「不辜のサァカス ナイフノモツレ」 現行・未通過× 自陣まだ×!
6日目、HO2視点☀
タイトル回収だ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!
やっぱお前何者だよ!!!!!!!!!!!!!!!!!>ファルマコさん
○公演前日の夜
「こんばんは。これにももう慣れたかな?」
また脳内に声が響く。何度も聞いた、ファルマコの声だ。
彼の声にいざなわれ身を起こす。やはり向こうから接触してきた。
シーツに隠していたガゼルのフルートを持つ。今一度それをよく確認する。
豪華な飾りは付いているが、普通のフルートのように思う。なぜ彼はこんなものを欲しがるのだろう。
考えてもわからないものは仕方ない。誰にも気づかれないように外に出た。
居た。昨日と同じ格好で、同じ場所にファルマコが立っていた。
こちらの姿を確認し、彼はマスク越しに目を細める。
「首尾はどうだった?」
ファルマコの目を見つめ、握り込んでいたフルートを前に突き出し、手を開く。
彼はそれを手に取ると色んな角度からそれを眺め透かした。
「確かに。よくやってくれた。」
「そっちも渡すものがあるだろ。」
ファルマコはこちらに視線を戻すと、懐に手を伸ばす。
そこから現れたのは、昨日渡したものよりももっと大ぶりの酒瓶だった。
「約束通り。君にあげる。」
受け取る。喉から手が出るほど欲しかったもの。
このためにおれは危ない橋を渡ってフルートをガゼルから盗んできたのだ。
酒瓶をしまい、ファルマコと向かい合う。依然彼は受け取ったフルートを大事そうに持っている。
「なあ。そのフルート、おれが見る限りただのフルートに見えるんだが。
どうしてそのフルートがほしいんだ。やっぱり教えてくれないのか。」
「正直に言えば多少、事情はある。だが君が知るべきじゃない。」
「そうかよ。まあもう渡しちゃったし、それをどうこうしようがおれには関係ない。
もらうもんももらったし、おれは戻る。」
「ああ、それがいいだろう。明日は公演だな。見に行かせてもらうよ。」
立ち去ろうとしたとき、風が吹いた。
風は勢いを増し、おれとそばに居たファルマコに横殴りに吹き付ける。
と、ファルマコの被っていたフードが外れた。燦々と輝く月光の下彼の頭部があらわになる。
薄紫の髪、縦に裂けた瞳孔。そしてなによりも、
黒くひび割れたように走る亀裂。
それは口元を覆うマスクでも隠しきれないほどに彼の、彼女の顔に圧倒的な存在感を持って存在していた。
それを見るなり自分の頭の中で何かが爆ぜた。
子供の、泣き声。耳をふさぎたくなるほどに喧しく泣きわめく声。
なぜかわかる。これは自分の声だ。
何故自分はこんなに泣いているんだろう────
遠のいた意識は不意に誰かの声かけによって現実に引き戻された。
ファルマコがこちらにすがるように寄り添い、顔を心配そうに覗き込み、何度もおれに声をかけていた。
半分覚醒した状態の頭で周囲を見回す。そばの地面には風がえぐった跡がある。
このまま、意識を手放したままだったら、ファルマコはどうなっていただろう?
