最後の決闘裁判 決闘の結果に群衆のなかの女性たちの喝采が映るけど、あのひとたちは彼女が丸裸で焼かれるところを見に来たひとたちでもあるという冷たさがよかった。女たちの連帯に関しても男によって女たちは分断されているの方を描く
義母と女友達のマリーがよかった!
「女の敵は女」という揶揄に「女を敵対させてる状況にしているのは男なんだが?」という
男たちの社会で女に求められる役割を内面化しているような義母との会話、ずっと会話がないけど最後のやつがほんとによかった。
「私も強姦されたが次の日には立ち上がって日々を過ごした」「その代償は?」「代償?そんなものはない。生きてる」「大きな犠牲の上の特権ね」というあの会話…。
この「特権」だよな。皮肉でさえある。
尊厳を犠牲にして黙ってやり過ごしてなんとか「生きてる」状態を手に入れるって…。
『スキャンダル(Bombshell)』で「あなたたち上の世代の人間が黙ってきたからこうなったんでしょう」というような台詞があったのも思い出した。
この場面では義母は犠牲と思うこともしてないように「代償なんてない」と言う。
マルグリットの言葉は寄り添いというより「大きな犠牲」を認識していないことへの憐れみみたいな感じがした
義母が家を留守にしさえしなければ強姦が起こらなかったかもしれないという状況も、まるで義母たちの世代のつけを払わされているかのような…というのは汲み取りすぎだけど…
黙ってやり過ごすことを求める社会があって、社会に迎合せざるを得ないほど圧力がある
誰にも話せないから被害を受けても誰かに相談することもできないし、それこそ連帯することもできない
その社会とは男の権力で成り立っていて、権力に分断されるとはこういうことだな…
女友達もよかった!
告発したのが親しいマルグリットだったからこそ「わたしは彼女とは違うんですよ」という「わかってる女」のパフォーマンスをする感じというか。
ここにも男によって分断される女たちがある。
諸侯との会議の後でマルグリットが「味方になってくれないのか」と尋ねるもマリーは拒み、
そのとき馬車のなかから彼女の「主人」が急かす声がする。
夫の前で「強姦を訴えた女」と親しく喋りたくないと思うの、もう完全に保身なんだけど、
その保身は男たちに対する保身というか…
境遇が違えど権力の強い相手に対して反旗を翻すという一点では同意できるかもしれない、というのが「連帯」のあり得るところだろうけど、
いままさに権力によって分断されている状態ではとても難しい…
国の王と地域のボスとそのしたの騎士と…という権力構造のところもおもしろかった
社会のなかでの女と男の権力構造という話と男たちの間の権力構造
人間関係における権力と権力の調整こそ政治というけど、ほんとに政治的だった