ゴーストワイヤーのED含むネタバレあれこれ
もはや感想という体でもなく、ただクリアしてつらつらと思ったことを書くだけ。
ある意味、般若は物語の主人公でもあったんだろうなと。限定版のパッケージの般若は単純にDLCの般若コスした暁人なのかもしれないけど、誰もが般若のような思考に至る可能性がある、というような印象も受けた。
妻と娘の幸せのために生きる。世界を変える。本来は尊ぶべき感情だけど、少なくとも妻も娘も望んでいない結末を押し付けたうえに世界を巻き込んだのが悪かった。ただ、その感情自体は理解できるし、できれば否定したくなかったな。共存は絶対できないけど。
凛子も間違えた。絵梨佳は自分の家族のため、戦うことを選んでいたのに認めなかった。凛子と絵梨佳も家族だったのに、守りたいという感情を押し付けてしまった。エドがほぼはっきり言っていたけど、結果として仲間たちが壊滅状態に陥ったのは凛子が原因なのは明白で。間違えなければもっと穏便に終わっていたかもしれないけど、ただ絵梨佳とKKだけで般若に勝てたかどうかは分からない。となると、すべては必然だったようにも思える。
般若とおぼしき科学者のボイスメモに出てきた同僚とかは凛子やエドたちだったんだろうか。このくらい近い立場でもなかったら、般若の企みに気づいて止めるとか、マレビトに対処するとかできないとような気がするけどどうなんだろう。
般若がKKにエーテルを操る力を与えたのは、のちのち肉体だけ奪って先兵にするつもりだったのかな。実際、魂のない痩男もエーテルショット使ってたんだし。個人的に記憶が宿るのは脳だけでなく肉体(内臓の移植とかでも稀にみられる現実の事象としても)だと思うので、そのへんはそうなのかなって気持ち。分からんけど。
般若が冒頭、麻里について「生きながら冥界と繋がっている」みたいなこと言ってた気がするんだけど、彼女が両親と去ったのは般若が直接の原因ではなく、火事の時点ですでにほぼ死んでいたけれど、暁人に自分のせいだと思わせたくない、どうにか暁人にそのことを伝えたい一心で必死に心臓を動かしていたのかな……と受け取ると彼女自身に悔いはないかもしれないがとても切ない。
麻里が言っていたこと、記憶どおりの部分もあるんだろうけど、大半は暁人が「麻里はきっとこう思っている(自分を恨んでいる、責めている)」と思い込んでいただけのような気がする。両親を大切にして、最後の最後まで暁人のことを考えていた麻里がそう思っていたとは考えにくいし。まあ生きてたときはそう思ったことがあるのかもしれないけど、少なくとも死の淵にあっても暁人の心の重荷にならないようにしていたところから、自分は彼女が何かを恨んだりするとは思えんな。
暁人の父親の描写が母親に比べて少なかったのは、事故とか突然死だったのかな。エーテルの適合者に血筋が関係あるか絵梨佳が気にしていたみたいな話があったけど、暁人と麻里がまあまあ特殊だったのか、般若と絵梨佳が特殊だったのか分からないけど、もしかしてやたら不幸に見舞われたのは母or父含めてそういう素質ゆえに悪霊かなんかを引き付けてしまったのかな……とか。単純に幸せな家族とか麻里がいい子とか、そういうふざけた理由で呪われた可能性とかもありそうだけど。なんか彼らの不幸が自然に続いたという感じがしない。自分の妄想だけど。
暁人が両親の死を正面から受け止めきれなかったのは、やっぱり優しいせいだと思う。命日のことも忘れるなんてできなかったけど、意識すればするほど亡くなった両親のことを考えてしまって心が耐えきれなかったんじゃないだろうか。だから無関心のふりをしていたような、そんなように思った。そして両親の死を見つめられない、受け止められない負い目が麻里から責められていると感じてた原因の一番のところの気がする。
麻里が悪いとか両親が悪いってことは一切ないんだけど、暁人は彼らから注がれていたであろう愛を悲しみゆえに正しく受け止められなかったのが切ないなあ、と思う。誰も悪くないのにな。
確かカゲリエの双眼鏡で429を見た時に暁人が「妹一緒に行った」って話してたけど、この時に両親へのプレゼントを買いに行ったことを思い出してたのかな。年齢も少し離れてるし、思春期もあってかずっと仲が良かったわけではなく恥ずかしかった時期とかもあったのかもだけど、お互いに思いあういい兄妹だったんだろうな。
