ジョ伝見て個人的にかなり印象的だったのが、虚伝で長谷部と山姥切がどうしてあそこまで不動への当たりがきつかったのかの理由に全て納得がいったことだった、というやたら長文の感想です(続きます)
虚伝は序伝の後の話になるので、つまり虚伝は小田原の大敗の直後の物語ということになるんですが、あの時期って長谷部にとっても山姥切にとっても顕現してから一番と言っていいくらい精神的にきつかった時期だったと思うんですよね。そんな時に現れたのが不動行光だったの、考えうる限り最悪のタイミングだったんじゃないかと思います。
序伝の冒頭の会話とか見てると長谷部も山姥切も思ってたより余裕があるというか花丸っぽいギャグっぽい雰囲気になることも結構あって(顔見合わせてワーーッのシーンとか)、普段の余裕があるときであればきっと二人ともあそこまで態度がきつくなることもなかったんだと思うんだけど、如何せんどうにもタイミングが悪かった。
前の主への深い気持ちであったり、昂って前が見えなくなってつい突っ走ってしまったり、何が正しくて何が正しくないかまだよくわかっていなかったり、そういうことがきっかけで部隊が大敗して(お守りがあったとはいえ)仲間が目の前で折れる姿を目撃して、相当な不甲斐なさと情けなさと後悔と怒りと恐怖と、そういう気持ちでいっぱいになって神経質になっているところにやってきたのが「あの頃の自分の未熟さをそのままたっぷり詰め込んだような子供」だった。それも相当精神的にキてるときに、です、少し話すだけで自分のトラウマと傷口を抉られてしまうような存在なのに、そんなのまともに相手しろっていう方が無理。
序伝の時点では世界のからくりがわかっていなかったので、長谷部にとっては前の主との邂逅で大層揺さぶられたのちに己を見失って敗北を喫してしまった、自分の失敗の原因は自分の甘さにあったのだと思ったでしょう、前の主への思いの整理のつけ方に相当悩んだ時期だったと思う、一周回ってもう全部忘れてしまったほうがいいんじゃないかと、それでも忘れてしまえるようなものでもなく。そんなときに、まっすぐな目で「俺はあの人が好きなんだ、その気持ちはいけないことか」と問われる。相当きつかったと思う。だって前の主が大好きな気持ちを一番よくわかっているのは他でもないへし切長谷部だからです。
私も見終わったあとで気づいてぞっとしたのだけれど、一歩間違えば本能寺で第二の山伏国広になっていたのは宗三だったのかもしれない。しかも宗三は山伏のように屈強な太刀でもなければ実戦経験の少ない打刀の中でも力の弱い子で、あの時大敗を喫した自分達とおんなじように己を見失ってブレーキがきかなくなった不動を燃え盛る本能寺の中で追いかけていくの、長谷部も山姥切もめっっっっっっっっっちゃくちゃ怖かったと思う。あの二人は仲間が目の前で折れるとどうなるか、身をもって知ってるわけで。本能寺は全員無事で帰ってきたからいいようなものの。
任務中に不動がいなくなったときの山姥切の呼吸すらままならないような焦り方も、本能寺再演で「お前までどこへ行く」と宗三を引き止めた声が今にも泣き出しそうに震えてた長谷部も、序伝の直後だったということを考えれば全部納得がいく。一歩間違えば同じあやまちを繰り返すかもしれない、早く止めないとあの時と同じことになってしまうのかもしれない。失敗する恐怖を知ってる二人からすれば尚更だったよなあと思います。
序伝で立つことすらままならなくなっても止まれない二人を見てると虚伝の不動と重なってしまって、長谷部に関しては(相手こそ違えど)前の主への強い思い、という点でも似ていて、似た者同士だからこそ不動を見るのが辛かったんだなあと気づいてからはすごくしんどかった……虚伝だけ見てたときもそんな気はしてたけど、彼らの行動に裏付けられると尚更そういうことだったんだなあと思った
虚伝の長谷部本当に不動への当たりがきつくて、山姥切の病み方も大概だったのでどうしてそんな言い方するかなどうしてそんな態度とるかな~と苦笑するような箇所もたびたびあったけど、丁度あの時期だったことを考えると仕方なかったんだろうなと思う。タイミングの問題でいえば(長谷部ほどではないにしろ)虚伝は宗三もあんまり元気な時期ではなかったし、その状況を薬研ひとりでカバーできるわけもなく、結果としてあのややこしい状況になっていたわけですが、全員精神的に元気な時に出会っていれば全然違う織田組の姿があったのかもしれないなと思いました。
花丸1期で宗三と長谷部の「今日は飲もう!」「負けませんよ」のやりとり見た時ここの本丸の二人はえらい仲良しだな……と思ったのですが、虚伝を乗り越えた宗三と如伝を乗り越えた長谷部ならああいう感じになり得るのかもしれんな~~と……
というか私達が虚伝で彼らがいっっっっっっちばん精神的にヤバかった時期をピンポイントで見たせいで「精神的に脆い子達なんだろうな」っていう印象になってるだけで、万全の状態でさえあれば思ってるより元気な子たちなのかもしれないね織田の子って