あぶなかった。彼が…いや、彼女がすんででおれをこちらに引き戻してくれた。
はっとし、思わずファルマコを突き飛ばす。
彼女がおれに敵意を抱いていないことはわかっている。そういう意味ではなく、
自分と関わることで傷をつけたくない。その気持ちから彼女と距離を取った。
気まずい沈黙。思わず自分の身を抱く。
おれは、おれのなかにある「なにか」は、もうとてつもなく大きくなっている。
このままでは明日の公演で大きな災いを起こすかもしれない。三年前のように。
いたたまれなかった。全てから逃げ出したい衝動に駆られる。
足早にここから去ろうとした。すると、意外な人物と出くわした。
ダグさんだ。
彼はおれとファルマコの姿を視認し、こちらに近づいてきた。
そのとき、むわりと背筋を凍らす何かが香った。
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どこからか酷い異臭がする。思わず鼻を覆いたくなるような酷い匂いだ。
生ものを放置していたときのような生臭さ、糞の匂い、こびりついた黴、吐瀉物、
この世の汚濁を全て煮詰めたような匂いが、どこからか漂っていた。
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ひどい悪臭。ダグさんがやってきてから急に香ってきた。
何か腐乱死体でも持っているのか?と思ったが、彼の手には何も握られていない。
ダグさんとファルマコが互いを見合う。ふ、とファルマコが息をついて言葉を発した。
「お前、アタハンの連れか。」
「その名前を知っているのか。お前は誰だ。」ダグさんが問う。
「私はアタハンの知り合いだ。そうだ、彼から預かっていたものがある。
私が持っていても仕様がないものだ。君にやろう。それに薬も。」
薬?ダグさんは病気かなにかなのか。
ダグさんは少し戸惑ったようだが、彼女から何かを受け取った。
さて、とファルマコが再び口を開く。
「来てもらって申し訳ないが、私はこの子とまだ話すことがある。できれば二人で話したい。
席を外してくれるとありがたいんだが。」
ダグさんはまた少し考えたのち、うなずいた。
「わかった。貴様が何者かは問わない。だが明日は公演だ。なるべく早く解放してやってくれ。」
「わかっている。」
その返答を聞き届けると、ダグさんは自分のテントに帰っていった。
眉間にシワを寄せ、ファルマコに振り返る。
「話ってなんだ。お前との話はあれで全部だろ。」
「いいや。君に忠告をしようと思ってね。
君が本当に誰も頼れなくなったときは、君は君自身で物事を解決しなければならないよ。」
はあ?と思った。当たり前だろう、と顔をしかめて言葉を返す。
「何が言いたい?」
「君は理解しているようで理解ができていないね。」
またはあ?と眉間のシワを深くした。こいつ煽り耐性低すぎる。
表情を変えないまま(マスクをしてるからもともと分かりづらいのだが)ファルマコは続ける。
「君たちのところに、トキが象られた柄をしたダガーがあるだろう。
それでアスラン…アサドの団長を刺し殺せ。」
「殺せ…?待て、なんでダガーのことを知ってる。アサドの団長を殺せ?どういうことだ」
「あのダガーは呪物でね。刺された相手は呪われてしまう。
毎晩悪夢にさいなまれるようになり、捨てても捨てても手元にダガーが戻ってくる。
だがこれでアスランを殺すことができれば」
ファルマコがこちらを真っ直ぐに見る。
「君が頭を悩ませている君の中にいる「そいつ」も、どうにかすることができるだろう。」
言葉を探した。だが口はただはくはくと開閉を繰り返すだけだった。
なぜ、こいつは、それを知っている…?
ガゼルが持っていたフルート。ジャンが持っていたダガー。ダガーの隠された力。
おれの中にいる「なにか」。
これを誰かに話したことはない。団長にさえもだ。
なぜこいつはそれを。
しかも、「盗め」の次は「殺せ」ときたか。
やっと出てきた言葉はなんとも情けないせりふだった。
「お前は、一体、何者だ…?」
彼女は目を細くした。そして、何度も聞き慣れたフレーズを口にする。
「私は、君のファンだよ。」
彼女がこちらに近寄る。そして手を伸ばし、こちらの頬を撫でた。
思わずのけぞる。後ろ手に2,3歩下がり、警戒する。
彼女はそんなおれの様子を見て再び顔をほころばせた。
「明日の公演。うまくいくといいね。応援しているよ。」
そういうとファルマコは踵を返して去っていった。
○公演当日の朝
ついに公演当日となった。
全員で生活テントに集合し、公演の準備をする。
ここでセナの様子が見れたのだが
> ガゼル CCB<=80-20 【目星】 (1D100<=60) > 99 > 致命的失敗 <
> ファジュル CCB<=56-20 【精神分析】 (1D100<=36) > 100 > 致命的失敗 <
> ファジュル CCB<=5 心理学 (1D100<=5) > 96 > 致命的失敗 <
朝から出目がおかしい。なんだこれ。
とにかくセナの顔色がひどく悪かった。
昨日ファルマコが「あのダガーは刺された人を呪う」と言っていた。それで体調を崩しているのでは…?