暁人、基本「僕」なんだけど、麻里本人との最後の会話でたぶん1回だけ「オレ」になったの、こっちが素なのか、それとも暁人と麻里がなんのしがらみもなく仲が良かった頃の……なんだろうか。オタクは一人称の変化に敏感なのである。厳密に統一はしないほうが人間らしいと思う(シナリオ面での整合性は別問題として、あえてならやったほうが人間としては自然だと思う)。
KKも家族との距離感を間違えた1人。先生とか警察とかによくあるらしいけど、他人の子供には好かれて自分の子供は多忙ゆえに放っておきがち、みたいな。ただ自分が過去に接した先生は両親が先生だったケースが結構あったり、親が先生だから先生になった人も身近にいたので個々の要因が強くあんまり一概には言えないかな。子供が聞き分けよかった可能性とかもあるけどさ。
それはさておきKKのオモチャのくだり、少なくとも子供の趣味嗜好が変化するくらいの「久しぶり」程度には家庭を顧みなかったのは事実なんだろうな。KKの性格からして、あのKKと結婚できた奥さんKKの仕事にも理解のある女性の気がするけど、そんな人でも愛想がつきたのか、それとも息子との関係性だけが壊れていたのかどうなんだろうな。息子、パスケースの写真よりはずいぶん大きくなってそうな気がする。
痩男の、身体に刻まれてたであろうKKの本音と記憶。ずっと「誰か」のために頑張ってきた。「誰か」を守るために戦ってきた。でもその結果、守っていたと思い込んでいた家族が壊れてしまっていて、気づいたときにはもう遅かった。般若みたいに道を踏み外したりはしなかったけれど、愛しているんだから愛されると思ってしまったのはKK自身の罪であり罰なんだろうな。
でもKKが暁人に語っていたように、彼はずっと正義感と使命感を胸に宿して戦っていたんだろうなと。暁人に乗り移ろうとしていた焦りも死んでしまう恐怖ではなく、何もできないまま死を迎えてしまう自分の無力さのほうがよほど怖かっただろうなとか。もうどうにもならなかったのかもしれないけど、自分の身体を取り戻すとかそうしたことは一切言わず、結果はどうあれ般若を止められれば、そして家族と多くの人々が救われればよかったんだろうな。こういう自己犠牲をいとわない高潔な精神の持ち主こそ、正しくヒーローと呼ぶべき人間だと思う。
暁人もKKも、愛する家族のために戦うと決意した一方で、実は愛されていないかもしれないという恐怖から目を逸らしながら戦っていたんだろうか。守るために戦い、多くの人を救うという正義と使命を掲げていても、本当に大切な人からは自分を見てもらえない恐れ。KKがそれゆえ足のすくんだ暁人を叱咤できたのは、ある程度はそこを自覚していたからなんだろうな。そこは大人というか、刑事という信念のなせる業かもいれないけれど。
お互いのみっともないところが全部バレてしまったけど、でもやっぱり般若との戦いは1人では潰れてしまっていたと思う。暁人は言わずもがなだし、KKだって単純な強さは別として、痩男がぶつけてくる心の奥底に隠していた本音を真正面から受け止めるのはツラかったと思う。2人だから乗り越えられたんだと思いたい。
暁人が両親と妹と出会ったのは、黄泉比良坂だろうな。生きている暁人は振り返らずに坂を上がり、両親は妹を連れて冥府へ戻っていく。KKが一切の未練なく還れたのは、身体がないからどうしようもないのと同時に、心残りも全部暁人に託せたからなんだろうな。姿すら見せなかったのはもうその力もなかったのか、もう成仏する寸前だったのか。日本の童謡が流れるエンドロールもよかった。
もし暁人がこれから警察とか目指したら泣いてしまうな……衣装であったから想像ついちゃうし……。KKみたいなエーテルを視るとか操る力はないかもしれないけど、エドたちとコンタクト取って人知れずマレビトと戦ってても泣いちゃう。
てかエンディング迎えた時より今のほうがすごい泣けてるんだけど、いや本当に何の文句もないハッピーエンドだと思うんだけど、KKと過ごした日々があまりにもよすぎたからさ……。ゲーム内時間では長くても一晩くらいなんだろうけど、本当に一生の出会いみたいな、濃い時間だったろうからさ……。
分かってるんだけどつらい。永遠にKKと幽霊関係の事件を解決して過ごしたい。つらい。イヤダーーーーKKと暁人は一緒にいないとヤダーーーーって大人が全力で駄々こねたり地団太踏んだりするくらいにはいいゲームでした「Ghostwire: Tokyo」は。ありがとうございました。