す。
「無事…とはいえないよな。
でも、命には別状がなくて、ほっとした。」思わずそう漏らす。
「うん。心配しなくても、ぼくは大丈夫だよぉ。」
ガゼルが返事をする。だが今までにないほど弱々しい返事だった。
「ガゼル。」珍しく団長が声をかける。ガゼルはそっちにうつろな視線を向けた。
「なにぃ?」
「実は、セナから話を色々聞いていてな。
お前、小生たちになにか話すことはないのか。」
「…なんの話ィ?」
その返事に、団長がべっと舌を出す。
ガゼルは少し黙ってから、首を傾げた。
「…何が言いたいんだよぉ。」
「…小生なりの気遣いだったんだがな。
小生から言うよりかはお前が言う方がいいんじゃないかと思ったんだが。」
「だから、何が言いたいのかって聞いてるんだよお。」
二人の視線が交差する。しばし、気まずい沈黙が流れる。
その沈黙に耐えられずおれが口火を切った。
「ちょっとちょっと。ふたりともなんの話をしてるんだよ。」
団長がちらりとこちらを見る。
「ガゼルもかつてのお前と同じだ。
人に言えない何かを抱えているんだよ。」
えっ、と声をつまらせた。ガゼルも?
思わずガゼルの方を見る。彼は気まずそうだったが、こちらの視線をまっすぐに受け止めた。
彼も、おれと同じなのか。
人に言えない秘密を抱えて、その重さに苦しんでいるのか?
ガゼルが何を背負っているかなんてわからない。
でも、人に言えないものを抱え続けるしんどさはよくわかる。
気がつけばガゼルのそばまで歩み寄っていた。
「ガゼル。おれは、お前がどんなものでも、どんなことになっても、絶対にお前を嫌いになったりしない。
だから、もし何かを抱えててしんどいなら。つらいなら、聞くことくらいはできるから。
今は話せないなら、話してくれるまで待つから。」
ガゼルが目をしばたかせる。
そしてにへら、と笑みを浮かべた。
「ファジュルはやさしいねえ。」
「なんだよ。からかってんじゃねえよ。」
「そんなつもりはないさぁ。やさしいなって、思ったことを言っただけぇ。」
照れくさくてフン、と鼻を鳴らした。
そんな様子に目を細め、ガゼルがおれたちに向き直った。
「ね。みんなにとって、ぼくってどんなやつなわけ?」
「生意気で調子乗りでムカつく。」顔を明後日の方向に向けて腕を組んで答える。
「キャンキャン吠える犬だな。」これはダグさん。
「家族、だ。お前がどう思おうとも。」団長は首を傾げる。
「お前は、小生たちのことをどう思ってるんだ。」
「家族、ねえ。」
にやーと、彼は口の端を広げておどけた。
「もちろん、ぼくもそう思ってるよぉ。」
●VS シュゴーランでの惨劇
全員発狂で戦闘突入という地獄絵図。
クソでか大声を張り上げるアワドさんも面白かったけど、
全員のことを忘れて頭にはてなが浮かびまくってるガゼルくんもかわいかったし、
極めつけはダグさんの「結婚したのか…おれ以外のやつと…」発言。
ガゼルくん視点ではストーカーに犯されて目が覚めたらしらん人に囲まれてて迫られてる状況。
ガゼルくんとダグさんには悪いけど面白すぎて酸欠になった。
あとから聞いたらガゼルくんが健忘症、ダグさんは愛嬌って狂気を引いてたみたいです。
動物や人間にセクシーアピールをする発狂なんだとか。これを聞いてまた酸欠になりかけた。
アワドさんの発狂も聞けばよかったなあ。
●ファルマコさん
割と辛辣な言葉を浴びせてたなーと後悔。まじで彼女なりに応援してくれてたんだな。
「人間嫌い」って言ってたし人間じゃないのよね?なら神話生物だって推理はあたってたわけか。ヤッター!
でも不穏です。セッション中の彼女との会話の終わり方、なんだかフラグ立ってた気がして。
ていうか公演見てたらあの猛風をその身に浴びてるわけで。大丈夫!?
でも三年前も見に来てくれてたはずなので、それを乗り越えてるなら今回も大丈夫?なのか?!
無事で居てファルマコさーーーーん!!!
でも君がこっちを酒漬けにして危険なことさせようとしたことはずっと忘れないから!!!!!!!
一生根に持つからねーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!
●セナちゃん
もうなんか、「マモレナカッタ…」感がすごい。
どこかで彼女を助けられるルートがあったんだろうか。あったならどこだったんだろう…
ほんとほんと、ジャンとの一件以来PCがすごくセナちゃんのこと気にかけてて、
今回のことでかなり落ち込んでる。
周りの状況とか人たちが居てくれるので落ち込んでる場合じゃない、ってあるけてるけど、
これ一人だったらセナちゃんの亡骸を前に呆然としてただろうなあ…
彼自身気づいてないけど、多分セナちゃんへの想いは友達とか、家族とか、そういうのもあるけど
ちょっと恋心の端もあったと思う。
しあわせになってほしかったなあ…。
●ガゼルくん
はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
なんかね、PLはちょっと察しちゃったかも。
最後の「ぼくも家族だと思ってるよ」って発言。多分これ、本心じゃないよね。
マトゥーヤの占いの「家庭の不和/裏切り」。これ君のことなんじゃないの。
アワドさんとの会話が随分含みがあったのでそれを疑ってる。
舌の下りはよくわかんなかったけれども。
割と最初の方、「どうしてアサドから越してきたの?」って話題になった時、
アサド団長のことをちょっと悪く言ったら飛びかかってきたんですよね彼。
今までのガゼルくんとの絡みを思い返してたら、
向こうから手を出してきてたのってこの一回だけだったなあって(ほかはこっちから背負投げしに行ってる)。
まだアサド団長への忠誠心?かな。それがあるんじゃないかって、今となっては思うんですよね。
アサド団員ってカルト宗教かってほどアサドを大事にしてるってパスィートも言ってたし。
ただPCは「家族だと思ってる」って聞いてほっとしてる。
ガゼルくんのこと、ほんとに信じてる。
もう、自分の力を制御できるようになってから僻みもやっかみもきれいに消えちゃったのでね。
残ったのはガゼルくんへの親愛だけ。
しかも団長さんに「お前と同じだ」って言われちゃったから他人事に思えなくて。
さてーーーーーーーーーーーーーーこりゃどうなるのか。
裏切ってないならこのふせ見なかったことにして記憶から抹消してほしい。
でももしそうなら、うちのPCはどんな行動に出るだろう。ふふ。
でもね多分、それでもガゼルくんのことは嫌いになれないと思う。
まあ理由とか内容にも依るが。はは!
次のセッションは6日後。長すぎるがーーーーーー!!!!!!!!!!!!
待ちきれないが!!!!!!!!お預けつらすぎるが!!!!!!!!!!!!!!!!
次が最終日になるかもしれないとのこと。
それでも突き進むだけ。というかもうほぼHO2はやりたいことやりきった。
あとはアサド団長、アスランをこの手にかけるだけ。
しかし力を手懐けられるようになった現状、アスランを殺す必要ってあるか…?
まあろくなサーカス団じゃないので壊滅させてもいいのか?
でも昨日のふせで書いた通り、まだ完全に彼に対しての殺意は芽生えてないんですよね。
好きか嫌いかで言えば嫌いですけど(誘拐されてひどい目にあったし)。
ええい、そのときはそのときの流れに身を委ねるだけ!!!
PCも全員合流できた。あとはクライマックスを演じきるのみよ!!!
次回も頑張ります!!!