ガゼルもどこか元気がない。
いつもならもっとハツラツと会話に花を咲かせたり誰かへのいたずらに精を出しているはずだが、
今日は借りてきた猫のようにおとなしい。目もどこか死んでいるような。
「何かあったのか」と尋ねても「なんでもないよ~~~」としか答えない。
いや嘘だろ。心理学初期値だけどそれでもわかるわ。
まあ本人が言いたくないなら仕方ない。サーカス全体に関わる重要なことなら伝えてくるだろうし。
セナが順番に化粧を施していく。まずは団長からだ。
見る間にその顔に美しい文様が重ねられていく。
いつも公演のときはセナに化粧をしてもらうが、いつ見てもすごいものだ、と思う。
おれも一応見まねはできるが彼女ほど要領よくはできない。
セナはメイクを終え、つぎは…と、順番待ちをしていたおれに向き直る。
と、そのとき。
セナの身体が崩れ落ちた。
突然のことに驚愕しセナの身体を抱く。何度も名前を読んで体を揺する。
だが彼女は目を覚まさない。
たのむ、おきてくれ、と声をかけ続けたが結果は同じだった。
団長が安全なところで休ませるべきだ、と彼女を担ぐ。
おれも団長に付き添い、団長のテントまでセナを運ぶのを手伝った。
セナを運び終わりテントに戻る。
まだ化粧は団長しかできていない。開演の時刻は迫っている。
大急ぎで残りのメンバーのメイクをすることになった。
セナほどうまくはできなかったが、まあ見れる出来にはなった。
化粧がおわり、ふうと一息。
テントの外にはすでに何人かの客が開演時刻を心待ちにしているようだ。
思っていたよりもその数は多い。
広場でのパフォーマンスやダグさんが身を削ったあのポスターたちの工夫が功を奏したらしい。
まだ幾分か時間はあるが、やはり緊張してくる。
それにしてもセナが気がかりだ。やはり、あのダガーに精神を蝕まれているのではないか。
そうだ、あのダガー。
団長に声をかけた。
「すみません。ジャンが持ってたあのダガーありますよね。
こんなときに申し訳ないんですが、もう一回見せてくれませんか。」
団長は承諾し、一度自分のテントに戻っていった。そして例のダガーを手に戻ってきた。
受け取り、まじまじと見つめる。
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これはただの短剣ではない。何か禍々しいものと拮抗する力を感じる。
そして、この短剣を手にし、傷をつけられてしまえば、その人物は呪われたことになるだろう。
あなたは直感的にそう悟った。
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ファルマコが言っていたことは本当だったのだ、とぼんやりと考えた。
そしてまずは小指を刺す。
迸る痛み。だが大した怪我ではない。
団長に顔を向ける。
「これは呪物のたぐいです。人を呪う力を持っている。
セナはおそらくこれに蝕まれてる。
これ、しばらく預かっててもいいでしょうか。」
団長がおれの傷を診ながら不思議そうな顔をした。
すかさずガゼルが「どうしてそれがほしいの~?」と聞いてくる。
元アサド団員であるガゼルにバカ正直に「アサドの団長を刺し殺すためだ」とは言えない。
ガゼルだけでなくとも、ここには団長もいる。
おれが人殺しをしようとしていると知ったらどんな顔をするだろう。
ただでさえおれが酒に酔っていたときでもあそこまで思い詰めていたのだ。とても言えない。
下手に嘘をつくのもおれにはできない。
だから「秘密だ。」とだけ返した。
団長はおれの顔をじっと見つめたあと、「いいだろう。」と言った。
またこのダガーにかかわるものとしてこんなメモがあったと見せてきた。
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トート神とは<神なんかじゃない!>トの知識の神である。
ト<あいつが大切そ>であり<うに持ってたってことはこれがあいつの弱点なんじゃねえのか、>
このトートの短<持ち去った。その日から変な夢ばかり見るようになっちまったが、すぐに止んだ。>
<なんだったんだあれは。黒。トキ。猫。舌。偶像崇拝。>
魂を永遠に閉じ込めることが出来る。
<これは、神殺しの短剣だ。倉庫にしまっておく。チャンスがあれば使ってやる。
それは俺の使命だろ。俺たち親友なんだからよ、アスラン。>
<なあ、覚えていてくれよ、俺。>
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昨日、マトゥーヤからもらった鍵で開けた手帳に挟まっていたらしい。
その手帳もどんなものだったか見せてくれた。
▼ウムトの手帳------------------------------------------------------------------------------
一人の若い青年が、「サーカス」という娯楽に出会い、人を喜ばせるという仕事に魅了され、
それを仕事として確立していこうとするまでの奮闘する日々が綴られている。
様々な活動を経て、ようやく同じ志を共にする仲間と出会い、その場で情報交換や、
芸の練習などを共にしている内に「アスラン」という一人の男と仲良くなったことが分かるだろう。
初めはあまり気の合わない奴だ、と記されていたが、読み進めて行く内に、
ウムトが自分にはない彼の長所に対して素直に感心していく様が見て取れる。
「アスラン」もそれに対しては満更でもなかったようだ。
『アスランと約束をした。最高のエンターテインメントを作るって。
そのために、二つにサーカス団を分けたんだ。
そしてお互いトップを奪い合えるようなサーカス団になったとき、その時もう一度会おうって。
公演日を被せて、どっちが本当のトップかを決めるんだ。
そして1位と2位で、また、一緒にエンターテインメントを作る!
