にこいち(海月水母)様作「2PL←→1set」踏破記念独白SS。今の草加葵から霧原かすみへの所感。SSを書く時に縦にも横にも面倒な縛りを設けたせいで難産でした。もう二度としません。※シナリオのネタバレを一部含みます。
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心のどこかに、「霧原なら大丈夫」なんて意識が
なかったと言えば、間違いなく嘘になるだろう。
今まで出会った我家さんや空草達とは少し違う。
でも、恋愛感情や利害関係があるわけでもない。
ほっとするというか隣にいると気の抜ける感覚。
強いて言うなら「同類」とでも言うのだろうか。
いつからか事務所に押しかけて来る、自称弟子。
でも、そんな同属意識は何の保証にもならない。
勿論、俺の都合に巻き込んでいいわけでもない。
その日、原因不明の昏睡状態に陥った霧原を見て
馬鹿なのは俺の方だと思い知らされてしまった。
逃げ切れなかった自分の不甲斐なさはともかく、
一緒にいたら巻き込むかもしれないと知っていて
手を振り解けなかったのは、俺自身の弱さ故だ。
あめの時は選択を間違えてしまったが、今回こそ
目を覚まさせる方法を見つけ出すことができた。
残り時間が僅かだと分かっているにも関わらず、
つい躊躇ってしまった霧原の手を強引に握って、
逆切れしながらも現実の世界に引き摺り戻した。
二度と、霧原を「こちら」に関わらせたくない。
だからこそ、目が覚める前に逃げようとしたのに
いつの間にか俺の袖は強く握り締められていた。
自分と関わって深淵に踏み込んだとしても霧原は
何も後悔しないだろう。きっと俺と同じように。
止めさせることができないと言うのなら、せめて
「次に会う時」が再び訪れないようにと願いつつ
部屋の扉を無言で閉め、霧原の病室を後にした。