『アントマン&ワスプ』、スコットが謹慎を一応体良く終えるために何度も何度も家に戻っているのがMCUが現在目指しているヒーロー像をまさに象徴している。
AoUでトニーがスティーブとの会話で示唆した「戦いを終え、家に帰る」という最終目標を今作のスコットは(騙し騙しながらも)見事完遂している。またIWでトニーの背後にのしかかったヒーロー活動を終え、普通の日常生活に戻ってほしいというペッパーの淡い希望のような、危険に身を投じるヒーロー活動と家庭人の両立も、スコットはこのシニカルな行動で(元々一般人の彼ならではだが)キャシーとの日常生活を守ることに成功しているのだ。
今回、スコットは仕事関係の都合でルイスに隠匿したラボのありかを教えてしまう軽率な行動を取ってしまうが、何より彼は自らの“生活”、そして周囲の大切な人の“生活”を案じていることがここからわかる。(そもそもピム父娘から生活を奪ってしまったこともまたひどく後悔し、度々謝罪をしようとしている)
「We don't trade lives」とはIWでのキャップの弁だが、『アントマン&ワスプ』に来て、livesに「生命」だけでなく「生活」の意味も付与されたように見えるようになっているのは驚きだ。
元来の意味においてもまた過去作と一貫していて、ゴーストは自らの命を守るためにジャネットの命を引き換えにしようとした結果、その目論見は外れることとなり、殺そうとしたジャネットのパワーで命を救われることとなる。
「We don't trade lives」という現在のMCUが掲げる命題。今回それに準じ、また新たな意味を付与したのは、今まで父親を殺して来たMCUの中で唯一無二の父親ヒーローであったスコットだけが成すことの出来るものだった。
今作を経て、今まで日常への帰還を忍ばせて来た『アベンジャーズ』がこの命題に来年どんな答えを出すのか、非常に楽しみである。