あいつは昔から俺よりも賢いやつだったからな。きっと完璧なサーカス団を作るだろう。
絶対に負けない。
俺もここで、一から最高のサーカス団を作り上げて見せる。
アスランのやつは、もうサーカス団の名前まで決めてるらしい。確か、「アサド」。
俺は知らない国の言葉で、「ライオン」って意味なんだと。
百獣の王の名前を自分のサーカスにつけるなんて、アイツらしい。
俺は自分のサーカス団になんて名前をつけようか。
まずは仲間集めからだ。舞台の上で背中を預けられる、家族みたいなやつらがいい。
パフォーマーにとってのホームを作りたいんだ。
この街にはストリートチルドレンが溢れてる。あいつらは親もいなけりゃロクな仕事にもつけない。
精々盗みを働いて、それが見つかったらぶん殴られて牢屋行きだ。
本当に頼れる大人が傍に居なかったから、あいつらはあんな風になっちまった。
あのエネルギーを発散させる先を、正しく導いてやれる大人が傍に居てやればいいんだ。
この前も、腹をすかせたガキを見た。ガリガリにやせ細っちまってたが、目つきはギラついてた。
あの細い腕に、盗んだイモじゃなくて、ボールを持たせてやりたい。
自分が楽しいことをして、人を楽しませられるんだってことを、教えてやりたい。
今度、わざと食糧の入った荷台の鍵を開けてみようか。
アイツはどんな顔をするだろう。』
『俺の目に間違いはなかった。アワドは生意気なところも多いが、頭も悪くないし、飲み込みが早え。
興味ないって顔してるけど、案外人の話を聞いてる。
ちょっとしたらすぐに俺なんかよりも賢くなって、えばられちまうかもしんねえ。
団長としての威厳があるのも今の内かもな』
『人が足りなくなって、大幅に団員を増やした。ジャンとセナだ。
二人とも訳ありって感じで行くところに困ってたみたいだった。
他の奴らには反対されたが、二人とも人を喜ばせることが嫌いじゃねえみてえだし、
よく知らないやつに衣食住を簡単に提供するなってアワドにも怒られちまったが、
アワドがそうだったみたいに、一緒に住んでる内に本当の家族みたいになれることだってあるだろ、
って返したら黙った。
段々生意気になってきやがったと思っていたが、ここで素直に黙っちまうようじゃまだまだ可愛いガキだな』
『泥棒が入った。見た感じまだまだ貧乏サーカス団だからまさか泥棒なんて入るわけねえと思ってたんだが、
どっから入ってきたんだ?
