群々氏作「首領偉大なる、偉大なれ首領」(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14617080 )二郎系感想がまとまりまして。
結論: 尊すぎて全くわからん! でもスゲエ事だけは分かる!
「軽率に他人の人生メチャクチャにしてくるタイプの美少年(たぶん特性きょううん)」、これが最初に抱いたスゥの印象。あながち間違いじゃないどころかほぼほぼその通りだったなぁ。しかし郡々節炸裂のスゥの台詞の数々よ。台詞回しそのものは勿論自信過剰というよりも『事実であり、真実だから』言っている感がこれでもかと出ていてそこが良い。「僕こそが言葉(ロゴス)だからだよ」辺りが特に好き。それと、
「これからよろしくお願いするよ、スゥ、そして、未来の首領」
「未来の首領ではない、首領だ」
「それが事実であり、真実だからか、首領」
「そうだ」
「そうですか、首領」
ここのグゥの彼のペースに順応しつつあるのが窺えるやりとりも微笑ましくてだいぶすきです。
その後の不幸や破滅を彩るための幸福……さては郡さんこういう筋書きお好きですね? (例: 長いお手紙、パキモン、まだ予感がするレベルだけどFarewell〜 も)一人の作家の作品だけじっくり掘り下げていくと得意/好きな展開やキャラの特徴とかが見えてくる好例を見た。でも「今持ち上げてっけどこれから落とすぞ!? これから落とすからな!?」って予め言ってくれるあたり郡さんは優しい人だと思う。マジもんのサイコパスなら行ける所まで高ァく高ァく持ち上げたあたりで何の前触れもなく唐突にスコーーーンッッ!!!と叩き落としに来るだろうし。
今敏作品のような夢と現実の境が分からなくなるような演出、いつも言ってる気がするけど私滅茶苦茶だいすこなんですよもう。グゥの極度の恐怖や不安か、あるいはダークライやクレセリアが見せた夢がトリガーになってか読んでるこっちまでどこまで夢かどこまで現実か分からなくなっていく描写、正直考察するには物凄く困るんだけれどそんな事どうだって良いだろうとひたすら煙に巻いて脳みそぐるぐるさせてくる感覚は大変クセになります。にしてもハクタイ人にはいい迷惑だろうなぁ。(腐臭、大量のヤミカラスの死骸、ドクケイルetc ドクケイルといえばちょこちょこ影山さんやミドリさんが描(書)いたドクケイル×ビークインの小ネタが混ぜてある所にニヤリとさせられる)
恐らく腐臭を放ち出した辺りから既に事切れていたであろうスゥに対するグゥの強烈な依存にも似た忠誠心、最早それだけに縋るしかなくなったグゥの前に現れるあの不遜なヤミカラスに似た何か。始末しても始末しても際限なく増え続けるヤミカラス(本当に現実に起きた事?)、そしてもりのようかんでのかつてのスゥの写し身達による徹底的な凌辱(これも本当にグゥの身に降りかかった事なのやら)と何処までも痛ましい地獄のオンパレード……つ、つれェー……夢であったとしてもこんな踏んだり蹴ったりな悪夢はキッツイよなぁ……読んでるこっちにもしんどさが伝わってくるよう……
念のため確認なんですがあのラストシーンは現実に起きた事で間違いないんです? だとすれば結局スゥは普通のヤミカラス(ドンカラス)ではなくアンノーンの群体(ロゴスそのもの)だった、という事は多分だけれど『本来の』スゥはあの黒いボロ切れのように吊られていた時点でとうに死んでいたって事だよな……「『死』に近しい」どころか最早死そのもの……だとすれば老化が急速に進んでいったのもアンノーン達が肉体を維持し切れなくなったから、という解釈で説明が付くのかなぁ。まあダークライとクレセリアの夢から始まった終盤の抽象的心情風景的描写の嵐のせいで確信を持ってそうだろうと言い切れねえんだよな。どのみちもう(どこまで夢でどこまで現実か)わかんねえなこれェ!
そうなると結局スゥ(アンノーン?)の真意、つまり何故グゥにあそこまで執着したのかが分からんままだし何ならますます混迷を極めるのよな(そもそもスゥの考え全てがあまりにも謎すぎる。まあミステリアスな他人の人生破壊系美少年にはそのくらいが丁度良いのかも分からんが)。籠の中でしか生きられない小鳥のただ死を待つしかない境遇を憐れんだが故か、それとも自分(達の肉体)を助けてくれる存在なら誰でも良かったのか……
ところでグゥが野生で生きていけない存在と理解した上でいきなり右翼(みぎうで)になれと迫ったり、出て行こうとしても敢えて追わない所などに「うっわ計算高えコイツ」感を覚えるんですけれど、もしかしたらそういうグゥの誰かに飼われずにいられない弱々しい部分を加味した上でターゲット(言い方)にしたんでしょうか……うっわ計算高えコイツ(2回目)
そしてさっき凄いことに気がついたんですがね……タイトルの「首領偉大なる、偉大なれ首領」ってこれ、首領スゥは偉大である(ゆえに崇拝する)→(どうか私のために)偉大なままであってくれ首領よ、っていう前半部と後半部のグゥの二つの心理を表してるんじゃあないか……? このそれぞれ過程と結果が反転した賛辞にこの物語の全てが詰まっている……? やだ、郡さんタイトル付けんの上手すぎかよ……
正直私の頭では考えれば考える程ドツボに嵌ってとても全部を解釈し切るのは困難です……いや、そもそも現実と夢の線引きだとか、物語やキャラクターの真意を考えようなんて作業自体この小説では意味のない行為なのかもしれない……
でもこれだけは言える、こういうのは大体攻めの方が受けにクソデカ感情抱えてるモンでしょうよと。スゥは初めて二羽が出会った瞬間から確実にグゥからの依存レベルの崇拝心を遥かに上回る感情を彼に向けていた……なんかそう考えた方がヘキに刺さるので勝手にそう妄想しときます。以上。