【小話3】
パーティもアイドルのように人気が出るケースが往々にしてある。
勇者のパーティが歌われるように、名声の高い冒険者たちは頼まれごとも多いし、
語られたり写し絵になることも多い。
そりゃあそうだろう、私だって面白い冒険者には注目してしまう。
嘘をつきましたごめんなさい。見た目が好みな冒険者も注目します。
その中でも、最近突出して心のなかで応援しているパーティがある。
PTすごい炭水化物、とギルドの帳簿には書かれていた。
最初は、痩身健康法を推している団体かと思ったが、これが食材が冒険しているのだ。
もう一度書く。食材が冒険している。
個性豊かな食材たちがパーティを構成していた。
サラダチキンと、もろきゅう(きゅうり)と、ばななと、じゃがいもである。
(バランスがいいな…)
思うべきところはそこではなかったのだけれど、私の脳はそれ以上のツッコミを拒絶した、
そもそも世の中に突っ込むときりがないということを星盤は強火に教えてくれる。
星盤、運命というのは、指先の意志一つで運命の手首を高速回転させてくるものなのだ。
かっこよく言ってみたけれど要はいろんな人がいるという話。
「炭水化物じゃがいもだけだなあ」というのも口に出さなかった。出したかもしれない。
健気に強くなろうとする彼ら(性別は知らない)に心打たれ、街道で歌っているときは声を聞き、話をした。
先日、そのパーティメンバー同士が調味料性の相違から諍いを始めた。もろきゅうさんと、サラダチキンさんだ。
心配になったが彼らも冒険者、拳と拳のぶつかり合いで勝負を決めると相成ったらしい。
バンバンジーの爆誕である。
その日、私は夕食にきゅうりと鶏肉を用意した。
食材を切る時、ちょっと胸がキュッとなった。
互いに高め合い、楽しい冒険を続けてほしいと願うばかりである。