セナは来た時よりかは喋るようになったってのに、
自分のせいじゃないかってまたローブを被って黙り込むようになっちまった。
セナはせっかく舞台映えするようなツラしてるから、見せりゃあいいと思ってるんだが、
そうもいかないらしい。
家族の奴らを安心させるためにも、暫く夜は見回りでもするか』
『アスランに久しぶりに会った。あいつはやっぱりすげー頭がいい。
ちょっと合わない内にアサドはどんどんでっかくなっていってる。
あいつはサーカスの中でも世界一の技術とか、世界一大きい動物とか、
何でも一番をつけて目を引こうとする。
勿論一番はかっこいいし、客も珍しいもんが見れんならそれは大喜びだろうが、
そこだけに執着してそうで心配にもなる。
まあ、サーカス団として先を越されてる嫉妬なのかもしれねえけど、
やっぱり、話してるときのあいつの顔が頭から離れねえ』
『アスランのことが心配で勝手にアサドに行った。
あいつは確かに頭がいい奴だったが、あんな奴だったか?
それにアサドの団員だって、昔は誰がどう凄いんだって話をあいつの方からしてきたのに今じゃ紹介もしねえ。
人気が出て、金が手に入って、変わっちまったのか?そんなやつじゃねえと思ってた。
あいつにそれを言ってやりたかったが、嫉妬だと思われたくなかった。
実際、アスランが変わったんじゃなくて、自分が妬んでるだけなのかもしれねえ。
そうじゃないとは言い切れない。今じゃ街でも、アサドの名前を聞くようになった』
『アワドがファジュルを拾ってきた!ガキだと思ってたやつがガキの世話してて驚いちまった。
ファジュルは何かすげー怖い目にあったみたいだが、アワドに懐いてるみたいで良かった。
家族が増えるのは良いことだ。
なんだかんだ仲がいいみてえで、二人でこれからもっと良いサーカス団にしていくんだろうな。
俺が教えたことをファジュルに教えてるアワドを見てたら、何ていうか、何だろうな……。
父親ってこういう気持ちなのかもしれねえな』
『俺らしくなかったかもしれねえ。
アワドを見てると、一人でごちゃごちゃ考えるよりも、会って話した方が早いってことに気が付いた。
俺が悩んで色々分からなくなった時アドバイスをくれたのは、いつだってアスランじゃねえか。
何で忘れてたんだ。早くアイツに会いに行こう』
『アスランに会ってきた。なんだよ、あいつ、頭が良すぎて分かりづらいだけで、何にも変わってなかった。
最初からちゃんと分かりやすく説明してくれればいいのによ。
やっぱりあいつはサァカスのことが心底大好きなサァカス馬鹿なだけだった。
「最高のエンターテインメント」を作るっていってきかねえんだ。
そんなの、俺だって自分のサァカス団のこと、「最高のエンターテインメント」だって思ってるぜ。
色んな面白いモンを見せて貰えた。他の国じゃこんなのが流行ってんのか。公演の幅が広がった気がする。
アワドにも見せてやりてえ。
また詳しい話は今度聞かせてくれって言って、とりあえず今日は帰ってきた。
今度会いに行くときは、アワドも連れて行こうか。
アサドは団員が多いから、同じくらいの年の子もいて、アイツにもいい刺激になるだろう。
それにしてもアスランのやつ、サァカス団の団長らしくかっこつけて仮面なんかつけてやがった。
仮面つけてるときはカッコいいかもしれねえけど、とったあと普通の顔してたら観客もがっかりじゃねえか?
それとも“それもショウの内か?”って聞いたら、腹を抱えて笑ってやがった。なんか懐かしいな』
『アスランはやっぱりすげえ!俺にはそんな公演思いつきもしな』
『アスラン?』
『アスランはやっぱりすげえ。俺にはそんな公演思いつきもしなかった!
今度やるショウは一番気合が入ってるらしくて、俺にも手伝えって言われちまった。
またあいつと一緒に仕事が出来るのがすげえ嬉しいぜ!
このサァカス団を少しの間放っておくのは心配だが、アワドならうまくやるだろう!
