クトゥルフ神話TRPG「忘レ形見after」7月27日夜時点でセーブです。再度記憶を失った加奈ちゃんと改めてきちんと話をする場面という「今」だから書ける洋見君の気持ちをまた書き殴りました。※シナリオのネタバレを含みます。
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「なだみさん? と私って、どんな関係だったんですか」
加奈にそう改めて尋ねられると、一瞬返答に迷う。親戚? 知人? 友達? 恩人? 名前を付けるのは少し難しい。
でも、加奈の記憶がどれだけなくなっても、俺にとって……洋見大地にとって、加奈がどういう存在かは変わらない。
「……知り合いっていうか、加奈は俺にとって大事なやつだよ。だから……うん、俺のことは近所のお兄さんとでも思ってくれ」
「……オジさん?」
「そう言いやすいならそれでいいよ。加奈の呼びやすい言い方でいいから」
「じゃあ……なだみ、お兄さんで」
カナには『洋見さん』、加奈には『大地さん』と呼ばれていたけれど、また一つ、新しい呼び方をもらってしまった。
「ちょっと不安なこともあるかもしれないけれど、俺がちゃんと加奈を守るから」
――今度こそ、俺はこの約束を守れるだろうか。
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その夜、廃屋から拝借した資料を眺めていると、加奈のすすり泣く声が聞こえてきた。
何か声をかけようとして、しかし、俺はその場から動けなかった。
加奈の両親の代わりにはなれないし、そもそも俺にそんな資格はない。加奈自身が「思い出したくない」と記憶に蓋をしたこと全てを知っていながら、その真実を伝えなかったのは、紛れもなく俺自身なのだから。
その代わり、月明かりを頼りにして、俺は黙々とこの町に隠された真実を探るべく資料を読み進める。
何でここまでするのかって? 決まってる。
これが、俺が今、加奈や紙鶴ちゃんのためにできることで、俺に託された「仕事」だからだ。
『紙鶴ちゃんの力になってあげる、って約束してくれる?』
―――それに、俺だって針千本も呑みたくはないからな。