魔道祖師 小説3巻まで呼んだ ざっとした感想メモ
このまま夜を徹してでも四巻を読みたいところなんだけど電子書籍で四巻がまだ発売されてなくて困った
もう現物買っちゃおうかな……でも四巻だけ現物があってもな…けど電子書籍いつ買えるかもわからないしな……
そんな悩みはさておき
木村良平・鈴木達央って思わず瞑目するほどに声帯から“良さ"が約束されている人物「魏無羨」にまんまと唆されて読みはじめてしまったけど想像以上に作品そのものにのめり込んでしまった
(なぜ声優始まりなのに小説から手をつけたかについては省略)
三巻は藍思追の出自の言及から紐解かれようとしている藍忘機の過去を仄めかされているところで終わり、割とそのあたりが気になっている身からしてはまさに林檎を吊らされたロバ状態でいる。
多分そこに藍思追絡みに藍忘機の背に残された鞭の跡の真相があるんじゃないかと思うんだけど、どうなんだろう。というかそもそも藍思追にそんな重要なバックグラウンドがあるなんて想像だにしなかった……
衝撃的な展開で放り出されてしまったためにそこばかり気になっているけれど、彼に限らず、そういった世家間の諍いとそれに翻弄される人々の描写がとにかく面白くて読む手が止まらない。
これ、最終的には「家僕の子」と「娼妓の子」の戦いになるのか…? 随所に描かれている血筋を笑う人々が、彼らによって、仙門の世界を握られているというのがどうにも皮肉に思える。
優秀なものは美にも優れると明言され、そうでないものに対して明確に美醜の観点でまで劣ることを言及されてしまうところについては少々好かない部分ではあるものの、そこで頁を閉じることは惜しむほど、魔道祖師の世界観とその人間模様は魅力的だった。
そういったシンプルなファンタジー小説としても夢中になってしまう魔道祖師だけど、やはりその創作に最も重きを置かれているのはやはり魏無羨と藍忘機の関係の進退で、本文中かなりのウェイトを占める魏無羨の心中の描写で徐々に藍忘機に傾いていくのを読み解くにつれ、魏無羨のように心臓を跳ねさせたり、『心臓の辺りがかすかに痛み、それと同時にじわりと少し温かくな』ったりする。(二巻第十章 狡童)
それと同時に藍忘機の行動の端々に魏無羨への尋常ならざる執着を伺うと、魏無羨はそれを見抜けないのにこちらがつい暴れだしたくなるような気持ちになる。
その記憶の持ち主は気付かないけれどそこに存在する心理を読み解くなんて、魏無羨に共情してるみたいだ。
若い頃に藍忘機が兄に魏無羨への特別な情を見破られて度々言及されていたり、少年たちに深読みされまくったり、外堀が勝手に埋まっていくのが愉快すぎる。
莫玄羽だと思っていたときに藍忘機と深い関係だとみなしていた少年たちは、それが実は魏無羨だとわかったあと、その認識をどう変えたのか、あるいは変えなかったのか、とても気になる。
物書き視点で言うと物語における恋愛とその他の描写のバランスが限りなく理想に近い作品なので時々「どうしたらこんな風に人の心を打つ話が書けるんだ?」と勉強の意味で作品を読み込んでしまう。
きっかけからそのまま魏無羨に入れ込んでしまった私、基本的な嗜好としては好きな男は左(攻め)に起きたいため、最初こそ……まあ、そういった視点で読み進めていたところ、二巻のどこかで私のイメージと異なる意図を作者が明確に「決め」ているなと感じるようになった。
多分、二度目に藍忘機が酔ったくだりからだと思う。
まだ中華BLを気にも留めていなかった頃、とある作品では受攻が作者によって明確に定義されていて逆は許されていないといった言及がされていたのをふと思い出したけど、それってもしかして、本作のことだったりするだろうか…
とりあえず中盤に差し掛かる手前で前提を改めることにして、答え合わせのように「わかり」をもたらす描写が続くことで、作品と意志疎通がとれたような気がして安堵した。
そもそも左右など些事派なのでもし自分の想定と食い違ってもあまり気にしなかったけど、作者が「そう」というなら「そう」だと思って読みたいのもまた事実なので……
(とはいいながら正確に調べてないからこのあたりの自己問答は朧気な記憶と解釈によるものでしかない)
父と息子という関係について一家言がある私(性癖の意)、藍忘機とその父、青衡君についても思わず言及せずにはいられない。
父子の関係で好きな要素は色々あるのだけど、彼らに関しては父の業を継ぐ息子というのがそれに該当する。
かつて父がそうしたように、大罪を犯した想い人を、外聞に関わらず囲って隠したいという執着の発露を兄に告白する藍忘機は、普段磁器のような美しさと人間性を削ぎ落とした印象を与えるのに比べ、おぞましいほどに「人間」であり、父によって軟禁された母を愛していた息子らしい発想に、鳥肌がたつほどに興奮してしまった。あのシーンはおそらく作中でもトップクラスに好きなシーンになる。
あの告白で、同じ親を持つ藍曦臣は弟が想い描く人物をすぐに想像することができたんだろうか。
とりあえず言い尽くせない感想の中でいくらかピックアップしてみた。
いよいよ結末まで展開が転がり落ちる手前で待ったがかかっている状態は歯痒いものの、この既に終わっている物語の結末を夢想する時間も楽しい時間の一つだ。気を急かさず、咀嚼しながらいつか最後を見届けるときを楽しみにしたい。
というわけで
私向けの特大フックとなってくれた鈴木達央さん、そしてその盛大なフックを投げてくれたフォロワー、本当にありがとうございました。
ボイスドラマは結末を小説で見届けてから、二周目の意味を込めて拝聴しようと思います。
いやそれにしても、四巻ほんとどうしようかな…