家族だから信じて俺は行くぜ!』
『あいつはもう、俺が傍に居なくても十分やっていけるだろう』
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○舞台袖
観客はざっと見100を優に超えている。
こんな大勢の前で芸を披露するのか。
緊張も不安ももちろんあるが、パフォーマーとしての高揚感で体が震えた。
袖から客の様子を観察していた団長がこちらに振り返る。
「いよいよ時間だ。お前たちはいつもどおりにやればいい。
なぜなら、おまえたちはこの国一、いや、世界一のエンターテイナーだからだ。
私はそれを確信している。
自分を信じて力を出し切れ。
準備はいいか?」
「もちろんです。」ボールの手触りを感じながらうなずく。
「ああ、問題ない。」鞭をにぎりしめ、鋭い眼光で団長を見る。
「アイアイサー!」心底楽しげに口角を上げ、おどけてみせる。
「では、いこうか。」
今、幕が上がる。
○本番
団長が舞台に進み出て観客に向き直る。
「みなさま、本日はご来場くださりまことにありがとうございます。
今宵、魅惑と夢の世界にみなさまをご招待してさしあげましょう。
スィールク・ハルワサーフル。それは一夜限りの魔法の名前。
なんてみなさまは幸運なのでしょう!これを見逃したら一生の後悔。
みなさま幕引きまで楽しめること間違い無し。
まずはこの私、皆様を虜にする夢の仕掛け人、団長を努めます私アワドがご覧に入れますは、
スリル満点、迫力満点のナイフ投げです。」
拍手が沸き起こる。
団長はナイフを抜き、それを華麗に捌き切る。
そしてそれが終わると、服の袖から色とりどりの火花がまるでシャワーのように舞台に華を添えた。
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あなたには見覚えのない演出だった。このサーカス団で火花を扱うことなどあっただろうか。
更に、あれはアワドの手から直接放出されているように感じた。
一体どんな仕掛けなのか、見当もつかない。
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> ファジュル CCB<=10 【クトゥルフ神話】 (1D100<=10) > 98 > 致命的失敗 <
美しい出し物だった。でもなぜか、あれがとても不吉なもののような気がした(SAN-1)。
あんなものを直接出している…?団長は無理をしているのではないだろうか?
団長が舞台から退くと、次はダグさんが前に躍り出た。
「さあさあ、次は獣たちの繰り出す芸を御覧ください。
まずはライオンのラムとトラのラトが繰り出す組体操です!」
ダグさんも獣たちも危なげなく芸をこなしていく。
燃え盛る輪をくぐり、玉乗りをし、組体操のようなものを次々と演じていく。
すごい。
「きゃーーーー!!こっちみてーーーー!!!!」
観客席からも黄色い声が上がる。ダグさんはそれをにらみつけるとまたきゃあきゃあと騒ぐ声がした。
子供「ぱぱもあれやって~」
ぱぱ 「ライオンとトラの組み立て体操はちょっと」
そんな愉快な会話も聞こえてくる。
次はガゼルの番。
彼はぴょんぴょんと軽い足取りで舞台へと進んでいった。
彼は朝どこか調子が悪そうだった。大丈夫だろうか。
そんな心配を他所に、ガゼルはいつものように上げた口角のまま声を張り上げる。
「みんなみんな~~!動物たちの芸もいいけど、こっちも見なよ~~~!!
身体は小さいけれど、生み出す演技は天下一品!
ガゼル様のお通りだ~~~~~~~~!!!」
>ガゼル CCB<=95 【芸術(演奏)】 (1D100<=95) > 100 > 致命的失敗 <
一瞬ずっこけたガゼルの姿が浮かんだがそれは目の錯覚だったようだ(この事実は剪定されました)。
ガゼルの流す曲調にあわせ客が手拍子する。
場は大きく大きく盛り上がっていく。
パンパンに膨らんだ風船のように、客のテンションも芸の華やかさも加速度的に膨張していく。
みんなが、舞台を整えてくれた。
次はおれの番。ガゼルがこちらをちらりと見た気がした。
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あなたにとっては夢にまで見た光景だった。
観客席に空きが見えない。あなたが入場すれば、割れんばかりの拍手で迎えられる。
口笛を鳴らして歓迎する男、目を輝かせる子供。繰り返し呼ばれるあなたのホーム――
スィールク・ハルワサーフルの名。
これが「サーカス」だ。あなたの知っている、あなたの愛したサーカスだ。
あなたの愛する団員たちが、愛したサーカスだ。
ここまでは順調に来ている。完璧だと言えるほどだ。
自分のミスで台無しにするわけにはいかない。あなたは、克服するのだ。
今日この舞台で、全てを。
あなたには仲間がいる。ガゼルが舞台の中央であなたの入場を待っている。
奥でリズムに合わせて動物たちと踊るダグ、手前で指揮を執るように舞台を調整するアワド。
全員と視線が交差する。
あなたは、一歩を踏み出した。
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小瓶を開け、中身を飲み下す。
空き瓶をその辺に放り、両手を広げ、舞台へと一歩一歩進んでいく。
アルコールを全身に回らせ、笑みを浮かべ、自信満々な足取りで、客の前に姿を表す。
「みなさま、舞台もいよいよ大詰めです。
ここまで御覧いただきありがとうございます!
ですがですが、まだまだショーは終わりません。
次はこのぼくが、華麗でスペクタクルなパフォーマンスをしてみせましょう!
ジャグリング、パントマイム…数は様々!
みなさま、ジャグリングは物を投げるだけだと思ってはいませんか?
そんなみなさまの誤解を上書きして差し上げましょう!
とくとご照覧あれ!」
芸を披露する。大勢の客の前で。
もう足は震えない。手も震えない。
ガゼルの演奏が耳まで届く。それに合わせ身体を動かす。
自分が生まれたこのサーカスで、大切なこの場所で、大切な人達に囲まれて。
いま、おれは芸をしている。
生きている。
○異変
そんなとき、おれの身体が宙に浮かび上がった。
見たこともないショーだと目を輝かせる観客たち。
だが違った。こんな演目は想定されていない。
困惑、それとともに、理解した。風が、吹いたからだ。
しかもおれを中心にして。
おれの中にいた「なにか」。それが出てこようとしている。
強烈な風がテント内に吹き荒れた。
はじめはショーか何かかと思っていた観客たちも異変に気づき始める。
風は強大さを増し、人すらも軽々と浮かび上がらせるほどのものになった。
場に居た人間が何人も吹き飛ばされ、器具に叩きつけられる。
呆然とその場を見ていた。自分の身体を抱き、おさまれ、おさまれと念じ続けた。
だが風の勢いは止まらない。
弱まるどころかそれは勢いを上げこの場に吹き荒れ続ける。
一瞬見慣れた顔が見えた気がした。ケバブ屋に居たあの二人だ。
だがそれも風に煽られ倒れてきた看板によって見えなくなった。
あの位置ではきっと無事ではすまないだろう。
止まらない。止まらない、どうすれば。
そんなとき、宙に何かが浮かんでいるのが見えた。
男の顔。それはこちらを見て、笑った。
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「最高のショウじゃないか」
――愉悦の滲んだ男の声が、どこかから聞こえた。
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誰だ。誰だ、笑っているのは。
この状況を見て悦に浸り、愉快に思っているのは。
昨日見た夢を思い出す。
たしかあのとき、おれは確信した。「あれはアスランだ」と。
アスラン。
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その時、地獄のような状況下にあるにも関わらず、涼しい顔した男が一人、どこからかやって来る。
燃えるような赤い髪は激しい風に煽られ、まるで火柱が立っているかのようだった。
何かしらの動物を模したらしい仮面は、これだけの強風にも関わらず、彼の目元から微動だにしない。
そして男は嵐に蹂躙され、既に誰も、何もなくなったテントの中を、
まるで日曜日の午後に散歩でもするかのような足取りで歩きだす。
そこは、ちょうどサーカステントの舞台の中央だった。
「 さあさあ紳士淑女の皆さま。
今宵の見世物は、一つのサァカス団。
自分たちを家族と考え、一心同体となって懸命に働いてきた美しく涙ぐましいサァカス団でございます。
団長を脳に、団員を手足に?
とにもかくにも彼等はまるで一つの体であるかのように息を合わせて今日までやって参りました。
ですが、今、その身体はバラバラに。歩く事すら叶わぬ哀れな身体。
四肢は千切れ、脳が独り歩きをし、状況把握をするはずの眼球はどこへやら。
ああまるで、
“ 内腑の縺れ ”
瞼が裏返り眼球が飛び出すほど刮目して頂きましょう。
皮膚が裂け、肉が潰れても拍手をする手は止めずにね。
ご入場戴こう。
スィールク・ハルワサーフル! 」
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男が手にした杖を床に突く。すると会場が大きく変化する。
そこは見たことのないサーカステントの中だった。
自分たちは移動させられたのだ。突如現れたこの男の手によって。
●ファルマコ
あなただれ・・・・・・?
男だと思ってたら女だったが三人目である。多い。多い…!
きっとこれはシナリオ作者さんの趣味だな(ひとりはPCなのでシナリオ関係ありませんが)。
頬に触れてくる、気を失ったこちらを懸命に介抱してくれる。
あちらはこちらにかなりの好意を持ってくれてるんだろうなーと察すれるんですが、
見に覚えのないこちらからするとこわくてこわくて…
やってることが「ファン」の域を出てるんですって。
あなただれ・・・・・・・・・・・・・・・・?(二回目)
どうやらこちらは過去の記憶に蓋をしているっぽいので、
その忘れている記憶の中にいる人物なのでしょうか。実の母だとか…?
それにしてはだいぶ若いですけど。
でもやっぱ全部見通してたり次やることを指示してきたり、やってることが神話生物臭い。
ニャルさまの線はだいぶ消えたなーとは思います。
ニャルさまだったらもっと悪意を持って場を引っ掻き回すと思うし、あんな慈愛込めた眼差しとか
挙動とかしないと思うんですよね。
彼特有の人を小馬鹿にした感じも見受けられない。
というか女性の時点でこの線だいぶ消えると思う(これは直感)。
これから彼女に会うことはあるんでしょうか…
公演見に来るって行ってましたが、無事でしょうか…
ファジュルも嫌ってはいないんです。ただ戸惑ってるだけで。
まあ酒に溺れさせて言う事きかすっていうヤクザなやり口はどうかと思うけど、
彼女のことがもう少しわかれば、あんなあからさまに拒絶するような挙動はしなくなると思います。
●アスラン
PLの中では最後に登場したあの人物がアスランだって結びついたんですが、
PCが「ケバブ屋のスケッチに描かれてた派手な人」で終わってるんですよね。
あっちの方から名乗ったりしてこないかぎりピンとこないかも…
でもまあ、公演の前にダガー手に入れといて良かったなー。
アスラン刺しに行くとして公演終わってからかな?と思ってたので、
ダガーもあとでいいか?と考えてたので。
下手したら手元に武器がないままアスランと対峙することになるところでした。
早めに行動しといてよかったなー。
フルートも割りと早めに行動できたから手に入れられた感ある。
なんか今回は割りと判断ミスが少ない印象。推理は外れに外れてるが!!!!
●風
みんなごめんの気持ち。
風が巻き起こるときはセナのときみたくワンチャンまたPOW判定あるかなーとたかを括ってたんですよね。
だが、そうかあ来ちゃったかあ…
さすがにこれはもう白状したほうがいいかも。おれの中に風起こす何かがいるって。
実害出てるし。おれではこれを制御できないし。
てかその時点でこのサーカスに居るべきじゃないよね。
みんなと一緒にいたくて黙ってたけど、ジャンからかばってくれたセナとか、
何も悪くないのにフルート盗まれたガゼルとか、それで今回のこれ。
大切な人が傷つく・損をするところをたくさん見て、なんか、ぺしゃってなっちゃいました。
おれ、いないほうがいいな。って。
なんかね、アサドの団長刺し殺せって言われてもピンとこなかったんですよね。
おれってそこまで価値あるか?って。
アサドって大きなサーカスじゃないですか。
そこの団長なんて、実力もカリスマもやっぱ突き抜けてると思うんですよ。
そんな人間を「みんなといたい」っていうエゴのために害せるか?って。
セナを襲ってきた奴らへは簡単に殺意が湧いたんですが、アサド団長にはそうは思えなくて。
もしみんなで話せる時が来たら、言いたい。
おれの中にやばいやつが居ること。それがみんなを傷つけること。自分ではどうしようもないこと。
おれがいなくなったほうがいいんじゃないかということ。
さびしい。さびしいよ。
KPさんにこれから本編です!!と言われてうわぁああ~~~~~となりました。
でも疫病は誰も発症しなかったからね。えらい!!!
みんなで生きて帰ろうな。
サーカスに居られるかはわからない、でも、みんなに危機が迫ってるなら助けたい、命に変えても。
本当に本当に、大切だから。
次回も頑張ります。